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介護経験者に訊いた「仕事と介護の両立」

コラム

介護経験者に訊いた「仕事と介護の両立」

公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 森 義博

平成27年度取材

仕事と介護の両立と介護離職の実態をアンケート調査

家族の介護をするために毎年10万人もの方が離職していると言われています。一方で、仕事を続けながら介護をやり遂げられた方も大勢おられます。

仕事と介護を両立できた方とできなかった方の違いはどこにあるのでしょう。それを探るため、ダイヤ高齢社会研究財団は明治安田生活福祉研究所と共同で、平成26年に「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」を実施しました。
正社員として働いていて親の介護に直面した人を、介護をしながら同じ勤務先で同じ働き方を続けられた人(ここでは「継続就労者」と呼びます)、同じ勤務先で正社員からパートに変わるなど働き方を変更した人(「働き方変更者」)、勤務先を辞めて転職した人(「転職者」)、勤務先を辞めて介護に専念した人(「介護専念者」)の4つのグループに分け、さまざまな視点から比較してみました。

このコラムでは、調査結果の中から、勤務先の制度や職場環境に関する部分を中心にご紹介します。

仕事を変えずに介護と両立できた理由は

継続就労者と働き方変更者に、勤務先を辞めずにすんだ理由を訊ねたところ、継続就労の男性のほぼ半数が「家族や親族の協力」と答えました(図1)。大半のケースは妻の協力によるものでしょう。
男性の場合、継続就労者と働き方変更者に共通しているのは、家族や親族、介護サービス業者や施設のように、自分以外の介護の手があったことを理由に挙げた人が多い点です。
女性も似た傾向にはありますが、働き方変更者の1位が「介護サービス業者や施設の利用」である点が特徴的です。自分の働く時間を調整したうえで、デイサービスなどを利用して介護を乗り切る女性の姿が目に浮かびます。さらに、「収入水準を確保したい」を女性の3割弱が、「職場(仕事)が好きで働き続けたかった」を働き方変更の女性の約3割が挙げている点も目を引きます。今の職場を離れたくないという強い気持ちを持って、職場の制度を利用しながら工夫をして頑張っている様子が窺われます。

図1 介護をしながら働き続けることができた理由(複数回答。上位項目抜粋)

図1 介護をしながら働き続けることができた理由(複数回答。上位項目抜粋)グラフ

職場の介護支援制度を知ることが、介護離職を防ぐ最初の一歩

職場には介護を支援するさまざまな制度があります。法律で定められているものもあれば、法律を上回る制度を独自に用意している職場もあります。

それでは、介護をする人は、職場のどんな制度を利用したのでしょうか。働き方変更者をみると、「1日単位の有給休暇」や「半日や時間単位の有給休暇」など、一般的な休暇を介護のために使っている人が多いことがわかります。「介護休暇」「介護休業」「労働時間や日数の短縮」といった介護のための制度を利用した人は、それぞれ1~2割程度でした(図2)。

ところで、この質問でとても気になるのは、介護専念者の6割以上が、制度を何も利用せずに離職してしまっている点です。その中には、制度をよく知っていれば、それを上手に使うことで離職せずにすんだ人も少なからずいるでしょう。自分の職場にはどんな介護支援制度があって、自分にはどれが役に立ちそうなのかを知っておくことが大切です。

図2 仕事と介護を両立するために利用した職場の制度や施策(複数回答。上位項目抜粋)

図2 仕事と介護を両立するために利用した職場の制度や施策(複数回答。上位項目抜粋)グラフ

仕事と介護の両立に役立つと思う制度はかなりある

このアンケートでは、「どんな制度や施策が仕事と介護の両立に役立つと思うか」という質問をしています。介護経験者に訊いているわけですから、回答には実感がこもっています。継続就労者と転職者の回答を比較すると、興味深い違いが見られました(図3)。

継続就労者で最も多かった回答は「介護休暇制度」でした。ただ、図2からもわかるように、介護休暇の利用率は必ずしも高くありません。また、継続就労者で介護休暇制度を利用したことがある人は、男性が5.0%、女性も5.4%にすぎませんでした(図は割愛)。介護休暇制度を仕事と介護の両立により役立つ制度にするためには、年間5日という現行の法律上の上限を拡大するだけではなく、取得しやすい環境づくりが欠かせないといえるでしょう。

環境づくりといえば、継続就労の女性の3人に1人が「職場の介護に対する理解・支援」を挙げている点が注目されます。男性も割合こそ女性に及びませんが2番目です。制度を整えるだけではなく、それを支障なく利用できる職場環境が重要だということがわかります。介護は人生の中で誰にでも起こりうるイベントです。「お互いさま」という意識を自然に持てる土壌づくりが求められます。

転職者の回答で継続就労者と比べて特に目立つのが「在宅勤務制度」です。どの職種でも採用できるわけではありませんが、介護離職防止の観点からは検討に値する制度といえるでしょう。

図3 仕事と介護の両立に役立つと思う職場の制度や施策(複数回答。上位項目抜粋)

図3 仕事と介護の両立に役立つと思う職場の制度や施策(複数回答。上位項目抜粋)グラフ

制度だけではなく運用が肝要

仕事と介護の両立を進めるためには、制度を作るだけではなく、それをしっかり利用できるように、従業員に情報を提供し、利用しやすい職場環境を整えることが大変重要であることがご理解いただけたと思います。仕事と介護の両立に役立つと思う会社の制度や施策として、転職者の2割近くが「人事評価がマイナスとならない運用」と回答していることが、とても印象的でした。

【「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」の概要】
  • 調査対象:親の介護経験のある全国の40歳以上の男女のうち、介護開始時の働き方が「正社員」の人
  • 調査時期:2014年8月30日~9月1日
  • 調査方法:インターネット
  • 回収数:2,268人
  • 調査主体:公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団、株式会社明治安田生活福祉研究所
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