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体験談:Kさん
これまでの感謝を込めて、義父・義母・実母を介護、職場の理解でフルタイム勤務とも両立
【プロフィール】
●性別・年齢:女性・40代 |
【要介護者の状況】
●性別・年齢:女性・70代後半、男性・80代半ば(当時) |
1.介護の状況(属性、要介護者との関係)
2013年から4年にわたり、義母と義父の2人の介護と看護を行いました。仕事は10年ほど前からフルタイム派遣社員として大学の事務を行っており、介護や看護を行った時期を経て現在も継続しています。
義両親は私の家の近くに住んでおり、娘たちが幼いころから面倒をみてくれたり、金銭的な援助をしてくれたりと良好な関係でした。義母も義父も糖尿病で、毎週のように病院に通い、毎日インスリン注射を打っていました。義母の胆管がんが発覚し入院、手術、療養が続く中、義父はデイケア施設とショートステイを利用していました。4年後に義母、義父が相次いで亡くなりました。
義父母が他界して約3年が経った2021年8月、実母が突然動けなくなりました。原因は、「すべり症」。私は兄弟がおらず、実父は母の病気を前にどうしてよいかわからない状態だったので、私が実家に駆けつけ、日常生活ができるよう準備をしました。
2.自身が行っている介護
2013年の年末、義母が突然倒れ、胆管がんと診断されました。年明けに手術を行い、胆道だけでなく十二指腸など複数の臓器を摘出し、2か月程度の入院を経たあと、自宅での療養生活が始まりました。
一方、義父は以前から足の調子が悪く、退院後の義母には、義父の世話をしながらの療養が困難だったので、ケアマネージャーに相談した結果、義父のデイケア施設を探すことになりました。見つけた施設で週2回のデイ利用が始まり、少し慣れてからは別の施設でショートステイを利用し、義母の負担が軽くなるよう調整しました。
2017年11月、義母が20日間ほど入院しました。私もフルタイムで仕事をしていたので、毎日義父の面倒をみるのは困難でした。かといって20日間もの間、義父を施設に預けることも難しい。そこで、ショートステイができる施設複数を活用し、3日間ショートステイを利用しては退所、自宅に戻って誰かが仕事を休んで付き添って通院、また3日間ショートステイを利用、というように、施設利用を組み合わせて切り抜けました。
義母は退院しましたが、入院中と同じように義父がショートステイを利用する生活が続きました。2018年、年明けに義母が再入院。利用日数の関係で義父はもうショートステイが利用できなかったので、義母と同じ病院に入院させてもらいました。
義母の容体は好転せず終末医療を受けることになり、義父一人で入所する施設を探し、2018年4月から入所する契約を交わしました。義父の施設入所を控えた3月に義母が他界。義父も直後に体調を崩し、施設に入ることなく入院し、9月に亡くなりました。
2021年8月、実母が「すべり症」で動けなくなったとき、実家に着いた私はその日中にケアマネージャーを探し、手すりやベッドを入れ、入院の手配をしました。母は9月に1週間ほど入院し、リハビリを経て日常生活を取り戻しました。
義両親の介護をした経験があったので、まずはケアマネージャーに頼めば何とかなる、という意識がありました。これまでの介護経験が役に立ってよかったと思います。
母のリハビリ期間中は、家族が交代で実家に通ってサポートをしました。すでに就職が決まっていた大学生の娘も、一時期私の実家で暮らして母の面倒を見てくれたので、とても助かりました。
3.介護サービスの利用状況
義両親・実母の介護ともに、ケアマネージャーの存在が大きかったです。
義父が通っていたデイケア施設に常駐していた方は、何かと相談にのってくれたほか、家にも頻繁に様子を見にきてくださり、「ベッドを入れようか」「車いすを借りようか」「手すりをつけようか」など、必要なものを提案していただきました。介護認定のときも助けていただきましたし、ステイ先に連れて行っていただくこともあります。
デイケア施設は3か所程度利用しましたが、施設によって持ち物や利用できる日数など、施設ごとに違う利用条件を自分の中で整理するのが大変でした。糖尿病の義両親に対し、インスリンを打ってくれるところとそうでないところがあったほか、膨大な薬の準備や持たせ方、持ち物の名前の書き方など、入所に当たっての準備にもひと苦労でした。施設に預かってもらう段階になれば負担は軽減されますが、消耗品の補充や衣服の洗濯など、自分で用意しなければならないこともあります。いつもおむつと洗濯物を持って、自転車で地元を走り回っていました。
また義父も難しい性格でしたので、やっとショートステイの部屋に空きが出たと思っても「あの部屋は嫌だ」「おやつが嫌だ」「(妻に)会いたい」「早く出してくれ」など主張が多く、そのための対応で呼ばれることもしばしばでした。
4.勤務先の支援体制、利用状況
勤務先には、派遣社員が介護を行うにあたって利用できるような制度は特にありませんでしたが、上司や同僚など職場の人たちは、私の介護と仕事の両立に関してとても理解を示してくれました。
私は時給制のシフト勤務だったので、勤務時間はある程度自分で決められたほか、勤務時間の変更(始業を遅くする、終業を早くする)や、有給休暇の取得により介護と仕事を両立してきました。同じ派遣会社に継続して勤めているので、有給休暇の残日数には余裕があり、使い切ったことはありません。大学職員の一般職員の方たちは半日休暇制度があるので、私も半日休の有休を使えたらありがたいと思います。
職場では、直属の上司が持病で通院していたこともあり、遅刻や早退、有給休暇取など私の勤務時間変更を問題なく受け入れてもらえました。また、がんを患った経験がある、もしくはがん闘病中であったり、白血病で家族を亡くした職員のほか、療養で長期休暇を取ったことのある職員など、病気や看護経験のある同僚が多かったので、話を聞かせてもらったり、情報交換をさせてもらったりしました。いずれみんなそうなる、病気になったら仕方がないよと声をかけてくれるなど、職場全体として介護と仕事の両立に関する共感と理解がありました。
仕事については、もう1人の派遣社員と分担して進めていました。担当業務は分かれていましたが、代表メール対応、教員の経費申請書対応、郵便物の仕分けなど共通の業務も多かったので、どうしてもその日にやらなければならない担当業務に優先的に取り組み、共通の業務については対応をお願いするなど、工夫していました。
仕事が忙しい時期は兄夫婦と協力してお互い様という思いで実母の介護を分担できたこともあり、奇跡的に仕事に穴をあけずに済みました。継続して働かせていただいているので、きっちり仕事をしていれば介護と両立して職務を全うできると思っています。
5.仕事と介護を両立できた理由
義両親への感謝の気持ちが、仕事を続けながら介護を行うモチベーションになったと思います。
経済的な理由もあり、私が仕事を辞めるという選択肢はありませんでした。私たち夫婦には娘が2人いますが、義両親には子育てを手助けしてもらったり、経済的にも援助をしてもらったりしていたので、介護が必要になったときに私がお世話をするのは当然と思っていました。他人ではできないような下の世話なども、お世話になったお返しをしなければという意識があったからできたと感じています。
また、家族と協力できたことも大きかったと思います。夫は平日休みで私が土日休みということもあり、介護にあてられる曜日を分けられたのも好都合でした。車での送迎は夫、身の回りの世話は私、私が仕事で抜けられないときは娘、入院中の母の世話は義姉など、できることをできる人がやる、という分担だったと思います。
そして、ケアマネージャーさんにはとても感謝しています。介護についての知識や情報を提供してくれるだけでなく、話を聞いてくれますし、アドバイスもしてくれる。介護に直面した方には、ぜひプロの力を活用してほしいと思います。
6.仕事と介護の両立の際の苦労
義両親の介護にかかわる夫、義父、義母、義兄、義兄嫁、がメールや電話でそれぞれの思いや要望を伝え合うので、それを私が一家の意思決定にまでまとめ上げていました。
家族のほかにもケアマネージャー、施設、医師、相談員、相談員から紹介されたホームの担当の方など、いろいろな人が関わってきますが、こうした人たちとの窓口一切を私たち夫婦が担っていました誰かがやるしかないと思い引き受けていたのですが、施設や病院のルール上思うようにうまく進まないこともあり、精神的にも辛く、介護自体の作業よりも負担が大きかったです。
7.介護者へのアドバイス
介護と向き合っているときは、悩みや愚痴を聞いてくれる相手の存在が助けになります。もしそういう相手がいないなら、ケアマネージャーや相談できる窓口など家族や友人以外の人たちを頼ってもいいと思います。自分の思いを吐き出さないと介護もつらいですし、仕事と両立するのは難しいと思います。
一人で抱え込まず、共感してくれる誰かと話をして「そうだね、大変だね」という言葉がもらえると、それだけで気持ちが軽くなります。ぜひそうした相手を見つけて欲しいです。
また、介護にはさまざまな情報と行動力が必要です。介護に直面し、情報収集を行う中で、頼れる人や機関がたくさんあることがわかりました。何かの拍子に手にした紙に書いてある情報も、使うかどうかは自分次第。そこで動くことで、未来の自分を助けることになるかもしれません。
私の実家の両親は、父が87歳、母が80歳になります。母のすべり症は順調に回復していますが、めまいなど他の不調を抱えています。また父は最近耳が遠くなり、物忘れも多く、高齢であることから認知症の心配があるだけでなく、マントル細胞リンパ腫というがんを患っています。両親の介護が目前に迫ってきている状況と言えるでしょう。
また、この先どんな人生が待っているかは誰にもわかりません。そうした中で、私たちが義両親の介護をしている姿を子どもに見せられたことはよかったと思います。その経験が糧となり、子ども自身が、自分や大切な人が病気になったり介護が必要になったりした際に、自分の親はこう向き合っていた、という記憶を役立ててくれたら嬉しいです。