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令和元年度「介護と仕事の両立推進シンポジウム」講演要旨

1 開催日時:令和元年10月29日(火)14時~16時45分
2 会場:日経カンファレンスルーム
3 定員:200名
4 内容:

【基調講演】
「多様な介護の実情と介護離職の防止について」
法政大学キャリアデザイン学部 教授 松浦 民恵 氏

基調講演

 介護の実情と介護離職防止のヒントを、個人の立場、企業の立場それぞれについてお話します。
 2010年に、従業員に対して介護の実態やリスクに関する調査を実施したところ、40代では約8割が介護中か介護予備軍という衝撃的な結果になりました。別の調査で介護の担い手について男女構成の推移をみると、男性の担い手の割合が増えています。介護の担い手には30代以下の方もいらっしゃいますが、介護に直面するのは40代以降という先入観から、この世代のカミングアウトがより難しくなっている懸念があります。
次に、従業員を対象とした別の調査で、過去3年以内の介護経験者に関する分析結果を紹介しましょう。お子さんがいらっしゃる方が40代で6割弱と、育児と介護のダブルケアを担っている方が少ないと推測されます。
 主な要介護者は親で、介護経験者の4分の1が2人以上の要介護者を介護しています。要介護者の症状は多様で、認知症の症状がある方が4割に上ります。片道2時間を超える遠距離介護は、介護経験のある男性の3割弱です。
 また、性別によって介護への関わり方が異なります。要介護者の身体介助や家事・生活援助は女性、経済負担は男性が多く担っています。それに連動して、介護への負担感は、女性の場合は身体的、精神的な負担感が高く、男性の方が経済的負担感は若干高いです。介護に直面した後の、家族との関係維持や仕事との両立の難しさは、女性の方が深刻です。介護をカミングアウトできるかどうかも重要ですが、その点については男性のほうが誰にも話していないケースが多く、心配な状況にあります。介護支援制度の利用は総じて低調ですが、介護のための休暇は4人に1人が利用しています。以上がデータに基づく介護の実情です。
 次に、介護と仕事の両立について考えてみましょう。介護に直面しても仕事を続けられるかをたずねた調査結果を見ると、「続けられると思う」という回答は従業員の4人に1人にとどまっています。介護離職を経験した方にチアする調査結果を見ると、離職前後での精神的、肉体的、経済的いずれの負担感も増していますが、特に経済面の負担増大が目立っています。
離職を望まない個人に対しては、まず、離職しないために何が必要か、事前の心構えや基礎知識、初動の大切さを伝えることが重要です。介護について事前の心構えがなかった人のほうが、介護に直面した後の精神的、身体的負担感が大きくなります。次に、介護を一人で抱え込まないことも重要です。介護を自分1人で行っている場合には身体的、精神的負担が高まります。身体介助についてみると、男性が自分1人で行うと要介護者との関係が悪化し、女性が自分1人で行うと他の家族との関係が悪化するという傾向があります。
 企業による介護支援のポイントは、このような介護の心構えや留意点といった基礎情報を従業員に提供することです。
また、制度の整備だけでなく、介護の実情や制度の趣旨をしっかり伝え、効果的に利用してもらうことも重要な取組です。例えば介護休業制度は、法定3か月です。介護休業制度は介護を全うするための制度だと誤解されていることが多いですが、3か月という趣旨は、この期間で介護しながら仕事を続けるための両立体制を構築してほしいということです。
 最後に、介護について相談しやすい雰囲気が、介護に直面しても仕事を続けられるという従業員の意識につながります。企業による介護支援のための様々なツールは既に作成、公開されています。自社に合った形でカスタマイズし、有効に活用することをお勧めします。

【企業の取組事例紹介】

■SCSK株式会社 人事グループ 人事企画部 部長
酒井 大介 氏

 経営理念を実現するために「人を大切にする」健康経営を掲げています。スマートワーク・チャレンジという働き方改革の取組を2012年度から開始。また、ダイバーシティマネジメント推進の取組で、介護との両立支援を進めています。
 これまで介護離職ゼロを目標に取組んできました。社員意識調査の結果、介護経験社員の割合が増えています。介護休業の取得者数も増加しました。企業の取組は、働く時間の柔軟性、働く場所の柔軟性、経済的支援、情報提供の4つです。
 介護と仕事の両立支援制度は、コアタイムなしのフレックスタイム制、介護を理由とした短時間勤務で通算3年利用できる制度を設計。積立年次有給休暇は、最大50日間、消滅する年次有給休暇の積み立てが可能。介護休暇は、対象家族1人につき年間10日、介護休業も通算1年間で6回まで分割して取得が可能です。また、経済的補助として、介護休業手当があります。両立支援プログラムとしてセミナーの開催や上司、人事、本人と3者面談、介護の専門家につなぐ機会を設け、支援しています。
 介護に直面しても慌てないよう40歳以上の社員と上司にあたる課長以上の社員にはセミナー受講を全員必須としています。社内で介護カフェというランチを取りながら介護の苦労話を共有する情報交換の場を提供。2か月に1回、介護の専門家を招き個別相談会を実施。相談窓口は、24時間365日、電話やメールで相談ができ、社内に専門のカウンセラーを配置し相談もできる。両立支援ハンドブックを作成し、全社員に配布。専用のサイトも設け、社内のポータルサイトから検索でき、支え合う風土を目指しています。

■株式会社はなまる ケアラー支援担当
角田 映子 氏

 ケアラー支援の取組を報告いたします。ケアラー支援活動は2007年に発足したはなまるレディースプロジェクトから始まり、2015年には男性社員も参加するようになり、多様性と働き方を提案する組織として活動、同時にケアラー支援プロジェクトも開始しました。
 はなまるレディースプロジェクトの企画公募でケアラー支援プロジェクトを提案し、再提案で承認されました。介護者への理想的な支援として、管理職に向けた介護セミナーの実施を目的に、無料相談窓口の社内への周知から始めました。プロジェクトメンバーで周知方法を検討し、社内報へのケアラー支援とサポートデスクの掲載、営業部会議に出向き介護の初動についてのロールプレイの実施、介護経験者や介護予備軍の社員による自社のバルでお酒を飲みながら介護話ができるケアバルの設置。また、管理職へのセミナーを実施し介護意識の促進。翌年には地域、幹部、経営者層向けに実施し、ケアラー支援活動が重視されはじめました。
 今期から自身が各エリアの店長会議に出向き、介護セミナーとワークショップを開催。介護が日常で当たり前になる、誰もが普通に口にできる環境を提供しています。また介護の基礎を知り、お互い様、助け合いの精神が醸成されることで介護離職防止につながっています。次の目標は問い合わせ窓口の設置とケアラーのメンタル面への支援です。
 いつ介護を行う立場になるかわからないという危機感と会社にはサポート体制があるという安心感を伝えたいと思います。

■社会福祉法人あいのわ福祉会 理事・法人本部事務局長
佐野 佑 氏

 福祉現場での働き方改革について紹介します。
介護現場の人材不足は喫緊の課題で、長く働き続けられる職場環境づくりを進めています。従業員の成長が法人全体の変革に、また質の高い利用サービスへとつながるようアイノベーションの取組みをトップの意思で行っています。重要な点は従業員の声、ニーズをいかに吸い上げるかで、年1回の自己申告書の提出、管理職との面談を通じ従業員のニーズを把握しています。
職員の介護ニーズは徐々に高まっており、介護休暇を複数回取得できるよう、時間単位での取得を可能にし、回数の制限なく介護時短勤務も柔軟に取得できます。
有給休暇も、時間単位で取得でき、未行使有給休暇は別にストックし、育児や介護、本人の私傷病の際に使用できる特別保存休暇制度を設けました。利用促進の活用や、取得しやすく、お互い様の雰囲気、風土の醸成に力を入れています。
啓蒙活動やワーク・ライフ・バランス応援ガイドブックを作成し配布。制度が利用しやすい職場環境づくり雰囲気づくり、風土づくりの一環として管理職全員に意識を高くもつよう促しさらに、ハラスメント防止ハンドブックを作成し、OJTを定期的に実施しています。
取組の成果として、育児休業と介護休業を取得した職員の復職率は100%です。従業員の法人への評価も70点です。
介護の問題は、千差万別で個人によって状況や課題は全く異なります。年齢の区切りがなく、終わりは見えづらいという問題があります。つまり、万人に当てはまる制度設計が非常に難しいです。コストをかけずとも、環境や風土づくりや変える工夫はいくらでもあると思います。

 

パネルディスカッション

パネルディスカッション風景

①介護支援の進め方と多様な介護への対応

松浦氏:介護支援の進め方、多様な介護への対応について意見交換します。まず、実態把握について佐野さんからお伺いします。

佐野氏:小規模企業では一人ひとりの役割が非常に重要なので、社員の声を聞き、なるべく対応できるよう、制度を少しずつ改良してきました。

松浦氏:面談で必ず介護についての課題を聞き、管理職に周知徹底しますか。

佐野氏:面談項目に介護の項目があります。

松浦氏:項目として加え必ず管理職が聞くことが、いい機会になります。

②介護について話しやすい風土づくり

松浦氏:角田さんに介護について話しやすい風土づくり、カミングアウトで工夫している点を伺いします。

角田氏:店舗従業員と本社従業員向けで周知方法が異なるため、現場に出向くことが大切です。セミナー後のアンケートから介護経験者が把握でき、誰もが普通に話せる環境づくりの大切さを感じます。

松浦氏:ミナーはカミングアウトのいい機会になるんですね。

角田氏:現場でセミナーを実施することで、終了後の社員意識は大きく変わります。

松浦氏:酒井さん如何ですか。

酒井氏:キャリアデベロップメントプランシートに年1回記入し、上司と面談します。上司に配慮を希望する記入欄があるのでカミングアウトしやすい環境が少しできています。

松浦氏:面談の機会を活用したカミングアウトは有効な手段です。

③企業が用意できる介護支援制度

松浦氏:企業が用意できる介護支援制度について、制度の工夫、効果的な支援内容を意見交換をします。
酒井さんからお願いします。

酒井氏:介護休暇の取得者数は年々増えています。企業は柔軟性を高める働き方ができる仕組みを提供し、社員はそれらの制度をうまく活用しながら働き続けることが基本的考え方です。

松浦氏:必要がなければ休業はしません。働きながら介護を両立できることがベストです。

④介護について話しやすい風土づくり

松浦氏:制度利用の方法や制度を知ることについて、角田さんにお伺いします。

角田氏:当事者になり、初めて制度の情報を探すのが現実です。介護休暇は有給で取得できますが、介護休業は別の手続きが必要になり、どちらが有効かを理解してもらいます。

松浦氏:佐野さんは現場中心の仕事の立場から、どういう制度を整えたらよいでしょうか。

佐野氏:対人サービス業なので、職場ありきです。現在導入している、介護休暇の時間単位の取得等は職員の声から実現したものです。

⑤風土改革の課題と今後の方向性

松浦氏:風土改革の課題と今後の方向性について角田さんからお願いします。

角田氏:セミナー導入に5年かかりました。サポートデスクがあること専任職員が配置されていることが非常に大事だと思います。

松浦氏:角田さんは、自身で手を挙げケアラー支援担当をされていますが、そのバックボーンは何ですか。

角田氏:母の介護がきっかけとなり、ケアラー支援の企画提案が通り、賛同者がいたことです。自身の介護は、仕事としてケアラー支援に携われることが自身の支えとなりました。

松浦氏:酒井さんに管理職の意識も含めて、風土改革についてどういう課題を持ち、どうしているかをお伺いします。

酒井氏:介護経験がなくても、上司が介護の問題を受け止める情報を持ち、寛容性があることが、醸成のポイントです。相談しやすい環境、介護が当たり前だという環境をつくることが大事です。介護カフェは参加者の満足度も高く、生の声を聞くしくみがあるとで、継続的な改善につながります。介護カフェの頻度は年3、4回で都度テーマを決め行っています。

松浦氏:佐野さんいかがでしょうか。

佐野氏:管理職も見解に温度差があります。経営トップが明確なビジョンを会議で発信し、年1回全職員に目標をたててもらうことで、目標の波及が目に見えてわかりうれしいです。

松浦氏:介護の多様化に人事とはどこまでできるか、また管理職としてどういうことが求められているのか。酒井さんよろしくお願いします。

佐野氏:人事は、介護経験者が望むことを把握し、制度設計、規定化すること。社外の専門家に橋渡しする機能が人事としてあれば有効です。 業務コントロールは管理職にしか行えないため、できる限りキャリアが断絶しないように配慮し、また、業務の負荷軽減を考慮することも必要です。上司が業務アサインの部分で知恵を絞ることが効果的だと思います。

松浦氏:角田さん如何でしょうか。

角田氏:人事としては、専任を置いて窓口を設置すること。問い合わせへの情報提供とメンタル面へのケアです。

松浦氏:最後に佐野さん如何ですか。

佐野氏:管理職としては従業員の声やニーズをきちんと吸い上げ、ニーズにあった制度をどう設計していくか。人事としては職員の配置をどうかんがえるかという取組です。

松浦氏:介護は非常に多様で、介護に直面した従業員の初動対応支援は共通基盤で、もう一つは働き方改革です。多様性に応じて、従業員がうまく使える選択肢を用意することが人事の制度設計で重要な点です。相談しやすい場づくりは管理職の共通のミッションになります。
また、介護を経験者した管理職が、自分の経験を押し付けないで、多様性に寄り添うことが非常に重要だと思いました。

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