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  • 男性育業「取得率100%」 人材の定着力と採用力を実感
2023.01.27
左から、市原奈津実さん、峯龍平さん、松尾隆浩さん、石田拓也さん、畑佑唯菜さん
左から、市原奈津実さん、峯龍平さん、松尾隆浩さん、石田拓也さん、畑佑唯菜さん

男性育業「取得率100%」
人材の定着力と採用力を実感

株式会社フューチャーフロンティアーズは、東京23区内で11の保育園と2つの学童クラブを運営しています。10〜70代まで、約180人の職員が働いており、4年連続で男性育業(育休)取得率100%を達成しているそうです。

男性が育業を取得するにあたってどのような体制を整えたのか、また、実際に育業を経験してみて何を思ったのか。同社の職員の方々に座談会形式でお話を伺いました。

〈座談会のメンバー〉
▷松尾 隆浩さん:株式会社フューチャーフロンティアーズ取締役。
▷峯 龍平さん:同社保育園で1歳児クラスを担当。育業経験者。
▷市原 奈津実さん:同社保育園で1歳児クラスを担当。
▷石田 拓也さん:同社保育園で0歳児クラスなどを担当。育業経験者。
▷畑 佑唯菜さん:同社保育園で0歳児クラスを担当。

“先輩”たちの体験談を聞き、上司からの働きかけも

――最初に御社の「男性育業制度」について教えてください。

松尾さん:フューチャーフロンティアーズは系列会社も合わせて約180人の職員がおり、うち27%が男性です。女性が多い保育業界の中で、男性の比率が高いことが特徴的だと思います。

松尾さん

一方で、育業について、男性だから、女性だからと男女の違いを理由に特別に制度を整えてきたわけではありません。ただ、男性が育業を取得しづらいという社会的な風潮は確かにあると感じていたので、弊社では育業を経験した男性職員に体験談を社員全員の前で語ってもらう場を年に一度設けています。

その場においては、期間中どんな風に過ごしていたか、どんな不安やメリットを感じたかなど、具体的でリアルな声を語ってくれています。身近な同僚や先輩が育業を経験したということが、男性職員が育業を取得する一番の呼び水になっているのかなと思いますね。

ちなみに弊社の男性職員が初めて育業をしたのは、2017年度。18年度には育業の取得対象職員がいなかったのですが、19年度からは4年連続、毎年2名ずつ育業を取得しています。

――それで4年連続、男性育業取得率100%というわけですね。

松尾さん:はい。職員から妊娠・出産の報告を受けた後、その職員と、その職員の施設長と、会社の人事の担当者とで三者面談をしています。「育業復帰支援プラン」というもので、どのような形で育業に入って、その間の業務はどうするか、復帰にあたってはどうするかといったことを話し合います。

はじめは職場を離れることに不安を感じている職員も見受けられますが、ある程度の流れや体制を決めておくことで、その不安を埋めることができ、育業期間中は目一杯育業に専念することができると考えています。

――実際に制度を活用されたお二人は、どれぐらいの期間育業を取得されたのでしょう。また、なぜ育業を取得しようと考えたのですか。

石田さん:私は3年前に3カ月、そして昨年にも3カ月、計2回育業を取得しています。育業を取得しようと思ったのは、やはり私より先に育業を経験していた男性職員がいたこともありますが、子どもが生まれることを会社に伝えたら、上司が「育業はとるよね?」と先に確認をしてくれたことも大きかったです。もともと私自身育業を取得するつもりではいたのですが、会社側から先に提案をしてくれた。育業を取得しづらいな、言い出しづらいなと感じたことは全くありませんでした。

石田さん

峯さん:私は2年前に2週間、育業を取得しました。私も石田と同じで、妻の妊娠を会社に告げると、育業を取得することを勧められました。2週間という期間は、住宅ローンの返済などお金の不安があったので、妻とも話し合って決めました。

育業を取得するときの引き継ぎで気をつけたいこと

――育業を取得する際に、業務の引き継ぎで心がけたポイントを教えてください。

峯さん:仕事を代わってくれる同僚には「よろしくお願いします」とお願いはしましたが、私の育業は2週間でしたから、誰かに自分の業務を引き継ぐというよりは、2週間分の業務を先に準備しておくようにしました。

峯さん

石田さん:私が育業を取得すると、単純に人手が1人分減るので、カバーをしていただく必要はあるのですが、保育園の現場において、私でなければできない仕事がない環境を作れていたので、引き継ぎで大きな苦労したことはありませんでしたね。

育業を取得する前年、畑と一緒に1年間保育をしてきましたが、畑がメインになってやっていけるように、例えば「こういう業務はこういう期間のうちに進めていくんだよ」と細かいところまで意識して伝えるようにしていました。

――市原さんと畑さんはそれぞれ仕事を引き継がれたとのことですが、心配や困りごとはありましたか?また、それらをどのように対処しましたか?

市原さん:私は峯の業務の一部を引き継ぎましたが、事前にいろいろと用意してもらっていたので、そこまで負担を感じることはありませんでしたね。みんなでミーティングをして、業務のやり残しが出ないように連携していましたし、どうしても人手が足りないときは、他の保育園にヘルプをお願いするなどしていました。

畑さん:私は石田の業務の一部を引き継ぎました。まだ保育士になって2年目だったので、頼りになる石田が側にいないのは正直不安だったのですが、石田は口頭での引き継ぎのほか、やることをリストにしてまとめてくれたんです。そのリストを見ながら、そして他の同僚や上司に相談をしながら、3カ月の育業期間を乗り切りました。

畑さん

――石田さんがつくられたリストというのは?

石田さん:A4の紙2枚程度のものです。業務のマニュアルは別にあるので、それ以外に付け加えておきたいことをまとめました。

現場や立場でそれぞれ役割がありますし、子どもも一人ひとり違うので、同じやり方で対応できるとは限らないのですが......大切なことをリスト化して、いつでも確認できる形に残しました。口頭で時間をかけて繰り返すよりは、まずは常に確認できるものがあった方が簡単ですし、正確かなと思ったんです。

畑さん:前年に業務を1年間かけて教えてもらっていましたし、リストもいただいたので、おかげで「どうしていいか全く分からない」ということはありませんでしたね。

「家族の絆が深まった」「不安なく仕事復帰ができた」

――実際に育業を取得してみて、よかった点を教えてください。

石田さん:たくさんあるんですけど、一番良かったのは、子どもだけではなく、家族と過ごす時間を長くとることができたこと。共働きなので、妻と四六時中一緒にいることはなかなかないんですが、育業期間はずっと一緒にいることができたので、家族の絆が深まったと思います。子どもの愛着を築いていく上でも大事な期間だと思うので、その時間を一番近くで過ごすことができたのはよかったですね。

石田さん

また、妻は第1子のときも第2子のときも1年間の育業をとっているのですが、妻の仕事復帰を見越して、どのような流れで生活をすればいいのかをイメージする期間にもなりました。子どもが生まれて、いきなり仕事となると、どうしていいのか分からないことも多いと思うのですが、「こうやればうまく育児がまわっていくんだな」「どういう役割分担をすればいいのかな」というコツがつかめたので、私も妻もそこまで不安を感じずに仕事復帰ができたと感じています。

――1人目と2人目では違いも感じましたか。

石田さん:そうですね。第1子のときにうまいやり方を見つけても、第2子でそれが同じようにできるわけではありませんし、1人と2人とではまた生活がガラッと変わる印象です。

1人目のときは、私も保育士とはいえ、新生児の扱いには慣れていませんでしたし、知らないことだらけでした。一方、2人目のときは、その赤ちゃんのお世話はもちろんですが、上の子のケアも必要だと思ったので、むしろ私自身は上の子に時間を割いていたかなと思います。

――峯さんはいかがですか。育業をとってよかったことを教えてください。

峯さん:一生に一度しかない時間を過ごせたなと思いますが、どちらかといえば、出産したばかりの妻に“ワンオペ育児”をさせたくないという気持ちが強く、少しでも負担軽減ができたらと思っていました。

峯さん

妻は別の保育園で栄養士の仕事をしているので、食事に関しては妻が担当してくれましたが、それ以外の掃除や洗濯などは私が率先してやっていました。私も新生児のお世話には不慣れだったので、なかなか大変だったのですが、私の両親や妻の両親のサポートもあって、やってこられたと思いますね。たった2週間ですが、それでも育業を取得することについて、妻からは感謝されました。

――制度を利用してみて、もっとこうだったらいいと思うことがあれば教えてください。
また、制度を利用したいと考える同僚や後輩にアドバイスがあれば合わせてお願いします。

峯さん:育業中は育児休業給付金が支給されますが、いつもの給料の6割なので、その点がもう少し引き上がるといいなと思います。私は住宅ローンもありますし、結婚の費用にもお金がかかっていたので、なかなか長い育業が取得できる環境ではありませんでした。育業を取得する際は、少しでも多く貯金をしてからがいいかなと思います。

石田さん:私は特に不満に思うことはなかったです。ただ、自分の無知で恥ずかしい思いをしたのは、お金が入るタイミング。私の勝手なイメージで、給料日に6割の給付金が入ってくると思っていたのですが、そうではないんですね。これから育業をする方は、入金のタイミングを知っておいた方がいいかなと思います。

男性育業が職員の「定着」や「採用」に寄与するか

――自社の育業制度や男性の取得率について、どのように思われているか教えてください。

市原さん:子どもを育てるのに性別は関係ないですから、素晴らしい制度だなと思います。私自身ももし子どもが生まれたら、パートナーにも育業を取得してもらいたいなと思います。

市原さん

畑さん:私も素晴らしい制度だなと思います。私はまだ結婚していないので、イメージが湧かない部分もあるのですが、実際に保育をしている中でも、1対1で子どもと向き合うのはなかなか難しいことが多いんですね。ましてや出産直後で、体力も回復していないなかでワンオペ育児をするのは、想像するだけで恐ろしいなと。だからこそ周囲に助けてもらえるなら助けてもらっていいと思いました。

――「人材の定着力」という面で、男性の育業取得率が高いことはメリットになっているでしょうか。“育業が取りやすいから辞めない”といった直接的なこと以外にも、そういった雰囲気が“居心地の良い会社だな”と感じることにつながっているなど、良い点があればぜひご意見を聞かせてください。

石田さん:居心地の良さはとても感じています。育業制度だけでなく、例えば子どもが発熱してしまったとき、先に家に帰らせてもらうなど、職員が働きやすいようにいろいろなサポートをしていただいています。そういった意味で、 長くこの会社で働き勤めていきたいなと思っています。

峯さん:私は専門学校を卒業してから、実は今の会社が3社目なんです。それまでの園で待遇や人間関係で悩み、転職をしたのですが、今の会社は、育業制度や傷病休暇などの制度を活用しやすく、社員を大切にしてくれているなと肌で感じています。

入社面接のときに、代表がワークライフバランスを大切にしていることを明言していましたし、とてもオープンマインドな人柄がうかがい知れて、ここで働きたいと思いました。

――「採用力」という面では男性の育業取得率が高いことはメリットになっているでしょうか。

松尾さん:直接的に育業取得率の高さが採用につながったというケースはないと思いますが、面接時に男性育業取得率が100%だという話をすると、男女問わず、いい反応をいただけますね。男性でも女性でも、これから育業をする機会があるであろう若い方にとっては、なんとなく将来を想像できて、入社時の安心材料になるとは思います。

松尾さん

我々も人材の定着を見据えて、いろいろな施策に取り組んでいるという面があります。代表の橋本恵理は、自身の出産時に、当時在籍していた会社で“会社初”の育児休業を取得し、その1年後の2人目の出産の際にも“第2号”として育児休業を取得していますが、当時はワンオペ育児が当たり前で、さまざまな苦労があったようです。その時の経験もヒントにしつつ、職員の声に応じ、いろいろ制度をカスタムしてきており、それらが結果、人材の定着につながっていると感じています。

職員によく言うんです。仕事は誰でも代われるけれど、家庭の立場はあなたにしかできない、と。なので「何かあったら、仕事はいいから、帰ってね」と伝えています。持ちつ持たれつ、職員同士が支えあいながらやっていると思いますね。

――男性育業に対して社会が今後どのようになっていくとよいとお考えですか。

松尾さん:女性だから男性だからではなく、社会全体で子どもを育てていこうという文化になるといいですよね。

また、今まで人材確保に苦労してこなかった大きな企業さんにとっても、これからはそんなに簡単な世の中ではなくなっていくはず。いろいろな社員の声を聞いて、そこに一つずつ向き合う姿勢が一番大切なのかなと思います。

<会社プロフィール>
株式会社フューチャーフロンティアーズ
認可保育所、東京都認証保育所、企業主導型保育所をはじめ、学童クラブ、幼児教室などを都内で展開。グローバル教育・モンテッソーリ教育に加え、さまざまな心理学的アプローチを用いた教育をおこない、子どもたちの自主性や主体性を尊重する点を大切にしている。

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