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体験談:Mさん

自身の更年期と親の介護が重なるも、周囲のサポートも得ながら仕事と両立

【プロフィール】

●性別・年齢:女性・50代
●勤務先の事業内容:製造業
●従業員規模:5,000名超え
●職務:事務職
●家族構成:配偶者
●兄弟姉妹:妹
●居住地:東京都
●介護歴:6年

【要介護者の状況】

●性別・年齢:女性・80代、男性・80代
●労働者本人との続柄:母、父
●要介護度:女性・要介護1、男性・要介護4
●居住地:京都府
●利用した介護サービス:ケアマネジャー、デイサービス、通所リハビリ、ショートステイ、訪問リハビリ、訪問歯科、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修、配食サービス、介護タクシー、など

※本記事は、更年期症状が現れた方の体験談です。

1.自身の治療、家族の介護の状況(属性、要介護者との関係)

 40代後半、更年期症状が現れ始めた頃と同時期に両親(当時70代)の介護が始まりました。仕事も続けていたため、当初はかなり大変だったのを覚えています。また、両親は京都、私は東京に住んでいるため、遠距離介護でもあります。
 介護が突然始まったので、初めの頃はとまどいや否定の感情が強かったです。後述していますが、状況を完全に受け入れられるようになるまでは2年以上かかっています。

2.自身が行っている治療・介護

 自身の治療に関して、最初はサプリメントや市販薬、漢方薬などを飲んでいました。
 その後、更年期の勉強会をしているなかで知った「更年期指数」を自己採点した際に、「更年期・閉経外来を受診しましょう」との結果が出たため、日本女性医学学会の専門医がいる近所の婦人科に行き、ホルモン補充療法と漢方を始めました。
 そこから、日々の仕事をこなしながらも、バランスのよい食事に加え、毎朝同じ時刻に起きるなど質のよい睡眠をとり、サイクリングなどの運動も行うことで、生活習慣の改善に努めました。
 両親の介護については、東京と京都の遠距離介護のため、現場での介護はプロに任せ、自身は精神的な支えができるようにしています。まずは余っていた有給休暇を1か月分取得して帰省し、在宅介護態勢を築きました。具体的には、自治体や民間の介護サービスを決めたり、かかりつけ医を探したり、近所の人に挨拶したりなどです。
 保険内サービス(ケアマネジャー、理学療法士、通所リハビリ、デイサービス、かかりつけ医、歯科医、介護用具レンタル)、保険外サービス(紙パンツ、介護タクシー、宅配弁当、宅配業者による見守りサービス)を利用し、また、近所の人や妹にも支援してもらい、自身は遠隔地からマネジメントを実施しています。そして親の経済的なサポートもしています。
 コロナ前は月次で、コロナ禍の現在は四半期に一度のペースで帰省しています。帰省時には掃除、洗濯、食事の支度、買い物などの家事全般と、排泄介助、入浴や洗面の介助、通院の外出付き添いに加え、体操や脳トレゲームなどのレクリエーションを行っています。

3.介護サービスの利用状況

 利用経験のある介護サービスは以下の通りです。
●ケアマネジャー
●デイサービス
●通所リハビリ
●ショートステイ
●訪問リハビリ
●訪問歯科
●福祉用具貸与
●特定福祉用具販売
●住宅改修
●配食サービス
●介護タクシー など

4.勤務先の支援体制、利用状況

 フレックスタイム制度を利用しました。平日の日中に、京都にいる親やケアマネジャーをはじめとする介護関係者と電話やビデオ通話を行うときに利用しています。
 テレワークも活用しています。新型コロナウイルス感染症の拡大前は在宅勤務がなかったため、通勤の必要がありました。職場の上司に相談し、週1日テレワークができるようになってからは通勤にかかっていた3時間が浮きました。その浮いた時間で親や介護関係者と電話などで話せるようになりました。
 また、会社の人事部から、介護の積立休暇(有給休暇)が利用できると教えてもらい、1か月分取得しました。その1か月間で京都に帰省し、介護態勢を整えられました。
 更年期治療や更年期に伴う体調不良の際には、フレックスタイム制度や時短勤務を利用しています。また、女性の健康課題を緩和する社内有志の活動を立ち上げ、更年期に伴う健康上の問題を女性社員同士で話しています。

5.仕事と治療・介護を両立できた理由

 まず介護の知識を増やしたことで、介護に対する不安を取り払えました。諸先輩方に話を聞きに行くだけでなく、自らも介護に関する勉強をしました。さらに、介護の専門家の方にも相談に乗っていただけたため、不安点・疑問点は全てぶつけられました。さらに、介護仲間から「どうやったら親は動いてくれるか」などの情報をもらったこともあり、介護がうまくいき始めました。
 また、上司や同僚のサポートもあり、職場でのバックアップ体制を構築してもらいました。上司には「もし緊急で病院から電話があったら、京都まで帰らないといけない場合があり、長期で休みが必要な時も考えられる」と相談しました。すると、「そういう時に仕事が回らないと大変だから」と副担当一人を配置してバックアップ体制を整えていただきました。おかげで連続休暇が取れるという安心感が得られるようになりました。
 介護は親が子に与えてくれる「変化のチャンス」だと気が付いたことも両立できた要因の一つです。年々、親のできないことは増えてきていますが、今できることを数えるようにしています。それは、同僚に「まだ家で介護できるだけ幸せだ」と言われたこともきっかけです。その同僚は、父を在宅介護したい気持ちがあったものの、病院で亡くした過去を持っています。会社と家の往復だけの生活ではわからなかったことが、介護をすることで見えてきました。今までなかった人間力・共感力・現場力が身についてきたと思います。今は、親に「介護をさせてくれてありがとう」と感謝の気持ちでいっぱいです。
 また、私の場合は更年期も重なっていたため、更年期症状の治療との両立についてもお伝えします。
 更年期と仕事を両立できた一番の理由は、自身で社員有志の放課後活動を立ち上げたからです。活動としては、週次のストレッチやマインドフルネス瞑想、セミナー(薬膳、漢方、睡眠)の開催などがあります。また、この放課後活動では女性の健康課題に関する雑談ができます。「最近頭痛がしてね」「あるある!」「こうするといいよ」といった会話が仕事や職場と関係なく、気軽にできるため、安心安全の場という雰囲気が形成されています。また、年2回の外部講師による講演会や年代別女性の健康課題の勉強会も開催しています。女性の健康課題について関心を持つ社員が増えてきているのを実感でき、実際、同じ部署の人とも話しやすくなりました。

6.仕事と治療・介護の両立の際の苦労

 私が仕事と介護を高いレベルで両立できるようになるまでには2年以上かかっています。突然介護が始まった当初は、とまどい・否定から入りました。更年期も重なり、加えて会社にも介護に関する理解がそれほどなく、いっぱいいっぱいになっていたのかもしれません。しばらくすると、母の物忘れが激しくなってきました。母は昔、スーパーウーマンのように何でもできて尊敬していた存在だったため、物忘れの原因がなぜかわからず、混乱しました。加えて、近くに住んでいる専業主婦の妹は度々口を挟んでくるだけで行動には移してくれなかったため、怒りの感情も湧いてきました。また、なぜ自分ひとりが睡眠時間を削って身体に不調が現れても介護をしなければいけないのかと拒絶反応を起こしてしまった時期もありました。1年ほど経過してからは、あきらめの気持ちもあり、割り切って仕事と介護を両立していました。ようやく人間的・人格的理解の段階に入ったときには、徐々に両立に対してポジティブな感情を抱けるようになり、退職の考えもなくなっていきます。そして、2年以上経過して、介護は親が子に与えてくれる重要な「変化のチャンス」だと考えられるようになったわけです。
 特に苦労した点が3つあります。
 まず、親の介護が始まった時期が更年期と重なったことです。更年期症状が現れ始めたのは40代後半の頃です。更年期症状は女性ホルモンの減少(1)やホルモンに対する感受性の高さも原因ですが、私の場合は環境的要因(介護と重なったこと)が最も大きな原因だと考えています。仕事と介護の両立だけでも大変なのに、更年期症状もあったため、仕事へのアウトプットはいつもの半分ほどになってしまいました。
 2つ目は、当時、介護休暇のような制度を実際に利用している社員がおらず、社内に介護の相談ができる雰囲気がなかったことです。また、更年期症状に関しての話をするのにも高いハードルがありました。「自分の評価に影響するのではないか?」という不安がありましたが、思い切って上司に話しました。すると「そんな赤裸々に話さなくていい」と遮られてしまいました。そのため、社外の介護専門家や更年期障害に詳しい人に相談したという経緯があります。介護や体の悩みを話せるようになったのは最近の話です。ただ、女性の健康課題と介護の両方を総合的にカバーするための、社内の相談窓口はいまだにありません(それぞれの窓口は、別々には開設されています)。
 3つ目は、介護に関する支援制度が足りないことです。社内では、育児に関しては費用補助があるものの、介護には一切ありません。また、コロナ禍においても、育児に関する休暇は整備されたのですが、介護に関する休暇は整備が追いついていません。このため、たとえば、デイサービスなどの介護施設がコロナの影響で閉館しても特別休暇が取れないなどの支障があります。

7.治療・介護を行う労働者へのアドバイス

 社内にサポート体制がない場合、社外の専門家を頼った方がいいと思います。私の場合は、社内に相談できる環境がありませんでした。話しやすい雰囲気が形成されている会社ばかりではないと思います。特に、同僚に迷惑をかけてしまうと思いがちな更年期症状のような体のことや家族の介護については言いにくいのではないでしょうか。一人で悩みを抱え込んだ結果、キャリアを諦めるより、社外の人や相談窓口を頼った方がいいのではないかと思います。

引用・参考資料
(1)公益社団法人 日本産婦人科学会「更年期障害」
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14

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