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事例13:社会福祉法人げんき

外現場の声を聞いたルール作り
~育児・介護などあらゆる事情を抱えた職員が働ける職場を目指して~

社会福祉法人げんき

令和四年度取材

1.企業概要

設立:2012年
所在地:東京都品川区東大井5-5-13 リージア大井町ゼームス坂1F
従業員:61名(うち正職員41名)
事業内容:障がい児支援事業・障がい者の就労支援事業・障がい者の生活支援事業
URL:https://swc-genki.org/

2.取組の背景

 当法人は障がい児や障がい者の支援事業を行う社会福祉法人で、設立から10年以上経過しています。前身はNPO法人で、2012年に社会福祉法人げんきを設立しました。現在、多様化する社会に合わせた制度の整備に取り組んでいます。
取り組みの背景には、職員の8割が女性という職場環境があります。女性には特に、結婚・出産・育児などライフステージに応じた体調面等の大きな変化がありますが、制度が整う以前、職員が離職せざるをえない状況がありました。特に大きかったのは、育休から復職した際の問題です。子どもが3歳になるまでの育児短時間勤務が終了しても育児は続くため、正職員としてフルタイム勤務するのが大変困難でした。そのため、正職員以外の雇用形態に切り替えるしかなく、正職員と同様の業務であっても正職員と同等の処遇にはできないという問題が発生しました。現場から上がってきたのは「ライフステージの変化に応じた働き方についてもう少し考えてくれれば、出産後ももっと頑張れる」という声です。結果、知識や経験を持つ職員の離職につながるとともに、再就職の受け入れ体制も整備できていなかったこともあり、深刻な状況でした。
 当法人としては、法人内で働く中でベテランの域に達した従業員に離職してほしくないという強い思いがありました。そこで、前述の育児に加え、介護など家庭生活との両立を図りながらも、やりがいを持って働き続けられる環境を整えようと取り組みを開始したのです。障がい者を支える立場である「私たち自身が笑顔でいられる」ことを目的に現在も制度を整備しています。

3.取組内容

(1)短時間正職員制度の導入
 2018年度より短時間正職員制度を導入しました。時短勤務は、多くの場合、子どもが3歳になるまで、もしくは未就学児までしか利用できません。対して、本制度は取得期間の制限がなく、子どもの年齢にとらわれず取得できます。また、介護など、育児以外の理由でも取得可能です。
 育児・介護などの理由でフルタイム勤務できないとしても、正職員と同様の責任ある業務に携われるため、キャリアアップにつながります。年間4~5名が利用しており、3歳以下の子どもがいる女性管理職や小学生の子どもがいる職員などが利用しています。

(2)在宅勤務制度の整備・IT導入
 「コロナ禍で在宅勤務できたら、子育てしている人も助かる」という意見を聞き、在宅勤務制度を導入しました。対象は、非正規雇用者を含めた全職員です。新型コロナウイルスの感染が拡大した際には、在宅勤務規定や就業規則を迅速に改定しました。
 Web会議やグループウェアを活用し、さらに東京都のテレワーク促進助成金制度を利用した社用スマートフォンを貸与することで自宅でも円滑に業務ができるようにサポートしています。緊急事態宣言中は可能な部署に関しては交代で週2回の在宅勤務を実施しました。結果、コロナ感染による急な在宅や子どもの学級閉鎖などにも対応でき、コロナ禍の離職も0人でした。

(3)柔軟な勤務日数・勤務時間設定
 月単位の変形労働時間制を導入しています。短時間正職員は8:30~17:15の間で自分に合わせた勤務時間を柔軟に設定できます。

(4)女性だけでなく障がいのある職員や高齢者などの受け入れ推進
 多様な職員を受け入れる体制を整備しています。家族の介護をしながら働きたい職員、職場復帰を希望する女性、障がいのある職員、高齢者など、一人ひとりの事情に応じた働き方の実現を目指しています。

(5)残業削減に向けた取組
 残業は届出制で、業務内容の進捗を職員同士で共有し、残業ゼロを目指しています。

4.取組における工夫

(1)現場の声を聞く
 短時間正職員制度が導入された当初は、制度としてまだまだ未熟でした。フルタイム勤務者は朝礼と終礼で情報共有されますが、時短勤務者には共有されませんでした。働きやすくするための制度のはずが、働きにくくなっていたのです。そこで、「もっと情報共有を図れる仕組みにするべき」という時短勤務職員の声を聞き、都度、制度に反映してきました。また、規模の小さい組織だからこそ、一人ひとりの提案を受け入れ、意見が出やすい雰囲気を形成しています。この風通しの良い風土が、休暇取得の際の申請のしやすさにもつながっていると思います。

(2)管理者との徹底した話し合い・周知の徹底
 管理者に制度の必要性やメリットを理解してもらうことに重点を置きました。というのも、「8時間勤務の正職員の業務にしわ寄せが来る」との意見が必ず出てくると考えたからです。具体的には、短時間正職員制度を気兼ねなく利用できる環境がないと離職につながること、罪悪感を抱いたままの休職も職場復帰が困難となり結局離職の可能性が高まるため、最終的には正社員の負担が増えることになるということを丁寧に説明しました。一部の従業員だけではなく、全職員が短時間正職員制度を利用する可能性があるため、助け合いの精神が大切です。もちろん、休暇を取得する側も業務の質は変えないという意識を持ってもらうようにしました。短時間正職員制度の利用で働く時間が短くなるからといって、業務の質を変えてはいけません。取得する側と取得しない側のお互いの思いやりが重要であると管理者に説明しました。
 また、「いろいろな事情を抱えた人たちが働いていい」という雰囲気を形成するために、管理者との話し合いに時間をかけて丁寧に回数を重ねました。育児、介護、病気などでフルタイム勤務できなくなる可能性は誰にでもあります。従業員に自分ごととして考えてもらい、現場の理解も得ました。たとえば、ベテランの域に達した職員の離職を防ぐことは長期的に見ると制度を利用しない正社員の負担を減らすことになり、また、自分がもし育児や介護で休職することになったときに休暇が取りやすくなるということを説明しました。制度を利用する側の職員に対しても、彼らだけに限らずあらゆる職員がいつか利用する可能性のある制度であるため、安心して働いてほしいと説明し、制度の利用者が引け目を感じずに力を発揮できるように努めました。

(3)将来を見据えた制度の整備\
 新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、早期に在宅勤務制度を整備しました。コロナやテレワーク関連の補助金等を活用したことで、IT導入やクラウド化を迅速に進められました。

5.これまでの効果と今後の課題

(1)これまでの効果
 まず、短時間正職員制度があることで育休からの復帰が早くなりました。早い方だと、産後半年で復帰して短時間正職員制度を利用しています。法人と当事者、両者にメリットがある関係が構築できています。
 管理者との話し合いや従業員への周知を徹底して、「みんなで協力しよう」という雰囲気が形成できました。また、管理者が率先して短時間正職員制度を利用することで、助け合いの風土ができあがっています。
 さらに、離職者数が減少しています。女性が8割という職場環境の当法人において、コロナ禍の退職者数は0名、2021年度の退職者数は1名でした。「職員に離職してほしくない」「キャリアをサポートしたい」という思いで取り組みを進めた結果、働きやすい環境を形成できました。
 職員同士で残業を減らす仕組みの共有を行ったことで、社内全体の残業時間も減少し、多いときでも月平均3時間の残業にとどまっています。業務効率化することで職員に余裕ができるため、業務をおろそかにすることもありませんし、プライベートの時間も確保できています。
 在宅勤務制度の整備と同時にIT化・クラウド化も進めたため、在宅でも迅速な対応ができるようになりました。加えて、情報共有や意思の統一も円滑に行え、業務効率化につながっています。

(2)今後の課題
現 場の声を聞いて、都度ルールを変更していく意識を持って今後も制度を整備していこうと考えています。これまでも職場内の助け合いの積み重ねで新たなルールを導入してきました。従業員が60名ほどのコンパクトな職場という環境を生かして、新しい意見を取り入れ、積極的に制度化して、従業員のキャリアサポートを継続して行っていきます。

引用・参考資料                          
社会福祉法人「令和元年度 東京都女性活躍推進大賞 特別賞」
ライフ・ワーク・バランス EXPO東京2022「社会福祉法人げんき」

社会福祉法人げんき 職員インタビュー
https://swc-genki.org/recruit/

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