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体験談 Jさん
職場の理解があるから遠距離でも老老介護をサポートできる
【プロフィール】
●性別・年齢:女性・40代 |
【要介護者の状況】
●性別・年齢:男性・70代 |
1.介護の状況(属性、要介護者との関係)
宮城県にある実家の母が父を介護しています。父が喉頭がんになり2018年8月に入院して手術を受けました。1か月ほどの入院だったのですが、入院中に脳出血を発生し、右半身麻痺になってしまいました。病院でリハビリを受けるために、3か月間も入院することになり、2018年の12月の退院後は家での介護が必要になりました。母が介護保険の手続きをし、父は要介護2の認定を受けました。
退院した頃、父は杖を使って数歩、何とか歩ける状態でしたが、現在は杖があれば家中を一人で歩けるようになりました。階段の上り下りも、トイレも自分で行くことができます。まだ右手が動かないため食事の際には左手を使いなんとか自力で食べることができています。入浴は介助が必要で、母がサポートしています。
2.自身が行っている介護
東京と宮城で遠距離なため、1カ月半か2カ月に1度、会社の介護休暇を2日ほど取得して、土日祝日とあわせ5日間ほどの予定で実家に戻り、介護を手伝っています。母一人に負担が集中して、病気になってしまわないかと心配なので、実家に戻った時はできるだけ母の代行をし、母が数日でも休めるように、食事づくり、掃除、買い物、デイサービスの迎えなど、できる限り行っています。
また、母の困りごとや愚痴を聞くことも私の役割だと思っています。現在海外に住んでいる妹は、物理的な支援は何もできませんが、父母に時々連絡を入れて気遣いをしてくれているので、父母も心強く思っているようで助かります。父の妹(叔母)も何かと協力してくれるので、帰宅できる回数は多くはありませんが安心でき、有難いと思っています。
実際に介護を私が日々行っているわけではありませんが、母のメンタル管理が私の主な役割だと思っています。通院は月に1回で、がんの経過観察の治療を行っていますが、通院時は母と叔母が同行しています。私が実家に帰っているときは私が同行します。
3.介護サービスの利用状況
父は週に3日、午前中にデイサービスに行き、リハビリを受けてお昼を食べて帰ってきます。デイサービスで入浴することもできるのですが、父がどうしても家で入りたいと言うので、母が介助して入浴しています。入浴介助は身体的負担が大きいので、デイサービスで入浴してくれれば、母も助かると思いますが、どうしても嫌だというので本人の意思を尊重しています。また、週に1回作業療法士の方に家に来ていただいて1時間ほどリハビリをしています。週4日のリハビリを続けたことで身体機能は大分回復してきました。どのようなきっかけで体力が減退し、いつまた介護の負担が増える状況になるか分からないので心配です。
現在、母は元気なので父の介護を任せることができていますが、今後、母に何かあったらどうしようという不安はいつもつきまとっています。母が倒れないようにするために、私が出来るだけ実家に戻り父の介護をしたいと思っています。
4.勤務先の支援体制、利用状況
父が脳出血で介護が必要になることがわかった時点で、すぐに直属の上司に話しました。「気にせず休んでいいから」と言ってもらえたので安心しました。誰にも言わず自分で抱え込まなくて良かったと思っています。仕事は何人かでローテーションを組み行う仕事ですが、同僚は私の状況を配慮しつつも、円滑に仕事が進むような管理をしています。実家の介護から帰った後に出社した時は、父の病気の状態について「今はこんな感じです」と世間話の延長のような形で、気軽に上司に報告しています。
会社の介護休暇は、数年前までは年5日でしたが、現在は年10日になりました。また、以前は無給でしたが、現在は1日につき基本給の8割および通勤手当、住宅手当、扶養手当等の手当が全額支給されますので、助かっています。前述の通り、1カ月半か2カ月に1度、2日ほど介護休暇を利用しています。
5.仕事と介護を両立できた理由
映像の編集・音響効果などの事業は全て人の手で行われているので、会社は社員を大事にしています。介護は個人的なことなので、仕事との両立は難しく、介護を理由に離職をした人も過去にいたそうですが、現在は両立支援制度が整備されているおかげで、両立が可能になりました。
社会全体としては介護を理由に離職する人が増えているようですが、仕事を辞めて介護に専念するとさらに大変だと聞きました。経済的に苦しくなるし、介護うつに陥りやすいそうです。介護体験談でもそういう内容を目にしました。私には離職という選択肢はありませんでした。職場でも介護の事情を普通に話すことができ、制度も活用できます。
介護に関するセミナーも社内で開催されています。まだ参加したことはありませんが、会社が社員のことを考えてくれているという真剣さが伝わってきます。介護と仕事の両立に不安を感じている人にとっては心強いと思います。ライフ・ワーク・バランスを推進しているいい企業だと、自身が制度を利用するようになり実感しています。
遠距離介護なので不安はありますが、あまり深刻に考えすぎないことを心がけています。ネガティブなことを父にも母にも言わないと決めています。両親の近くにいる叔母の存在はとても大きく、感謝しています。
私が頻繁に家を開けるので、夫にも迷惑をかけていますが、理解を示してくれ、気持ちよく送り出してくれます。時には一緒に実家に行ってくれることもあり、心強いです。
6.仕事と介護の両立の際の苦労
遠距離介護なので、時間もお金もかかります。まだ子どもがいないので身軽に動けますが、金銭的な余裕がないと続けられません。会社にはいろいろな支援制度がありますが、金銭的な援助はありません。しかし、介護休暇は給与の8割分が支給されようになったのでありがたいと思っています。
介護についての情報を収集する段階でいろいろな人の体験談が書かれた本を読みましたが、介護は十人十色で、関わる人は様々な苦労していることがわかりました。私はまだほんの入り口にすぎないのだと思うと、気が楽になりました。今後どのような状況が待ち受けているかわかりませんが、その時々の壁を乗り越えられるような心構えを持っていたいと思います。
7.介護者へのアドバイス
介護は突然思いもよらないタイミングで訪れるので、事前に会社の制度とか国の制度とか地域の支援体制を知っておくといいと思いました。大枠を知っておくだけで、いざという時に慌てなくてすみます。細かいことは実際に介護が始まったときに相談すればいいと思いますが、いつ介護に直面してもいいように心構えを持つことが大切だと思います。
自分自身が介護と仕事を両立させたいという意思表示を職場ではっきり伝えることも大切です。オープンにすることで、介護についていろいろな情報が入ってくるようになります。また、一人で抱え込まずに両立のための選択肢を多く知り、ストレスを溜め込まないことです。医師や看護師から介護する人の状況、必要な介護の内容などを正確に聞いておき、地域の地域包括支援センターで相談したり、会社に相談窓口がある場合は相談することがいいと思います。