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介護と仕事の両立、介護離職防止のために企業がすべきこと

コラム

介護と仕事の両立、介護離職防止のために企業がすべきこと

ワークケアバランス株式会社 代表取締役 田中 肇
平成29年度取材

なぜ介護離職は起こるのか?

  • 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2004年)によると、主な介護の担い手は、配偶者が24.7%、同居の子の配偶者が20.3%、同居の子が18.8%、別居家族が8.7%と、「同居している家族」が介護を行っているケースが多くなっている。

  • 介護サービス事業者など、家族以外の手も借りる場合、お金がかかります。公的な特別養護老人ホームや老人保健施設などを利用した場合は入居金がなく、月額費用も安くすみます。ただし、その施設も満床の状態が続いており、入居するのは困難になっています。

 

  • 一方で、民間施設は公的な施設に比べて多額の入居費や月額費用がかかります。有料老人ホームのうち、介護付のものは増えておらず、一方でサービス付高齢者住宅が増えている傾向にあります。しかし、サービス付高齢者住宅は、建物内に介護士や看護師等が常駐してないないケースが多く、要介護度が重い人や認知症を患っている人の受け皿としては適していません。
  • 一般的には、親が要介護状態になると、家族はデイサービスの利用から始める場合が多いです。その場合、デイサービスは10時~17時頃までが多いためフルタイムで働く多くの人が、朝と夕方の1~2時間は介護が必要な家族を1人にしている状態に陥っています。加えて介護保険の月額利用限度額内で、介護者の出勤日すべてをデイサービスで賄うことはできません。デイサービスに行けない日の家族の介護問題も発生します。
  • このような状態では、介護に対して不安を抱えてしまう一方で、仕事が終わっても帰ってからは介護が続くため、期間が長くなるほど体力的にもきつくなってきます。介護は1年なのか、3年なのか、いつまで続くのかがわからない状態であることからも、介護離職に追い込まれてしまうケースが見られます。

介護休業を取得する人が少ないワケ

  • それならば、法律で定められた権利である介護休業や介護休暇を取得すれば良いかというと、実際には大手企業であってもその利用者は、まだまだ少ないと言われています。その背景にあるのが、重要なポジションからはずされてしまわないか、多忙な部署にいるため介護のために休ませてほしいと言いにくい、介護経験者が少なくそのたいへんさを理解してもらえないなど、さまざまな理由があります。
  • 介護が始まると、家族にとっても時間だけでなく、金銭的にも負担がかかることがあるため、今の仕事を失ってしまうと困るといった精神的な不安を抱えている人も多くみられます。
  • 現状において、育児休業を取得する人達は大手企業のみならず、中小企業でも増えてきましたが、介護休業や介護休暇の取得に対しては、まだまだ消極的と言えます。

介護との両立のために、個人ができること

  • 介護にはお金と時間がかかります。まずは、家族の介護が必要な時期になってきたら、会社と自宅の距離をもっと近くできないのか、という検討をしてみることも大切です。持ち家の場合は難しいでしょうが、賃貸の場合なら、会社の近くへの引越、または自宅の近くの営業所などへの異動を願いでるなど、会社と家を近くすることで、時間的な余裕も生まれ、介護とのバランスがとりやすくなります。
  • 周囲に働きかけることも、介護との両立に効果があります。介護をしていることをオープンにするのは勇気がいることですが、上司や同僚に話すことで、理解を得られることも多くあります。職場環境を変える大きなきっかけになる場合もありますので、まずは上司に相談したり、直接の窓口があれば申し出ることで、必要な手続き、制度などについて詳しい情報が得られ、介護休暇の取得もしやすくなるのではないでしょうか。オープンにすることで、介護の進行によっては、より働きやすい勤務体制を整えてもらえる可能性もあります。
  • 介護休暇を申し出て、不当な対応をされてしまった場合には、会社にかけあうのはもちろん、労働監督省に相談することもできます。ただし、その前に会社と十分に話し合い、無理のない介護体制を整えられないかどうか、よく検討することも大切です。
  • 介護離職してしまうと、家族でみるため安い費用で済むように思えますが、実際には最低の介護費用と得られるはずだった収入がなくなるため、大きな損失となります。家族や会社と話し合いなんとか介護離職をしないですむ方法を考え、平均介護年数5年弱とされる期間を乗り越えていけるようにしたいものです。

介護との両立のために、企業ができること

  • 会社の経営体力によって実際のところ、介護のサポート体制には大きな差があります。けれど、高齢化社会になってくると、若い現役世代は減り、介護の問題を抱える人が増えてきます。その時に会社としても慌てないよう、まだまだ介護している社員が少ないうちに、対策をとっておくことが重要です。
  • 介護に対し会社として、どんなサポート体制があるのか、また行政にはどんなサービスがあるのかを全社員に対して情報を提供しましょう。社員一人ひとりが介護について知識をもつことで、「お互いを支えあえる職場」をつくることができ、離職率の低下や介護に関するハラスメント防止につながります。
  • さらに、介護をサポートする上で大切なのが「情報」「人」「お金」。情報とは、家族が介護に陥った時にどんな手順で介護サポートを受けたらいいのか、どこに相談したらいいのかといったことです。人とは、介護する家族はもちろん、働いている会社の同僚や介護サポートを行うプロなど。けっして一人で抱え込まず、多くの人の手を借りて介護をしていけることを伝え、離職やハラスメント防止につなげましょう。お金とは、介護が必要な家族の財産や不動産などを活用して介護をプロに委ねること。介護と仕事の両立のためには、自宅介護中心にならない準備を始めることの大切さを早い段階で社員に伝えていく必要があります。
  • まだ介護が必要でない社員に対しても、全社をあげて、介護と仕事の両立について考える機会や情報の提供を行うことで、ライフステージの変化に強い働き方の構築ができるはずです。
  • 具体的な両立支援のための制度を作るとすれば、介護休暇を1日や半日単位ではなく、1時間単位でとることができたり、消化しきれなかった有給休暇を貯めておいて、必要な時に有給の介護休暇として使えるようにしたりと、取得しやすい形に変化させていくことも重要です。
  • 中小企業で、法定以上の支援を制度化するまでに至っていない場合は、個別に相談にのって対応したり、サポートできないか、その度に話し合って対処することも有効です。そのためには、普段から介護についてもオープンにできる人間関係や環境を整えておく必要があります。
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