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事例9:株式会社はなまる

介護離職しないための情報と心構えをセミナーで周知

株式会社はなまる

平成30年度取材

1.企業概要

創業:2001年
所在地:東京都中央区日本橋箱崎町36-2 Daiwaリバーゲート
従業員数:489人
事業内容等:日本国内におけるセルフ式讃岐うどん等のファストフード店経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等

2.取組の背景

 創業は2001年、2012年に株式会社吉野家ホールディングのグループ会社となりました。2018年末の店舗数は国内外合わせて約500店舗で、中国、マレーシアにも事業展開しています。スタッフの平均年齢は30歳後半、女性社員の割合が多いこともあり、女性の活躍推進に関する取組に力を入れてきた企業風土があります。採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースに関する実績で3段階目のえるぼし認定を受けています。
 2009年に女性の活躍推進の母体となる、女性社員全員をメンバーとする「はなまるレディスプロジェクト」を立ち上げ、店舗で女性が働きやすい職場環境づくりを目指し女性目線で考える活動を行ってきました。トップがプロジェクト責任者でコアメンバーは10人ほどです。結婚、妊娠、出産、子育て世代の女性社員が多いことから子育て支援の社内制度づくりに力を入れてきました。家族の介護を経験した社員から「介護」がテーマとして提案されましが、当初は採用されませんでした。社会的に介護離職が注目され、そのことも後押しの要因となり、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の目標との一つとして、介護者(以下、ケアラー)支援への情報提供と周知活動を行うことが決まりました。

3.取組内容

 実態把握
 社内アンケートを通し、社員の介護状況とニーズの把握を行いました。

●従業員の介護に関する状況把握
 介護についての状況や社員の意識を知るために社内アンケートを実施。その結果、回答者の2割が介護経験者とその予備軍ということがわかり、「セミナー、勉強会を実施したら参加しますか」との質問に、半数以上が参加したいと回答するなど、ニーズがあることがわかりました。

② 制度の設計・見直し
 女性活躍推進法の行動計画に基づき、当初は子育て支援、その後ケアラー支援のプロジェクト体制を整え介護経験者の声を取り入れながら取組を行ってきました。

●女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
 社員全員が働きやすい環境で、その能力を十分に発揮できるようにするために下記のような行動計画を策定しています。計画期間は平成29年3月1日から平成32年2月28日までの3年間です。
 目標1のワークライフバランスの浸透では、妊娠中や出産後の女性労働者の健康の確保に関する相談体制の整備、育児の俯瞰や精神的ストレスを解消するために相談窓口を開設、また、出産後の職場への復帰をしやすくする。さらに、ケアラーへの支援として情報の提供と周知活動を行っています。
 そのための対策として、平成29年3月に「女性の活躍を促進するというトップの宣言」と共にLWB推進室を設置し、ライフを意識するためのLWBとすることと同時に、従前より実施していた産休から育休、ケアラー支援をプロジェクト化し活動を促進しています。
目標2として、女性管理職比率を30%以上にすることを掲げました。
 対策としては目標1と同時進行で女性管理職比率を30%まで引き上げるために、トップ、営業責任者(執行役員)と女性管理職候補を選定し、育成、人員配置について協議が進められています。平成31年3月現在、18人の女性管理職が誕生しています。
 さらに、多様な働き方に対応できる制度の検討を開始し、残業時間を抑制するための活動を各部の長と話し合いながら促進しています。併せてLWB定例会にて各プロジェクト報告を行い、進捗管理を行っています。

●プロジェクトのテーマに介護を提案
 数年前からワークライフバランスや働き方改革が社会的に大きな注目を集めるようになり、女性社員のみのレディスプロジェクトにも男性が参加し、自由に意見交換が行える環境になりました。月に1回限られたメンバーによる定例会があり、半期に1回はメンバー全員で定例会を開催しています。定例会の場には新しいテーマを提案することができます。当初、ケアラー支援のテーマについては社員の実感が薄かったため、採用に至るまでに時間を要しました。ケアラー支援がプロジェクトの1つに認定され、3人体制でプロジェクトがスタート。最初の取組として情報提供と周知活動を考えました。

●介護経験者を集めて「ケアバル」
 同様の境遇にある介護者、介護経験者が集まり、その苦労や悩みを話し合う「ケアカフェ」という取組がありますが、当社では退社後にお酒を飲みながらおしゃべりをする「ケアバル」を企画、開催して、社員の介護の苦労や悩みを聞き、ケアラー支援プロジェクトに反映しています。

③ 介護に直面した従業員への利用支援
 介護と仕事の両立の心構えや体験内容、ケアラー支援の大切さについて、外部講師を招きセミナーを重ねることにより、周知、浸透を図ってきました。

●対象別にセミナー内容を変え開催
 「介護」と言っても、要介護の状態、介護の内容、介護技術や知識、個々の介護従事者の事情により多岐に渡り、捉え方は様々です。本プロジェクトはあくまでもケアラーを支援するためのセミナーであることを明確にして実施しています。まず管理者を対象に、外部講師を招き講義とディスカッションで構成するワークショップ型のセミナーを開催しました。それ以降は、介護の当事者でなくても興味を持ちやすく、理解しやすい内容とし、介護と仕事の両立は大事であるという思いを伝えられるセミナー内容を心がけてきました。
管理職を対象にした第1回セミナーには25名が参加し、その9割が良かったという好反応でした。「介護について理解していなかった」、「介護への恐怖はあったが、介護についての知識を得たことで、介護への具体的なイメージが持てるようになり恐怖が和らいだ」というコメントをセミナー後のアンケートで得ることができました。
 介護と仕事の両立を支援する取組への周知と理解促進は難しいことです。セミナー開催の回数を重ねることで介護への理解が徐々に深まっています。第2回セミナーを同年に実施し、翌年は東西の営業部の中間管理職を対象に、その翌年は社長、役員、部長以上のクラス向けに開催しました。社長、役員、部長以上のクラスへのセミナーは講演型で行い、介護をより現実味をもって知ってもらうためにテーマを「介護に係る費用」としました。セミナー終了後のアンケートには、「介護費用はこんなにかかるのか」、「介護費用はこれだけですむのか」等、異なった回答もありましたが、介護実態の一面を知ってもらう良い機会となりました。講演では介護費用は要介護者の年金額によって異なり、要介護者の年金で全額賄える場合と、介護者が一部負担をしなければならない場合があるという内容を伝えました。

④ 働き方改革
 女性の活躍を推進するというトップの宣言と共に、ライフワークバランス推進室を設置しました。妊娠中や出産後の女性社員の健康の確保に関する相談体制、育児の不安や精神的ストレスを解消するための相談窓口の開設、出産後の職場へのスムーズな復帰等への取組をワークライフバランス推進室が主体となり段階的に進めています。
また女性管理職比率を高める人事異動を行うことで働き方改革が促進されています。さらに、直近の3事業年度では、派遣労働者の通常労働者への転換や、おおむね30歳以上の女性を中途採用するなど多様なキャリアコースが整いつつあります。
 併せて、多様な働き方に対応できる制度の検討をはじめ、残業時間を抑制するための活動を各部の長と話し合いながら進めています。

4.これまでの効果と今後の課題

 介護と仕事の両立支援はこれまで地味な活動の積み上げで進められてきました。社員の平均年齢が若く、若い社員にとってはまだ介護の実感が持ちづらいため、将来に備えた取組として介護について周知を行っていきたいと思います。受講していない社員を対象とするセミナーを積極的に開催してゆきます。
 これまでは人事採用部の仕事としてケアラー支援を行ってきましたが、行動計画で位置づけられたことで取組が社内で明確になりその責任も大きくなりつつあります。一方でこれまでケアラー支援を行ってきたにも関わらず、残念なことに介護を理由とした離職者はまだ存在しています。日本全国の各エリアにサポーターを配置しチームで情報交換しながら、その人たちが介護離職せざるを得ない理由を聞き、離職を防ぎ、今後のケアラー支援に反映させていきたいと思っています。
 セミナーの実施は外部講師に頼らず内省化を目指し、人事採用部で実施できるようにしていく方針です。当社は日本全国で事業展開しています、介護の状況も都市部と地方では異なります。本社から各エリアに出向きセミナーを開催するような体制を整備してゆきます。
 ケアラーを取り巻く環境は家族の状況により異なり、多様な支援が求められます。ケアラーが一番必要としていることは何か、求めていることは何かを見極め、ケアラーにとって理想的な仕組みをつくることを目指していきます。

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