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両立に向けた取組を始める

STEP 2 準備する

両立に向けた取組を始める

会社が社員の仕事と介護の両立を支援する仕組み作りに取り組んでいくには、経営トップがその重要性を理解し、推進することが大切です。そのうえで社員の実態の把握や、相談窓口の設置、各種の支援制度の整備などを進めていきましょう。

経営者の理解が必要

社員が仕事と介護を両立していくには、経営者の理解が欠かせません。今後、労働力の不足が予想されるなか、社員の介護による離職を防ぐことは、社員のためだけでなく、会社にとっても重要な人事戦略といえます。まずは社員の介護による離職を防ぐことの重要性を経営トップがしっかりと認識し、社員への意識づけや両立に向けたトップメッセージを発信することが大切だといえるでしょう。

会社が社員にできること

社員の仕事と介護の両立に向けての具体的な支援の手順は下図(介護離職を予防するための両立支援対応モデル)のようになります。
①社員への面接や社内アンケートなどによって実態を把握する、
②就業規則等が法定基準を満たしているかを点検し、社員が利用しやすい制度へ見直す、
③介護に直面する前の社員への早めの啓発、
④介護に直面した社員への支援(社内外の相談窓口の活用促進、制度利用手続きの周知、心身の状態の把握、休業中の側面支援)、
⑤残業削減・休暇取得促進など「働き方改革」を進める、という流れです。ここで重要なのは、両立をマネジメントするのは社員自身であり、会社はその支援を行うということです。

介護離職を予防するための両立支援対応モデル

社内の実態把握

会社としてまず取り組むべきことは、社内に家族介護を行っている、もしくは必要に迫られている社員がいるかどうかを把握することです。社員から積極的に事情を申し出ることをためらうケースが多く、なおかつ該当する社員自身が管理職というケースが多いことも想定されるため、人事担当者(部署)が実態把握を行うことが望ましいと考えられます。実態把握の方法としては、次のような方法が考えられます。社員数や人事体制など会社の実情にあわせて、これらの方法を利用して定期的に実態を把握しましょう。

  • 社員全員に定期的な面談を行う
  • 社内アンケートを実施する
  • 相談窓口を設置する

社内アンケートの参考例は「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル(厚生労働省)」をご覧下さい。

自社の両立支援制度の見直し

育児・介護休業法に定められた休業・休暇、労働時間の短縮の措置以外にも、介護を行う社員の支援制度として、以下のような制度が考えられます。自社の業務の特性や社員の希望などを考慮しながら、自社に合った制度の導入を検討しましょう。

■フレックスタイム制度、1か月単位の変形労働時間制

フレックスタイム制度や1か月単位の変形労働時間制は、育児・介護を行っている社員に限定せず、職場の社員全員に適用することができる制度ですが、これらの制度を活用することによって、介護を行う社員を支援することが可能となります。例えば、清算期間(フレックス制度の場合)や変形期間(変形労働時間制の場合)を平均して1週間の労働時間を40時間に定めますので、1日の労働時間を10時間と設定することによって週4日勤務とすることができます。

■時間単位の年次有給休暇

年次有給休暇は、通常1日単位(労働者からの希望があれば半日単位)で取得しますが、労使協定を締結することにより、1年につき5日を上限として時間単位の取得ができるようになります。ただし、この5日間の休暇を翌年度に繰り越すことはできません。

■在宅勤務制度

在宅勤務も、社員の介護離職を防ぐための有効な制度といえます。制度導入にあたっては、始業・終業時刻などの勤務管理方法、みなし労働時間制の導入など就業規則の整備、該当社員とのコミュニケーション手段・環境の確保などを、事前に検討・準備することが重要です。社員には、制度導入の目的やメリットを周知しましょう。導入後も業務の効率や社員の士気が低下していないかを継続的にチェックし、必要に応じて改善します。

■配置部署(転勤)の配慮

会社は、たとえ業務上正当な理由がある場合でも、介護家族を抱えている社員に対して転居を伴う配置転換の命令を行う場合には、家庭の事情を配慮する義務があります。経営上必要な配置転換であっても、事前に本人にも確認のうえ、できるだけ勤務場所を変更しないで済むような配慮を行う必要があります。

社員への早めの啓発(社内研修のすすめ)

漠然とした不安を抱えている社員もいるかもしれませんので、定期的に社内研修を開催し、家族介護に直面していない社員も含めて、介護に直面した際の心構えや育児・介護休業法の概要や会社の両立支援の内容を説明しておくことをおすすめします。仕事と介護の両立事例などを紹介し、具体的なイメージをもってもらうことが重要です。また、このホームページに掲載している「介護準備知識セルフチェック」などを使って、まずは社員に「気づき」を促すことから始めましょう。

働き方の見直し

長時間労働が恒常的となっている、休暇が取りづらいといった職場では、仕事と介護の両立は困難となります。残業時間の削減、有給休暇の取得促進など、日頃から働き方の見直しに取り組みましょう。東京都のアンケート調査(※)によると、介護経験のある社員が「できれば利用したかった制度」は、時差出勤制度23.6%、所定労働時間の短縮制度23.4%、有給休暇(未消化分)の積立制度22.5%、フレックスタイム制度21.8%、半日・時間単位等の休暇制度20.0%などとなっています。社員がフレキシブルな勤務形態をとれるようにすることも、両立にあたって必要です。
(※)東京都産業労働局 平成27年3月「仕事と介護の両立に関する調査」より
厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」

上司の理解・同僚の理解

せっかく会社が両立支援制度を整備しても、職場の上司や同僚の理解が乏しいと、制度の有効活用につながらず、両立支援制度を利用しないまま離職する社員が出て来る可能性があります。そうならないためにも、上司が社員の悩みに気づき、積極的に相談に乗ることが必要です。また、介護休業や介護休暇を取得する社員は、周りに迷惑をかけるのではないか、という心配を抱えています。社内研修の取組などを通じて、同僚が理解を示し、両立支援制度を利用しやすい職場の雰囲気・職場環境を醸成することが大切です。

池田 心豪
池田 心豪 監修
大正大学人間学部人間科学科教授。博士(経営学)(法政大学)。
専門は産業・労働社会学、労働政策、人的資源管理。介護と仕事の両立に関する論文や著書を多数発表。
主著『介護離職の構造――育児・介護休業法と両立支援ニーズ』(労働政策研究・研修機構、2023年)は労働研究の最高殊勲である労働関係図書優秀賞を受賞。厚生労働省の研究会委員や国会の参考人意見陳述を通じて育児・介護休業法の改正にも関わっている。
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