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事例15:iMU株式会社
従業員とのコミュニケーションを図り、育業中のスキルアップを支援する
1.企業概要
設立年 :2020年
所在地 :東京都港区南青山2-2-8 DFビル5階 501
従業員数 :1名(女性)
事業内容 :ヘルスケア、スタートアップ
2.取組の背景
当社は大学医学部発のヘルスケア・スタートアップとして創業、バイオメカニクスの研究を生かしたヘルスケアデバイスの研究開発を手掛けています。自社での研究と開発を行っているために、従業員一人一人が重要な役割とやりがいをもって業務を行っています。そんな中で従業員が妊娠し、出産と子育てが始まることになり、会社としても従業員の産休や育業について考える機会ができました。普段から仕事に関する事が中心ではありますが、従業員と経営層のコミュニケーションが活発でしたので、従業員も自身の生活の変化に関する報告を、遅らせることなく相談してくれました。また、従業員が普段から重要な役割を担い仕事にやりがいを意識していたこともあり、育業中のスキルアップについて、どのような種類があるのか自主的に調査しました。そして自身の育業中のスキルアップについて会社に提案をしてくれたので、会社も育業中のスキルアップ支援をスムーズに計画する事ができました。
3.取組内容
育業を取得する従業員は当社の製品の総括として、製品のデザイン、チェックなどを担当しています。そして、自主的に調査した育業中に履修するスキルアッププログラムはWebデザイン、自社アプリ開発、会社のホームページデザインに関係するものでした。そのように当該従業員の業務と、会社全体にとっても必要な技術を学ぶことができるスキルアッププログラムは有益だと感じました。そのような背景もあり、当社では育業中のスキルアップ支援のために必要な手続きを積極的に進めました。当社はスタートアップ企業ということもあり、資金面と人材面でも限りがありますが、経営陣は育業の取得はもとより、当該従業員から提案を受けた育業中のスキルアップ支援についても積極的に支持したいと考えました。理由は会社の利益になる取り組みであることもありましたが、何より従業員が自身で積極的に調べ、育業中のスキルアップについてモチベーションを高く保っていることでした。
その後に従業員が出産の時期を迎え、実際に育業とスキルアッププログラムの受講も始まりましたが、会社としては従業員に進捗の報告を求めたりすると負担になると考え、受講の修了証を提出してもらうだけにしました。もしかするとスキルアップの講座も自身の体調の他に、子どもの体調なども関係し、当初決めていたスケジュール通りには参加できないということもあるかもしれません。そのような状況も考慮して、逐一進捗を催促する事で、ただでさえ出産と育児に忙しい従業員の負担をさらに増し加えることの無いようにしたいと考えました。
4.これまでの効果と、今後の課題
育業期間を終えた従業員が職場に復帰してきたときには、当人が望んでいた育業中のスキルアップ講習を履修していましたので、会社も従業員の事をより頼もしく感じました。育業中のスキルアップを終えた従業員は復帰後にすぐ自分の担当していた業務はもとより、それ以外の仕事にも意欲を持って加わるようになりました。出産や育児という多忙なスケジュールの中でスキルアップをするというのは大きな負担があったと思いますが、育業中のスキルアップは職場復帰のための言わば助走のような役割も果たしているのかもしれません。もし育業中のスキルアップの機会が無ければ、出産前に携わっていたプロジェクトや仕事自体から遠ざかってしまい、復帰後に通常の業務を再開させるまでに時間を必要としたかもしれません。
当社ではもともとコアタイムを設定し、その時間内での勤務を中心に細かい就業時間は従業員に委ねていました。また、リモートワークも積極的に推進しています。育業中のスキルアップを体験した従業員も、会社のホームページの外注指揮やアプリの開発の際に、学んだことを基に指示出しが効率的になり、学んだことが役に立っていると実感しているようです。このように、スキルアップ講習は自分が担当している作業を単に早く終わらせられるというよりも、そこで得た知見を効率的に業務で用いる時に効果を発揮するものだと観察しています。
当社は小規模事業者ですので、従業員はもしかすると育業を取得するときに経営陣に対して遠慮の気持ちを抱えていたかもしれません。先ほども述べた通り、業務に関することやそれ以外の事でも、職場でのコミュニケーションは活発に行えていると自負していますが、それでも経営陣と従業員の間には業務上の立場や年齢の違いもあります。それで、従業員が産休、育業について言い出しにくいのではないかという気持ちもよくわかります。そんな中、従業員が自主的に育業中のスキルアップについて調査し、提案しに来てくれたときは経営陣も嬉しく、支援したい気持ちになりました。
今後、当社が成長し事業規模や従業員の数が増えたとしても、従業員とのコミュニケーションを積極的に行っていきたいと考えています。規模の大きい企業であっても事業ごとのチーム、事業所はコミュニケーションを図れる規模になるはずですので、今後責任者になるものには社内コミュニケーションの大切さを伝えていきたいです。
当社の従業員による育業中のスキルアップ支援については、従業員自身が自主的に調査、提案してくれたことから多くの教訓を得ることができました。もしこれが、会社主体で育業中のスキルアップについて調査し、従業員に提案をするとなると育児に専念したいと願う従業員や、体力的な限界を持つ従業員がいた場合には余計なプレッシャーを与えてしまうことになりかねませんでした。今回の従業員の育業中のスキルアップ支援からはそのようなバランスについても考えさせられました。同時に、今回の育業中従業員のスキルアップ支援の好事例から、将来に当社の従業員が増えた場合も見据え、ほかの社員にも役立ててもらうための制度としての整備も検討したいと考えています。
しかし、当社では従業員が育業中にスキルアップ支援を行うことで復職もスムーズに果たすことができ、従業員が新たなスキルを身に着けて戻ってきたことで会社としても最良の結果を得ることができました。これらの経験から、当社では今後も従業員とのコミュニケーションを密に図り、どのように家庭と仕事を両立させたいのか、育業中をどのように過ごしたいのかについて従業員の希望をよく知るように努めたいと願います。そうする事で望む従業員が育業中のスキルアップを経験し、多くの利益を享受できるように努めてまいります。