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事例1:株式会社ティーガイア

社員のファミリーまで配慮し出生に至る治療を応援する

令和元年度取材

1.企業概要

設立:1992年
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-1-18 恵比寿ネオナート
従業員数:4,655名
事業内容:携帯電話等の販売及び代理店業務、ソシューション、ブロードバンド等通信サービスの販売取次業務、決済サービスその他新規事業、海外事業

2.取組の背景

 企業理念、ミッションとして「社員とその家族を大切にし、働く喜びを実感できる企業であり続けます」と掲げており、会社の一番の財産は「人財」、「人材」ではなく「人財」と明言しています。社員だけでなく、その家族やパートナー、そして社員をとりまく環境も大切にし、社員が仕事を通じて自己実現や成長を実感できる企業文化づくりを進めています。行動指針として、「多様性を尊重し、最高のチームワークを実現します」を掲げています。会社としては年齢・性別・国籍・障害の有無や育児中、介護中、不妊治療中であることも多様性の一環と考え、互いの足りないところを補い合い、各々の強みを活かすことで、チームワーク良く働ける職場づくりを目指しています。
 会社はこれまでも育児と仕事の両立や介護と仕事の両立を支援する制度の充実を図ってきました。不妊治療に特化した仕事との両立支援の取組を開始したのは2018年です。
社員が不妊治療を受けているかどうかは、「不妊治療と仕事は両立ができないから、会社を辞めたい」という申し出があってはじめて知ることになります。そうした申し出をする20歳代、30歳代の女性社員が増加してきたという実感がありました。
 社内で不妊治療を行っている社員の存在が把握できるようになった頃、いろいろな雑誌で「不妊治療」の記事や特集を目にするようになりました。携帯電話の販売現場は常に人手不足です。貴重な戦力である若い女性の退職を食い止めるため、不妊治療と仕事の両立支援制度が必要だと感じ、さらに東京都のチャレンジサポート事業で奨励金が出ることを知ったこともあり、2018年12月に制度を導入することになりました。

 

3.取組内容

①制度導入のための情報収集
 まず、厚生労働省が実施した「不妊治療と仕事の両立に係る問題についての総合的調査研究事業 調査結果報告書」を用いて情報収集をしました。企業が導入している休暇制度の仕組みや内容、ネーミング、金銭的な補助を行っているかどうか、休職制度の期間、等々、できるだけ多くの情報を収集しました。また、人事担当者が東京都の不妊治療と仕事の両立に関する研修を受けるなど、不妊治療についての勉強を重ねました。

②検討委員会の設置
 社内制度の内容を検討するために、外部の社労士を含む7〜8名のメンバーからなる検討委員会を2回開催しました。検討委員会では、他社の取組事例の内容や東京都の不妊治療と仕事の両立支援奨励金にエントリーするための条件等をメンバー間で情報共有し、会社としてどういう制度にしたらよいかを検討しました。病気治療と仕事の両立支援制度の導入も同じタイミングで検討を進めていたため、その担当者も検討委員会に参加しました。
 制度整備で最も工夫した点は休暇や休職制度のネーミングでした。直接的なネーミングでは利用しづらいと考えましたが、どのような種類の休暇なのかがわかるようなネーミングを考え、出生支援休暇、出生支援休職としました。利用しやすさを考える上でネーミングはとても大事なポイントになります。

③制度内容

  • 出生支援休暇
    制度利用の対象者は、正社員・契約社員・シニアパートナー(注)のうち、不妊治療を行っている社員です。不妊治療を行うために1年間に5日間を上限として、1日または半日単位で休暇を取得することができます。休暇申請は可能な限り事前の申請を求めていますが、申請する余裕がなかった時は事後速やかな申請も可能としています。有給休暇の取扱いで、休暇の申請時には証明書の提出は不要としています。
    注:シニアパートナーとは、定年直前の雇用形態が正社員、地域限定正社員又は無期契約社員であり、定年退職後においても本人が再雇用を希望し、引き続き会社と雇用契約を締結する者です。会社の方針として出生支援休暇の制度利用の対象者に加えています。
  • 出生支援休職
    制度の対象者は、正社員・契約社員、シニアパートナーのうち、高度生殖医療(体外受精・顕微授精)の治療中又は治療予定の社員です。高度生殖医療を行うために、対象社員1名に対し最長365日間(分割取得可)、出生支援休職を取得することができます。休職開始日の1か月前までに申請をする必要があります。出生支援休職中の給与は無給です。
  • 相談員の配置
    人事・総務部内に不妊治療に関する相談員男女2名を配置し、相談を受けています。
  • フレックスタイム
    月々の労働時間が決まっているので、1日の労働時間を長時間と短時間を自分で割り振り決めることができ、不妊治療のための通院などにも活用することができます。

④社内で展開した周知活動
不妊治療と仕事の両立支援の制度を出来るだけ活用してもらえるように、社内向けに様々な方法で周知活動を行いました。

  • 人事担当向けの事前説明会
  • イントラネット・社内報への掲載
  • 「社内相談窓口」周知用ポスターの掲示
  • 『仕事と育児・介護の両立支援ガイドブック』への掲載と配布

 もともとあったガイドブックに不妊治療の内容を改訂版を印刷するタイミングで加えました。不妊治療の概要、スケジュール、社内の支援制度について3ページにわたって掲載しています。特に気をつけてほしいプライバシーの配慮についての記載もあります。会社のホームページに制度の内容を掲載するよりも冊子にしている方が読まれますし、ガイドブックがあると相談を受ける側も話しやすいし伝わりやすいです。サポートする側の社員にとっても、事前に知っておいて欲しいポイントが記載されているので相談にのりやすいです。

、出生支援休職の制度のページ
『仕事と育児・介護の両立支援ガイドブック』出生支援休暇、出生支援休職の制度のページ

4.これまでの効果と今後の課題

 出生支援休暇の利用者数は、2018年度が8人(内訳:男性1人、女性7人)、2019年度は11人(内訳:男性1人、女性10人)です。女性社員が主な利用者になると想定していましたが、男性社員も取得しています。出生支援休職はこれまで女性2名が利用しました。その内1名は、第1子も不妊治療で生まれ、子どもの育児に専念したいということで退職してしまいました。
 これまでは、販売店の店長は男性社員が多いので、若い女性社員が言い出しにくいこともあったと思います。女性社員の中には不妊治療で会社を休むと販売店に迷惑をかけてしまうと思っていた社員もいました。こうした理由で退職の理由を会社に伝えられなかったり、不妊治療を諦めてしまっていた社員が、制度を利用しているようです。制度を導入する前に不妊治療を受けて出産した社員からは、自身の時は有休を利用してやりくりしたが、こういう制度があったら良かったと言われるような場面もありました。総じてこの制度の導入は特に若い社員からは好評ですが、40歳代、50歳代の社員からも、このような制度ができることで若い社員や子育て世代が安心して働ける、という声が聞かれます。
 現在、介護で休暇制度を利用する社員も増えています。社内で介護研修を開催したときに10年前は参加者が10名ほどでしたが、現在は40名も参加するようになりました。社内のダイバーシティを推進する上で、社員個人の様々な事情と仕事の両立を会社が支援していることが分かると、社員間で助け合いながら働く意識が高まっているように感じています。
 今後も社員には様々な働き方ができることを会社として支援していく姿勢と実践をメッセージとして発信していきたいです。現在の社内制度だけで十分であるとは思っていません。出生支援休暇の制度のメニューが加わったことで、多様な社員のニーズに応えられるようになり、不妊治療と仕事の両立を後押しし、社員のワーク・ライフ・バランスの実現をはかることができたと考えています。制度導入の大きなきっかけは、東京都の働く人のチャイルドサポート事業でした。近々、病気治療と仕事の両立支援の制度も導入されますし、在宅勤務等の制度も検討しようと思っています。

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