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仕事も介護も充実を目指して 介護の時期別、ワーク・ライフ・バランス

コラム

仕事も介護も充実を目指して 介護の時期別、ワーク・ライフ・バランス

ケアコンサルタント 川上 由里子

平成28年度取材

大切な人を支える介護、自分自身を育てる仕事。私たちはある日突然、その仕事と介護の両立に遭遇します。「何から手をつけたらいいの?」「仕事と介護、両立できるの?」と戸惑う人は少なくありません。慣れない事柄が多く目前の対応に追われ混乱しがちですが、家族(被介護者)の状態がどのように変わっていくかを把握し、それに沿ってとるべき行動を整理すると、仕事と介護の両立が考えやすくなります。介護に直面する前にどんなことが起こるのか、何が必要になるかなどを知り、今からできる準備を進めておくことが重要です。

介護の大まかな時期を理解しましょう

介護(被介護者の状態)はおおむね以下の段階を通ります。その時々で抱える悩みや必要とする情報、サービス、行動が異なります。

①医療期
<緊急対応>:生命への安全を優先し、病気への治療が行われます。
<回復期>:退院を目標に疾患に応じた治療やリハビリが行われます。
②介護導入期:
介護の必要性がみえる時期。介護者は介護する態勢を整えます。
③介護安定期:
ケアマネジャーを選び在宅介護サービスを活用しながら生活します。
または、心身の状態にあった施設へ入所して介護サービスを受けます。
④終末期、看取り期:
臥床時間が長くなり、十分な介護や医療の支援を必要とする時間。
家族はお別れの時間にも備えます。

活動の場を2つに分けて考えてみる

・パーソナルな場(家庭、施設など)
・職場
の2つに分けて、それぞれで行うことを整理しましょう。

仕事と介護の両立におけるワーク・ライフ・バランス推進例(モデル)

①医療期<緊急対応>

緊急入院時にすること、できること

「元気だった親が突然倒れた」親の突然の変化に戸惑い、様々な問題により家族は途方にくれてしまう時期です。慌てずに考えるべき問題を一つひとつ整理しましょう。

【パーソナルな場】

  • 医師との面談には立会い、病状、治療方針等を確認し経過を見守りましょう。顔を見せて家族を安心させることも大切です。
  • 状況を正確に把握しましょう。問題や課題が明確となり適切なプランを立てることが可能となります。その際、記録も忘れずに。家族間での情報共有に役立ちます。
  • 親族や地域近隣への報告、ご挨拶を行います。
    ※緊急連絡先や家族のパーソナルデーターは事前にまとめておくと、いざという時に役立ちます。

【職場】

  • 上司へ報告する。
  • 介護支援制度を確認する。
  • 面談や受診の付き添いのために休暇取得(介護休暇等)。

 

医療期<回復期>

転院先、退院先を選ぶ

状態が安定したら急性期対応の医療機関から適切な環境への移動が必要となります。

【パーソナルな場】

  • 退院後の長期的、総合的な生活の場プランを立てます。(同居、近居、遠距離介護、施設等)
  • 転院先情報や在宅介護準備について、医師や地域連携室の看護師、MSW(メディカルソーシャルワーカー)等に相談しながら、さまざまな角度から検討します。

※おもな転出先:リハビリ病院/療養型医療施設/老人保健施設/有料老人ホーム/自宅など

【職場】

  • 上司に報告、相談しながら両立課題を共有。
  • 職場の仕事と介護両立支援制度の確認、手続き方法を把握。
  • 面談や情報収集の為に休暇を取得。働き方を見直す。

?介護プロジェクトチームを作る

専門家と家族でどのように支えるか、役割を明確にして介護に臨みましょう。

【パーソナルな場】

  • 家族会議を行い介護態勢を整えます。
    家族はいつ誰が何を行えるのかを話し合い、キーパーソンを決め、その人を中心に介護プロジェクトチームを結成します。
  • 家族間の連絡方法を整えます。医療や福祉の専門家の力を上手に借りる意識を持ちましょう。

【職場】

  • 各家族の職場での介護支援制度を確認。
  • 職場に相談しながら、休暇、休業、短時間勤務、補助など、自分にとって必要な介護支援制度を明確にします。
  • 職場に介護の状況、両立する上での課題や希望、利用したい制度、業務やそれ以外で周囲に配慮してほしいことを伝えます。

②介護導入期

介護保険制度の活用の理解、要介護認定

介護保険制度の内容や活用方法を理解し、要介護認定を受けます。

【パーソナルな場】

  • 地域包括支援センターに相談する。
  • 地域包括支援センターでは、福祉や保健の専門家が相談にのってくれます。介護保険制度の活用方法やサービス内容に関する地域の有益な情報を電話や面談で得ることが可能です。
  • 介護保険制度の要介護認定を受ける。親の住所地がある市区町村の窓口、または地域包括支援センターに申請をしましょう。
  • 介護保険サービスを受けるためには、申請を行い要介護認定を受ける必要があります。

厚生労働省/全国の地域包括支援センターの一覧

ケアプラン作成

ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成します。

【パーソナルな場】

  • 在宅サービスを利用するためには、居宅介護支援事業所に所属しているケアマネジャーと契約しケアプランを作成します。
  • 要支援1、2の場合は、地域包括支援センターに相談し「介護予防ケアプラン」を作成します。
  • ケアマネジャーとは、良い人間関係を築くことがコツです。プロジェクトチームの要となる人なので慎重に決めます。訪問、通所、短期入所、地域密着サービス、施設サービス等さまざまなサービスを上手に選んで活用しましょう。
  • ケアプランについて相談する際には、家族の状態のみならず以下の3つの情報を伝えましょう。・介護が必要な人の状態:本人や家族が生活上困っていること、できるようになりたいこと
    ・働く人自身について:介護に対する考え方、介護経験の有無、介護を担える時間帯等
    健康状態や仕事の状況(内容、出社帰宅時間、困っていることなど)
    ・勤務先の両立支援制度:どのような制度があり利用を考えているか
    具体的な資料やメモを用意するなど、口頭以外の方法でも伝えることが大切です。

住環境を整える

住み慣れた自宅で生活が続けられるように、介護しやすいされやすい住環境を整えます。

【パーソナルな場】

  • 介護保険制度では、住環境を整えるために福祉用具貸与、特定福祉用具購入費支給、住宅改修費支給があり、総合的に検討します。
  • 相談先は担当のケアマネジャーや地域包括支援センター。病院や老人保健施設等の医師や看護師、理学療法士等に相談し、退院前家屋調査を受けることも可能です。

両立支援制度を知り、働き方を整える

ケアプランが作成され介護の方法や内容が定まると、職場で自分が利用したい両立支援制度や働き方をより描きやすくなります。

【職場】

  • 自分の状況に応じた介護休業や介護休暇、短時間勤務、在宅勤務等の活用を相談、検討。業務の効率化も図りましょう。
  • 休暇を活用し要介護認定の申請や地域での情報収集、ケアマネジャー選び、ケアプラン作成面談日などに立ち会います。
  • ケアマネジャーへの働き方の報告準備
  • 多くの情報や時間を必要とする導入期は最も混乱しがちですが、1人で抱え込まず相談をしながら、介護と仕事それぞれにできることを描きましょう。

③介護安定期

在宅介護の場合:在宅介護サービスの活用

ケアプラン(介護サービス計画書)に基づいて介護サービスの利用を開始します。専門家と家族とのチームで支え自分の役割も実行します。

【パーソナルな場】

  • ケアマネジャーは毎月1回以上各家庭を訪問し、ご利用者や介護者の状況を観察ヒアリングし、適切なケアプランとなっているかを確認します。
  • 家族のケアプランの内容を定期的に確認しましょう。問題が生じた場合はケアプランの見直し、変更をケアマネジャーに依頼することができます。
  • ケアマネジャーに不満がある、信頼できないなどの場合はケアマネジャーや居宅介護支援事業所を変更することができますが、疑問点や不明な点はまずはケアマネジャー本人に確認しましょう。
  • 緊急通報や見守りサービス、配食や家事援助など介護保険以外のさまざまなサービスの利用が可能です。親の意向を確認しながら情報収集に努めましょう。介護のある暮らしに楽しみが生まれ、支える側の心配や負担も軽減します。

施設介護の場合:施設サービスの活用

在宅介護が限界となった、同居ができないなど、実状にあわせ施設介護も視野にいれて検討します。

【パーソナルな場】

  • 高齢者向けの住宅や施設は、心身の状態や介護度、希望する暮らし方によって適する施設、住宅は異なります。
    特別養護老人ホーム/老人保健施設/有料老人ホーム/グループホーム/サービス付き高齢者向け住宅など。
    入居条件やサービスの違い、費用などを理解し、ニーズに沿って選びましょう。
    情報収集、相談、見学は必須です。
  • 担当ケアマネジャーや地域包括支援センター、民間の高齢者住宅紹介機関などで相談しましょう。

介護を乗り越えるために

介護は抱えこみ過ぎない心構えも大切です。

【パーソナルな場】

  • 介護安定期には、地域での介護カフェや介護者の会、介護や親支援セミナーなどに参加しましょう。学びや知識を得ることで介護力が増します。
  • 介護と仕事、それぞれ60%を目標にしましょう。ささやかであっても自分にとって心地良い時間をこまめにとり、自分自身も大切にしましょう。

両立支援制度を利用し、働く

導入期で構築した両立体制により仕事と介護の両立を図る時期です。

【職場】

  • 業務の見える化、効率化を心掛け、介護の状況が変化した際には働き方を見直しましょう。例)始業・終業時刻の繰り上げ繰り下げと1日単位の介護休暇選択など
  • 注意するのは介護しすぎないこと、「仕事と介護の両立」にむけた働き方をマネジメントします。長期の休暇取得の前に、柔軟な働き方の選択が望まれます。
  • 企業が提供する相談やセミナー、ワークショップ、座談会などにも積極的に参加しましょう。
  • 職場での健康診断も継続し、栄養、休養、ストレス発散など心身の健康管理を心がけましょう。

 

④終末期、看取り期

別れの時間を悔いなくむかえる

介護は終わりが見えませんが、お別れの時間は必ず訪れます。人生の終末期には、歩けない、飲み込めない、誤嚥し肺炎を起こすなどにより、点滴や胃ろう、吸引などの医療行為が必要となる場合があります。本人、家族にとって緊張感が高まる時期です。医師や看護師など医療職を頼りにすることも増えるでしょう。想いを伝える大切な時間でもあります。

最期はどこで迎えたいのか

延命処置など終末期対応はどこまで行うのか、

住まい、相続への対応は?など

【パーソナルな場】

  • 最期まで被介護者の尊厳を保ちながら、プロジェクトチームで支えましょう。
  • 在宅医療や訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の導入など、ケアマネジャーに相談しながらケアプランを見直します。
  • 安定期に得た知識や情報、プロジェクトチームの力やさまざまなネットワークを活用し、専門家に相談しながら落ち着いて進めましょう

【職場】

  • 緊急時の連絡体制を今一度整えておきましょう。
  • この時期に分割した介護休業を取得することも可能です。
  • 両立を支援してくれる職場には、介護の状況変化についての報告や感謝を伝えましょう。

 

ここまで、4つの時期に分けて、パーソナルな場と職場のそれぞれで行うことを見てきました。たとえ介護安定期に入っても、入院や家族の体調不良、家族関係の変化等様々な場面に遭遇します。認知症の進行、介護の重度化、長期化によりネグレクト(介護放棄)や虐待という状態に陥り、要介護者が死に至るケースもあります。働く人はどの時期も、職場、地域のサポートを上手に活用し、困ったことは声にあげ、柔軟な気持ちで仕事と介護の充実を目指しましょう。周囲はそれを支えましょう。皆様の素晴らしいワーク・ライフ・バランスを応援しています。

 

注)本コラムでは皆様にわかりやすくご紹介するために、被介護者の経過を中心に時期別にてご説明しましたが、病気ではなく加齢による衰弱により介護が必要となる場合もあります。必ずしも医療期を経て介護期に移行するとは限りません。また、人生の最期の時間、医療の必要性も一人ひとり異なります。そのことを念頭に置きお読みください。

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