ページの先頭

ページ内移動用のリンク

ヘッダーメニューへ移動

グローバルナビゲーションへ移動

本文へ移動

フッターメニューへ移動

事例6:コーデンシTK株式会社

介護奨励金を活用した取組によって、従業員の離職を防ぐことができた

コーデンシTK株式会社

平成28年度取材

1.企業概要

  • 創立:1972年
  • 所在地:東京都渋谷区南平台町3-1 コーデンシTK渋谷ビル
  • 従業員数:35名
  • 事業内容:半導体の製造販売、電子応用機器の開発

2.取組の背景

  • 以前より従業員の離職を防ぐため、仕事と育児との両立支援を行っていました。仕事と介護の両立については、育児に比べて優先度が低かったのですが、2015年に、東京都中小企業ワークライフバランス推進助成金(介護奨励金)(※1)があると知り、従業員の介護の実態を把握したことがなかったこともあり、申請することにしました。

3.取組内容

①実態把握
  • まずは支社長、営業担当役員を含むメンバーの検討委員会を立ち上げ、厚生労働省の雛形「実態把握調査票」(※2)を参考に自社に合うよう改編して、2015年9月頃、介護経験の有無や、不安度等をたずねるアンケートを実施しました。
  • 当時、介護休業中の従業員が1名いたものの、他の従業員については介護の可能性はないだろうという気持ちでいました。
  • アンケートの集計結果のうち、今現在、介護に関わっているという回答は、ほとんどありませんでしたが、将来発生しうる介護に「不安がある」と回答した従業員が5割弱おり、予想よりも多かったことに驚きました。
②制度の設計・見直し
  • 現在の自社の介護休業・休暇等の内容について改めて就業規則を確認したところ、概ね法定通りとなっていました。
  • そのほか、従業員の不安を解消するために、社内の担当者が相談員として対応する、相談窓口を社内に設置することにしました。
③事前の情報提供
  • アンケート後に社内研修会を開催しました。従業員の大半が集まる朝礼の場で、両立のための3つの要点を記した厚生労働省「仕事と介護の両立準備ガイド」(※3)を参考にしたリーフレットを配布し、社内研修会を実施することを周知しました。
  • 研修会は、従業員の4分の3以上が出席し、厚生労働省のセミナーテキスト(社内研修用:「仕事と介護の両立セミナー」テキスト)(※4)を活用して実施しました。介護に直面しても社内の介護休業等の制度を活用しながら工夫して仕事を継続できること、介護について相談できる窓口が社内外にあることなどを周知しました。
  • 社内の制度については、イントラネット上に掲載をしており、改訂があった場合には周知も行っています。
  • そのほか、取組の参考とするために参加した2015年10月の東京都主催のシンポジウムでの内容は非常にインパクトが大きく、担当者として、それまでの介護両立支援に関する認識がガラリと変わるきっかけとなりました。介護は誰にでも直面する可能性があること、準備できるということが印象に残り、またあらためて、事前の情報提供の重要性にも気づいたため、社内にも情報を共有しました。
④介護に直面した従業員への利用支援
  • 社内研修会で、従業員の介護に関する理解が進んでいたため、復職後も受け入れる雰囲気ができており、周囲が進んでフォローできる体制が整っていたことがよかったです。
  • また、急な休みなどの際には周囲がフォローをする必要もありますが、周囲ができるだけ不公平感を抱かないよう、本人の承諾を得た上で朝礼で説明を行いました。
  • 介護休業復帰後も短時間勤務をしていますが、業務量はフルタイムと同様です。短い時間内で業務を完結できるよう、本人が積極的に工夫を行っています。同様の業務を行う従業員同士でノウハウを共有したり、何かあれば事前に情報共有するように心がけてくれているため、先回りの対応ができます。そのような仕事の進め方についても、アドバイスするようにしています。
  • 介護休業中の業務は、周囲の従業員で業務分担することで乗り切りました。業務フローを明確にしたことから、業務が見える化でき、事前に業務負荷のかかる時期や業務量を知らせることで、各自の業務と上手に組み合わせることができました。また、予め失敗しやすい箇所についても共有できたため、残業も増やさずミスなく業務をすることが可能となりました。短期間の対応であり、皆の協力する気持ちが大きかったため、モチベーション高く取り組むことができたのだと思います。
  • 子どもの介護でも介護休業を取得できるので、休業しながら体制を整えることをアドバイスし、地域の介護サービスを提供する相談窓口を案内しました。
  • 育児休業復帰後は短時間勤務をしていましたが、子どもが要介護状態となったため、介護休業を取得した従業員がいます。相談を受けた時には社内での制度の周知や相談窓口の開設等、取組の準備を進めていたところでしたので、速やかに対応することができました。対応が遅れていれば、従業員が離職してしまうケースも充分に考えられたと思います。
⑤働き方改革
  • 今後、介護に直面する従業員が出てきた場合にもさらに対応しやすいよう、働き方改革を進めています。
  • 営業部門から、業務改善や長時間労働抑制に関する要望が挙がり、2年程前に有志メンバーによるプロジェクトチームの立ち上げをしました。プロジェクトチームでは、改善のためのアンケートを実施し、営業を行う上での顧客へのヒアリング事項等の書式の定型化や、フローの見直し、会議時間の短縮、親会社・関連会社との連携方法についてなど、様々な改善に取り組んできました。
  • また、クローズにされがちであった各人の業務の内容を、グループメールの活用による進捗の共有や、マニュアル化といった“業務の見える化“を進めることによって、より情報共有しやすい風土を醸成できたと考えています。
  • 様々な取組の結果、労働時間は減少傾向にあります。給与には40時間相当の固定残業代が含まれていますが、実際に40時間を超えるケースはほとんどなく、さらに、トップからも、残業時間を最大でも20時間、できるだけゼロに、という目標も掲げられました。また、業績にマイナスの影響はなく、新たなアイデアや提案に前向きな従業員が増えたように感じます。
  • 世の中での「働き方改革」の後押しもあり、従業員は皆、“早く帰れる時には帰る”という意識を持ち、お互いが気持ちよく送り出せる環境があります。

4.これまでの効果と今後の課題

  • 従業員の介護による離職、大切な人材の流出を防ぐことができたこと、また、その従業員が制度利用をしていることで、周囲の「介護両立」に対しての意識も高まっているように感じます。そして担当者としても、突然対応が必要になった際にも冷静に対応にあたることができる、という自信が持てるようになりました。
  • 介護中の従業員からは、休業について相談をした際に、“仕事の継続”という展望が開けたことで、落ち着いて今後のことを考えられるようになったとの声が得られました。
  • 他の従業員からも、社内研修会の実施や窓口の設置がされたことで、介護について不安があったが社内制度を活用により両立できること、介護に直面する前から相談できる窓口があることを初めて知った、介護に備えておきたい、といった意見を得ることができました。取組の効果が感じられた反面、これまで従業員のニーズが拾いきれていなかったことに対して反省をしました。
  • 特に中小企業の場合、情報収集にかけられる時間や取組に対する予算が限られていることが多いと思いますが、今回利用した奨励金制度のように、取組のステップが分かることで、できる範囲で少しずつ取り組んでいくことができ、大きな効果が得られるものもあります。取組を行う上で分からないことがあった場合も、都の担当者に相談することが出来ました。また、国や自治体のバックアップがあることで、社内の理解が得やすく、取り組みやすい、というメリットもあります。
  • これまで社内における情報提供の方法としては、イントラネット上などでの資料掲載や周知がほとんどでしたが、今後は従業員に直接案内ができる説明会などの機会を増やしたいと思います。
  • 現在、子どもの介護を担っている従業員は、子どもを預けることができる環境がもしなければ、短時間勤務を継続していかなければならなくなるかと思います。また、営業職で介護を担う従業員が出た場合に備えて、2~3人のチーム制で対応していくなど、様々なケースを想定して対策を考えていきたいと思います。
  • 介護のみに限らず、勤務時間や業務に制限のある従業員が増えた場合に、本人の希望を尊重しつつ、イレギュラーな対応が発生した場合などにも、周囲の理解が得られ、不公平感を感じさせない職場の風土づくりを引き続き進めていきます。

※1 平成28年度は、「東京都中小企業雇用環境整備推進奨励金」に変わりました。

※2~4 厚生労働省ホームページよりダウンロードできます。

ここからフッターメニューです