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体験談:Kさん

30代でケアラーになり介護と仕事を、理解者に相談して両立させる(若者ケアラー)

【プロフィール】

●性別・年齢:男性・40代
●勤務先の事業内容:翻訳、海外リサーチ、マーケティング、ビジネス支援
●従業員規模:54名
●職務:シニア・プロジェクト・マネージャー
●家族構成:配偶者

【要介護者の状況】

●性別・年齢:女性・40代
●労働者本人との続柄:配偶者
●要介護度:要介護3
●居住地:大阪府
●勤務地:東京都
●利用した介護サービス:ケアマネージャーによるケアプランの作成、福祉用具のレンタル(介護ベッド、車いす、入浴補助具)、特定福祉用具の購入、デイサービス

1.介護に至る背景と状況

私と妻は30代で結婚しましたが、結婚後まもなく妻は健康診断で卵巣腫瘍が発見され手術を受けました。術後に原因不明の腹痛を訴えるようになり、定期的な通院と介助が必要となりました。病院に通院することで、その後の持病となる不整脈や甲状腺異常、副腎腫瘍なども見つかりました。そんな中、2020年の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間中に妻は脳出血を発症してしまいました。脳出血治療後も右上肢麻痺、右下肢麻痺、失語症が残り、身体障碍者1級の認定を受けて介護が必要な状態となりました。

2.介護サービスの利用状況

妻が身体障碍者の認定を受ける前から、持病の治療のために複数の病院に通院していました。甲状腺の治療のためには分泌内科、不整脈の治療のためには心臓血管内科のように一つの病気毎に、異なる病院の異なる科に通院していたので時間的、経済的負担は大きいものでした。しかし、脳出血を発症した後には、治療してくださった病院が紹介状を書いてくださり、一つの総合病院内ですべての病気も見ていただけるよう集約してくださり、大変助かっています。

脳出血を発症してから約一か月の治療を行いましたが、妻の体には右上肢麻痺、右下肢麻痺、失語症の後遺症が残ってしまいました。病院内の地域連携室に所属しているケアマネージャーが担当者として、リハビリやその後の介護生活についても計画を立ててくださいました。期せずして新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間中だったために、ケアマネージャーが患者である妻と直接、介護計画を企画してくださり大変助かりました。

その時から妻が受けている介護サービスは、ケアマネージャーによる月一回の介護計画の確認と更新、デイサービスへの通所リハビリ、福祉用具貸与(介護ベッド、車いす、入浴補助具)、特定福祉用具の購入などです。宅食サービスや訪問介護については、介護生活が始まったのが新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間中だったこともあり、最初から導入しておりませんでした。ケアマネージャーからは介護保険負担割合書もいただいていますので、サービスの導入も検討しているところです。

他県にいる家族からの援助も、介護生活が始まったのが新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間中だったという理由から、遠慮してもらっていました。家族は何かできることをしたいと申し出てくれていますので、こちらも検討しているところです。

3.勤務先の支援体制

妻が持病の治療のために通院していた頃は、勤務先には特に相談していなかったのですが、脳出血を発症したときには、現状を報告しました。障碍者1級の認定を受け、自宅で介護生活を送ることになったので、どんな形にせよ業務に支障をきたしてはいけないと考えました。上司に報告をすると、会社の代表取締役から面談の申し入れがありました。勤め先にはもともと、何でも話せる風通しの良い雰囲気があったのですが、その面談の時には妻の状況と、私が行わなくてはならない介護の課題を包み隠さず話し合うことができました。代表取締役からは「当社はあなたの介護生活を全面的にバックアップします」とのはっきりとした、心強い言葉をいただきました。

さらに直属の上司も介護経験者であったので、私の境遇をよく理解し介護と仕事の両立のための実際的なアドバイスを下さいました。

4.介護と仕事の両立のためのアドバイス

上司からは、私自身が同僚に自分の状況を説明した方がよいとのアドバイスをいただきました。それで、同僚に妻の状況、自分の介護生活について可能な限り自分で説明してきました。ある同僚は、上司からではなく私から直接状況を聞けたことがよかったと言われました。もし上司から業務連絡として状況報告をされたなら、協力を惜しんでいただろうとの事です。このようなアドバイスは非常に実際的でした。

さらに当社は、はたらき方としてテレワークが推奨されていますが、国際的な業務のため8:00から21:00のうちの8時間がコアタイムとなっています。しかし上司からはコアタイム中でも必要な時は遠慮なくリモート会議中のビデオをOFFにしても良いとの許可を得ています。要介護者は小さな事、例えば、袖をまくる、何か落としたものを拾う、器具の電池を変えるといったことに助けを必要としています。そして、それらの事を助けるのには意外と時間がかかります。そのようなことが突発的に発生して私がビデオ会議のビデオをOFFにすることは社内で共有されているために、気後れする必要がなく大変助かっています。

5.両立のコツ

私はシニア・プロジェクト・マネージャーとして社内の複数の業務を管理しなければなりません。時にそれは10以上のプロロジェクトとなり、それぞれのチームに対応しなければなりません。社内で私の介護課題を共有していただいているとはいえ、私自身は仕事を効率的に行わなければならないと感じています。そのために以下の二つの事を心がけています。

一つ目は各プロジェクトに優先順位をつけるということです。複数ある案件の中で自分が重点的に管理するプロジェクトを見極めるようにしています。10のプロジェクトがあれば2、3のプロジェクトは積極的に管理するプロジェクトとしています。残りの7、8のプロジェクトは信頼できるチームメンバーに委ね、その進捗を見守るように心がけています。そうすることで、介護と仕事の両立のための時間を確保しています。

二つ目はテクノロジーをフル活用するということです。介護のためにオンライン会議に参加できなくてもクラウドに保存されている動画を見る、妻の病院の待ち時間に資料を見る、などはスマホがあれば可能です。また、介護をしている時にもワイヤレスイヤホンがあれば、会議に参加したり、資料を読み上げて聞いたりすることができます。

そのようにして、介護と仕事の両立を図っています。

6.介護をする若い労働者へのアドバイス

私も家族に要介護者がいることを恥ずかしがる気持ちを理解することができます。当然、要介護者となった親、配偶者、子供が悪いわけではありません。しかし、他の人と違う状況におかれた自分が、異質な者であるという気持ちは誰にでもあるものです。それが若い方であればなおさらでしょう。しかし、恥ずかしいという気持ちは、誰にも相談しないという結果になってしまうのではないでしょうか。あくまで私の場合ですが、相談したことで道が開けました。

最初は自分の状況を会社に報告しなければならないという、社会人としての常識が動機となった事務的な報告でした。しかし状況を聞きつけた会社の上司、さらには代表取締役までが親身になってくれました。会社の同僚も私の至らぬ点をフォローしてくれます。介護には予期しない時間や労力がとられることもあります。そのためにオンライン会議を中座してしまうこともありますが、同僚が会議を続行してくれるような場面もあります。私の勤め先の上司は今でも約1カ月に一度、介護の近況について定期的に尋ねてくれ、支援を表明してくれます。

若い方々が介護を行わなければならなくなった時には、あなたの周りに理解者が必ずいるということを忘れないでいただきたいと思います。会社の上長や同僚に相談してみてください。外部の医療関係者や自治体のサポートセンターや地域包括支援センターで相談してみてください。きっとあなたの状況を理解し、支援を表明してくれる人がいることでしょう。

そうするなら、家族の介護も、あなたがやりたかった仕事も、諦めることなく両立する道が開けるのではないかと確信しています。

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