STEP 1 備える
介護に備えるために
親の介護は身近なもので、決して他人事ではありません。介護に直面したときに焦らないために、普段から親やきょうだいと話し合っておきましょう。特に、親の健康状態やかかりつけ医、経済状況を把握しておくことが重要です。また、勤務先に仕事と介護の両立を支援するためのどのような制度があるかを事前に調べておくことも大切なことです。
介護は身近な問題
東京都が都内企業に勤務する社員に行ったアンケート調査(※)によると、「今後、家族・親族を介護する可能性」の質問に対し、「今後5年以内に介護を行う可能性がかなり高い」と答えた人が26.5%、「今後5年以内ではないが、将来的に介護を行う可能性がある」と答えた人が45.1%と、介護の可能性があるとする割合が7割を超えています。特に50歳代では「今後5年以内の介護の可能性がかなり高い」と答えた人が4割近くに達しており、親の介護は、当事者となる可能性の高い身近な問題ととらえられています。
(※)東京都産業労働局 平成27年3月「仕事と介護の両立に関する調査」より
男女別・年齢階級別 要介護(要支援)認定率(平成26年10月時点)
実際に介護が必要となる人の割合は、男女とも75歳以上になると急速に高まります。介護が必要となった主な原因は、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」28.4%が最も多く、女性は「認知症」17.1%、「骨折・転倒」15.1%などとなっており、いずれも高齢期に多い病気や怪我がきっかけです。病気や怪我を原因とする場合、入院期間等を経ることも多く、この間に仕事との両立の準備を整えることが重要です。
介護準備知識セルフチェック:急に訪れる家族の介護に備えるためには、まず介護保険制度や介護サービス、勤めている会社の制度などに対する基本的な知識を身につけることが第一歩です。
離職後の再就職の難しさ
仕事と介護を両立させるために転職した人へのアンケート(※)によると、正社員から転職した人のうち、転職先でも正社員として働いている人は、男性で3人に1人、女性では5人に1人という結果でした。転職前後の年収を比較すると、男性は556万円から341万円へと約4割ダウン、女性は350万円から175万円と半減しています。家族介護に直面する人の多くが40歳代後半〜50歳代という点を考えると、一旦介護に専念するために退職すると、再就職や収入水準の維持については厳しい状況が想定されます。
(※)ダイヤ高齢社会研究財団・明治安田生活福祉研究所 共同調査「仕事と介護の両立と介護離職」より
親の健康状態や経済状況(話し合いのチェックポイント)
離れて暮らす親の健康状態や収入・財産といった経済状況は、普段はなかなか把握するのが難しいものです。しかし、状況を把握していなかったために、急な要介護の知らせにあわてたり、費用の工面に困ったりすることもあります。そうした事態に直面する前に、親が定期的に健康診断を受けているか、主治医は誰か、診断結果に異常はないか、体調で気になるところはないか、もし介護が必要となった場合にどの位の経済的負担が可能か、親族等の協力を得られるかなど、親子で具体的に話しておくことが大切です。また、きょうだいとも、親の介護の役割分担についてあらかじめ相談しておきましょう。
介護費用
介護には、介護サービス利用料に加え、介護用品代や医療費など介護サービス以外の支出もあります。介護サービス利用料は、利用するサービスの費用によって金額が異なります。これらの費用については、介護が必要となる親自身の収入や資産で賄える範囲を確認し、親自身が負担することを原則に考え、親の介護に備えて子どもが貯蓄をしたり、ローンを組んで費用を工面したりするのはできる限り避けるようにしましょう。
専門は産業・労働社会学、労働政策、人的資源管理。介護と仕事の両立に関する論文や著書を多数発表。
主著『介護離職の構造――育児・介護休業法と両立支援ニーズ』(労働政策研究・研修機構、2023年)は労働研究の最高殊勲である労働関係図書優秀賞を受賞。厚生労働省の研究会委員や国会の参考人意見陳述を通じて育児・介護休業法の改正にも関わっている。


