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「産後パパ育休」や「分割取得」を活用して、夫婦で育児休業を上手に利用しよう!

コラム

「産後パパ育休」や「分割取得」を活用して、夫婦で育児休業を上手に利用しよう!

NPO法人ファザーリング・ジャパン/子育てアドバイザー
キャリアコンサルタント 高祖常子

■男性の育業取得率は17.13%にとどまっている

男性の育業取得率は17.13%(2022年度厚生労働省雇用均等基本調査)。男性の育業取得率は少しずつ増えてはいますが、女性の育業取得率は8割ですから、まだ小さな伸びにとどまっています。政府は2025年度に50%、2030年度に85%に引き上げると目標を掲げていますが、まだまだ達成のめどはついていないというのが実情でしょう。

育業100%を掲げている大企業もありますが、取得日数の少ない企業も目立つようです。もちろん今まで育業取得していない男性への取得推進を進めるにあたって「男性育業100%」と掲げることはわかりやすい1つの施策であると思いますが、数日しか取得しないのであればそもそも育業の意味をなしていないとも言えるでしょう。このため最近では「取るだけ育業」という言葉も聞かれるようになってきました。

男性の育業取得はなぜ必要なのでしょうか。出産後の女性は、ホルモンバランスも崩れ、身体の回復も必要で、交通事故レベルの全治2カ月程度のダメージを受けているとも言われています。さらに赤ちゃんを迎えてからの家族の生活は、夫婦2人時代とは大きく変わります。赤ちゃんを迎えた最初の時期を夫婦共に過ごし、育児・家事の生活サイクルを作っていくことがとても大切です。

共働き家庭も増えていますから、妊娠・出産を経て女性が働き続けるためにも、男性の育業取得は欠かせないこととなってきています。

■2022年4月から3段階で育児介護休業法が改正

ユニセフ(国連児童基金)は2021年に発表した報告書で、日本の育業制度を「世界1位」と評価しています。それでも、男性の育業取得率が増えないため、2022年から2023年にかけて、国は以下の施策を3つの時期に分けてスタートしています。

2022年4月1日施行:①個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置の義務化、②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2022年10月1日施行:③出生時育児休業(通称「産後パパ育休」)の創設、④育児休業の分割取得
2023年4月1日施行:⑤育児休業取得状況の公表の義務化
※育児・介護休業法(令和3年(2021年)改正内容の解説)」(厚生労働省) より
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000909605.pdf

NPO法人ファザーリング・ジャパンでは何度かアンケートを取っていますが、2023年調査でもパパの育業取得を進めるには「上司が育業いつ取る?と聞いてくれる」という回答が一番でした。まだまだ男性の育業取得率が少ないために企業での前例がなく、パパが自分から「育業取得したい」と申し出ることにハードルを感じているケースも少なくありません。

妊娠がわかった時点で、上司や人事担当などから育業の説明をしたうえで「育業はいつ取る予定ですか?」とぜひ、問いかけていただけたらと思います。育業は無理に取らせるものではなく、パパも育業を取得する権利を持っているということです。育業取得を考えている場合は、ためらわずぜひ会社に取得の意思を伝えましょう。

2022年4月改正の「個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置の義務化」が進むことは、男性の育業取得推進にも、大きな好影響を与えるものと思われます。

■2022年10月から産後パパ育休がスタート

今まで育業というのは基本的に、「約1年間の間に、長くても短くてもまとめて1回だけ取得できる」というものでした。このため、「まとめて育業を取るのは難しい」、特に「産後すぐのタイミングには仕事から長期間離れるわけにもいかないので取りにくい」というケースもあったため、産後すぐのタイミングにも男性が育業を取りやすくするために考えられた制度です。

産後パパ育休は今までの育業と組み合わせて取ることができる制度ですから、「産後すぐからまとまった期間の育業を取得しよう」と思っている場合には、育業だけを利用すればいいということになります。

「育児・介護休業法(令和3年(2021年)改正内容の解説)」(厚生労働省)の以下の表が分かりやすいと思いますが、産後8週までの間に4週間まで、分割して2回取得することが可能な制度です。逆に言えば、産後パパ育休の取得中に4週間働くことが可能なので、業務の都合に合わせて取得することができます。

また、2022年10月から通常の育業も分割取得できるようになりましたから、夫婦の都合やそれぞれの家族の事情に合わせた取得方法が可能になったということです。

グラフ

※「育児・介護休業法(令和3年(2021年)改正内容の解説)」(厚生労働省)より  https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/index.htm

■育業取得の相談や引継ぎ

会社や上司への育業相談は、妊娠の報告をしたのち、早めに相談しましょう。特にパパは、自分から伝えないとママが妊娠したことや、育業を取得したいという希望があること、家族の状況などが会社に伝わりません。安定期に入ったタイミングで伝えるパパが多いようですが、仕事の内容や状況によってもう少し早めに伝えた方がいいケースもあるでしょう。

育児・介護休業法では、育業は原則開始日の1カ月前、産後パパ育休は原則休業の2週間前までに申し出ることとなっています。ただし引継ぎや仕事の状況などもあり、また育業取得には同僚の理解も大切ですから、早めに相談や申し出をしましょう。
無事出産したら会社にも早めに伝えておきましょう。育業取得について改めて確認し、開始日と終了予定日を書いた文書やメールなどで、申請することが大切です。
会社側の仕事の状況によって、育業取得期間の希望がそのまま通りにくいことがあるかもしれませんが、互いに配慮しながら、希望に近づくように調整しましょう。

・育業取得を相談するときに伝えるべきこと
出産予定日
育業開始と終了の希望日
育業を利用する(利用したい)理由
家族の状況(パートナーの育業取得の有無と育業を取得する場合の期間、出生児のきょうだいの状況など)
育業中の業務について(引継ぎの案や予定、緊急時の就労の可否、会社との連絡方法など)
保育所の入園時期や入園できる可能性
保育所に入園できない場合に現時点で考えている対応など
(『パパとママの育業戦略』より、一部編集)

■パパの育業取得を促進するために

冒頭で男性の育業取得率を紹介しましたが、今は男性だけが、時間を問わず働くという時代ではなくなってきています。育業取得は、出産予定日がわかりますし、その後のどのタイミングで取るかの調整です。これと比べて介護は、親が突然倒れる場合もあり、急に介護休暇を取らざるを得ないということにもなるでしょう。育業取得は予定が立てられるので、企業のその間の仕事や人の配置をどうするかなどの対策が事前にできるわけです。

育業取得したケースでは、「引継ぎをすることで仕事の棚卸ができた」とか、「個人に紐づいてしまっていた仕事を共有でき、チームでカバーできるようになった」などの利点もよく言われています。

育業取得によって仕事が回らなくなると恐れるよりも、これを機会に仕事の進め方や配分を見直し、ブラッシュアップするきっかけになると考えてはいかがでしょうか。

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