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事例5:株式会社白川プロ

積立有給制度や事前の情報提供で、従業員の就業継続をサポート

株式会社白川プロ

平成28年度取材

1.企業概要

  • 創立:1962年
  • 所在地:東京都渋谷区宇田川町36-2 ノア渋谷801・804
  • 従業員数:287名
  • 事業内容:ニュースやドキュメンタリー番組の映像編集、音響効果

2.取組の背景

  • 当社はほとんどの従業員が映像制作等を担う専門職であり、1人前になるまで10年以上かかるため、以前より離職を防ぎたいという思いがありました。
  • 従業員の平均年齢が30代半ばと比較的若く、女性が多かったこともあり、以前より、仕事と育児の両立支援には取り組んできました(シフト勤務の調整による柔軟な対応、小学校高学年までの短時間勤務など)。
  • 2013年より、“従業員が楽しく働ける職場”を目指し、検討を行った結果、まずはメンタルヘルス対策、次に仕事と介護の両立支援を行うことになりました。
  • 当時は、比較的若い従業員が多いため、「介護はまだまだ」という認識で、介護についての関心はあまり高くはありませんでした。しかし、近年、社会的に介護を理由とする離職者が増加していると聞き、今後、従業員が介護に直面したとしても、現時点で対応できることが少ないこと、従業員の離職によるリスクは大きいこと、従業員の年齢構成(特に幹部)を考えると、当社においても決して他人事ではないということに気づき、2015年に東京都の中小企業ワークライフバランス推進助成金(介護奨励金)を申請したことをきっかけに取組を開始しました。

3.取組内容

①実態把握
  • 2015年の秋頃、プロジェクトチームを立ち上げ、検討を開始しました。各部署の上長からの情報収集なども行いましたが、具体的な状況や課題の特定には至らず、厚生労働省「仕事と介護の両立支援事業」の雛形「実態把握調査票」※1を利用し、従業員アンケートを実施することになりました。
  • アンケートでは9割近くの従業員からの回答が得られました。介護経験のある従業員が1割強いること、現在介護中の従業員も数名いること、また、「5年以内に家族・親族の介護が発生する可能性がある」という回答が半数以上にものぼることがわかり、改めて取組の必要性を感じることとなりました。
②制度の設計・見直し
  • 社会保険労務士の方からアドバイスをいただきながら、年次有給休暇の未消化分を30日分まで介護休暇に積立できる制度を新設し、就業規則の改訂を行いました。これは、有給休暇を消化する前でも、介護を理由とする場合であればいつでも利用できます。
  • 年次有給休暇は半日単位での取得を可能としています。
  • 従業員の介護の実態は個々で異なるため、有給休暇の積立や短時間勤務の他にも、実際の状況に応じて、シフトの調整や時差出勤等できるだけ柔軟に対応するようしています。
③事前の情報提供
  • 従業員に対しては、今後、会社として仕事と介護の両立支援を行う旨を、アンケート実施前に、取組を行う理由と取組内容とともに、社長名の文書で発表しました。トップの積極的な関わりのもとに各取組を実施しています。
  • 総務部で給与や福利厚生を担当している者を介護相談員として任命し、「介護相談窓口」を設置した旨も案内を行いました。
  • 2016年は2回、セミナーを開催しました。参加者は概ね40代以上の希望者が延べ20名程度で、仕事と介護を両立するための心構えや社内制度に関する情報提供を行いました。2017年も昨年とは少し内容を変えるなどして2回実施し、参加者は延べ20名弱でした。
  • 社内の制度や両立のための事前の心構え、地域の支援体制の概要など、両立を行う上でのポイントを記載した簡易なガイドブックを作成し、40歳以上の従業員に配布しました(40歳以下の従業員にも希望により配布)。社内セミナーのテキストとしても活用しており、以降、従業員が40歳を迎える月に給与明細と一緒に渡しています。このガイドブックは読み込んで勉強してもらうというよりは、まず会社に支援体制があるという認識を持ってもらうためのツールとして位置づけています。
  • ただし、当社は従業員のほとんどが本社とは離れた放送局で24時間体制で業務を行っているため、セミナーには従業員のうち一部の参加者のみとなることから、各情報の周知は、グループウェアやイントラネットの活用、各上長からの直接の伝達などによって密に行い、補っています。
④介護に直面した従業員への利用支援
  • 「介護相談窓口」は、実際に介護に直面して困っていることだけに限らず、介護に直面する前の疑問や不安など、些細なことにも対応するものとしています。休暇などの自社制度や、介護に関する具体的な相談ができる地域包括支援センターの窓口等を案内しています。元々、困ったことがあれば、所属の上長へ気軽に相談できる環境はありましたが、現在までに窓口を利用した従業員も数名おり、上長と相談員のどちらにも相談できる体制を整えられていると思います。
  • 現在、介護のために短時間勤務制度を利用している従業員がいます。当従業員も相談窓口を利用し、当初は介護休業の取得を考えていたため、分割取得や取得のタイミングについてアドバイスをしました(※2)。結果として、本人の状況や希望を踏まえ、人事労務担当役員も含めた経営層での検討の結果、夜間放送のチームから、メンバーが多くシフトの調節も比較的しやすい日中放送のチームへ異動することで、所属部署とも調整を行いました。また、短時間勤務や年次有給休暇の併用により、休業を取得せずに介護や育児と仕事との両立が可能になりました。
  • この他、積立有給休暇制度を利用することで、介護を行っている従業員や、実家が遠方にあり、介護休業を分割取得した後、フルタイムで復帰した従業員がおり、いずれも離職することなく継続勤務し、活躍してくれています。
⑤働き方改革
  • 介護以外にも、男性で育児休業を取得した従業員もいます。休業などの希望も伝えやすく受け入れやすい雰囲気が職場にはあると思います。
  • 介護休業や休暇など、シフトの中で長期の欠員が出た際には、基本的にはチーム内で補い、人員の調整が難しい場合は他部署等へ、ヘルプの要請をして対応しています。基本的には介護に関する休業や休暇は、事前に分かっていることがほとんどですし、ほとんどの従業員が映像編集という特殊な業務の中でも、それぞれが高い能力を磨くことでお互いの業務のフォローが可能であること、日頃からシフトの人員は多めに設定していることから、シフトの融通がしやすいということがあると思います。突発的な休みについても、チーム内で補うことで対応しています。
  • 従業員の何らかの制約により、その穴埋めが発生する際、少なからず周囲の負担は増えることになりますが、常に“お互いさま”という意識を持てるよう、上長への理解促進や各人の事情を可能な範囲でオープンにするなど、周囲が不公平を抱かないように気をつけています。
  • お客様の要望によって、自社だけで解決できないこともあり、数年前、今よりも長時間労働の傾向にあった時期もありました。発注元であるお客様の理解を得られるよう協力依頼をするなど、近年の情勢も手伝って、超過勤務は減少傾向にあります。

4.これまでの効果と今後の課題

  • ここ数年間で、従業員の会社の取組方針に対する認知度は深まったと感じています。介護については、今現在、関心がなくとも、いずれは関わる可能性が出てくることなので、“転ばぬ先の杖”としての情報提供を続けていく予定です。
  • 会社が仕事と介護の両立支援の方針を示したことで、介護に直面する前の従業員から、今後介護を担うことになっても、制度をうまく利用して両立して仕事を続けていきたい、という声がありました。
  • 今後さらに、職場の一体感を醸成し、お互いさまの風土を広げていくために、部門を超えた異動などによって、さらなる横の連携や職場全体のコミュニケーション強化に取り組んでいきたいと考えています。また、これまでは介護の取組もトップダウンで進めることが多かったのですが、今後は従業員からの声や希望をくみ上げる仕組みや機会を増やしていければと思っています。

※1 厚生労働省ホームページよりダウンロードできます。

※2 2017年1月より、育児・介護休業法の改正により、介護休業の分割取得が可能となりました。
育児・介護休業法の概要

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