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事例6:株式会社NISHI SATO

妊娠から子育てまでをセットで考える社内制度で、従業員の出産・育児を支援

令和四年度取材

1.企業概要

設立:1981年
所在地:(本社)東京都立川市富士見町1-3-14
従業員数:43名(2022年2月時点)
事業内容:ハンドラベラー・自動認識ソリューション事業、保育事業
URL:https://nishisato.co.jp/

2.取組の背景

 当社は、バーコードプリンタ・ハンドラベラー・カードシステムなどの自動認識システムをメインに扱う販売店です。設立から40年、順調に製品販売が伸びていく中で、女性社員数も増加しました。
 2011年、創業者である父親の後を継いで、現在の社長・横川みどりが就任しました。自ら3人の子どもを育てながら働いてきた経験から、「従業員が働きながら安心して子どもを育てられる環境、またその大切な成長過程を見守れる会社」にしたいと決意しました。というのも、当時の従業員数は現在の半数以下。各部署において代替要員がいないことから、休暇が取れる環境ではありませんでした。昔気質なところがあった先代社長(父親)からは「子どもの行事に出たいなら退職届を出してから行け!」などと言われたほどです。
 今では当時の何倍もの従業員数になり、女性が8割を占める当社。母としての社長自らが望む社内環境であれば、同じ母である従業員もそれを希望するだろう、と一般論にこだわらず、自分たちはどうしたいのかということを重点に試行錯誤しました。そして最終的に、従業員と経営者の垣根なく「互いが家族と思い合える会社」であればきっと人も集まり、働きやすいのではないかという考えに行きつきました。家族ならその出産や育児をよろこび支えあうとの思いから「企業主導型保育所」、子どもの学校行事に向けて付与される「学校行事休暇」、そして不妊・不育症治療にも使用できる「ファミリー休暇」が誕生しました。

3.取組内容

(1)「学校行事休暇」の制定
 2019年に「学校行事休暇」を制定しました。中学生までの子どもを持つ社員(正規・非正規問わず)が年次有給休暇とは別に、子ども一人あたり学校行事休暇を2日間取得できるという独自の有給休暇制度です。
時間単位での取得が可能で、勤務中の中抜けでも利用できます。「30分程度の個人面談で有給休暇を丸一日使わなくて済む」と大変好評でした。親が学校に行ける機会が増えたことで、親子のみならず親と先生との関係性も深められました。

(2)同ビル内に保育所を設置
 2019年3月に「保育事業部」を発足し、本社の同ビル内に企業主導型保育所「ベネチアンベイビー」を開設しました。子どもが急に体調不良になったときでもすぐに駆けつけられるので、社員も安心して仕事に取り組めます。室内外にはモニターが設置され、職場からいつでも我が子の様子を見られます。保育園への送り迎えと勤務先が同じ場所のため、時間の有効活用にも役立っています。

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企業主導型保育所「ベネチアンベイビー」

(3)就業規則の変更
 保育所の設置に伴い、就業規則を変更しました。企業主導型保育所を利用、かつ育児休暇を3か月間取得後に会社への復帰を希望する社員には3か月の給与を支払うというものです。
 変更したのは、出産後3か月ほどで職場復帰したいと考える社員が多いとわかったからです。導入した目的は、育休中の金銭的不安を解消するため、保育所の利用を促進するため、育休から復帰してもらうためなど様々あります。

(4)「ファミリー休暇」の制定
 2021年9月には「学校行事休暇」を廃止して「ファミリー休暇」を制定しました。大きな変更点は、家族に関する用事全般(介護、看護、学校行事、不妊・不育治療など)まで対象を拡大したことです。つまり、子どもがいるいないにかかわらず、様々な理由で休暇を申請できるようになったということです。
 年6日までは年次有給休暇とは別で取得でき、不妊・不育症治療の場合はさらに各5日ずつ取得できます。時間単位での取得も可能です。また、取得の際、理由を報告する必要がないため、不妊・不育症治療の場合でも気軽に休暇を取りやすくなっています。
 学校行事休暇では対象外だった、独身者・子どものいない家族・義務教育後の子どもがいる家族などにまで利用可能者が大幅に拡大しました。また、不妊・不育症治療に特化した名前を付けていないので、利用のハードルが低くなっています。

(5)従業員の事情にフレキシブルに対応
 「テレワーク制度」を就業規則に定めており、希望者とは誓約書を交わし利用されています。また、フレックスタイムも対応しています。不妊治療の場合は、治療のスケジュールを組んでいても、その時になって日時の変更が発生したりします。そのような場合にも、これらの制度とファミリー休暇を組み合わせ、臨機応変に仕事と調整することができるようにしています。何よりも従業員の間にそれぞれに支え合うという意識があり、業務の内容についても、この人がいないと進まないという事がないように共有している事が、制度の有効性を高めています。

 

4.取組内容の留意点

(1)常識にとらわれない
 当社はこれまでの常識にとらわれず、社員の悩みに寄り添いながら制度を整備しています。一昔前は「結婚=退社」「妊娠=退社」という考えが当たり前の時代でした。妊娠・出産後も働きたい女性がいること、子どもを産むとお金がかかることが無視されていたのです。当社では、子どもの「両親に近くにいてほしい」という思いを理解し、子育てを経験した代表が「こうだったらいいな!」と思える制度を整備しています。

(2)企業主導で保育所問題を解決する
 共働き世代の増加に伴い、保育所の確保が課題となっていることに加え、昨今の定年延長に伴い、祖父母に預けて勤務することも難しくなっています。
 当社は、こうした時代の変化に対応し、企業主導で保育に関する課題を解決しました。保育所を本社の同ビル内に設置し、「働いてくれる社員のお子さんを預かる」という考え方に変えたのです。「ここに預けたい」と全員が思える保育園を目指しています。実際、保育園への送り迎えの時間削減や子どもの緊急事態にもすぐに駆けつけられるという効果が得られています。

5.これまでの効果と今後の課題

(1)これまでの効果
 当社は、社員が仕事と育児・治療・介護などを無理なく両立してもらうために、新たな休暇制度の導入や企業内保育所の設置、就業規則の変更など、妊娠から子育てまでをセットで考えた様々なアプローチを行ってきました。
 その効果は様々あります。例えば、中途採用者の中には、ファミリー休暇が不妊治療時に使えるという事を理由に応募した者もいます。会社を挙げて取り組む姿勢は、採用面でも大事な要素になってくると考えています。また、学校休暇制度をファミリー休暇へリニューアルしたことで、徐々に「休暇を取りやすい雰囲気」が社内に形成され、働きやすい会社だと思ってもらえるようになりました。
 さらに、従業員にとっての出産後のメリットとしては、子どもの成長を近くで見られて子どもと過ごす時間が増えるため、この時期だからこそできる経験というチャンスを逃さずに済むということです。
 取り組みが浸透することで、会社としても「必ず出産後は復帰してくれる」という安心感を得られ、好循環となっています。

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「子育てしながらでも働きやすい会社だと思う?」のアンケート結果

(2)今後の課題
 不妊治療と仕事の両立に関して、また他の問題に関しても、会社の制度面や従業員の意識面はかなり熟成されてきたと考えています、しかし、人間なので個人では周りに負い目を感じて心の負担になる事もあり得ます。特に不妊治療の場合はその傾向が強いです。さらに意識を熟成していくためにはトップによる働き方に関しての考えをこまめに全社員に浸透させ続けることがあります。週一の朝礼や社内掲示板を活用してその時に必要と感じたことをタイムリーに伝えていくようにしています。最後までトップが徹底して伝えていくことが重要だと考えています。
 また、誰一人残さず、全社員がハッピーになるように取り組みを推進していくことが今後の方針です。地域との関わりが増えてきたため、自社に限らず、立川市や東京都のためになる取り組みをしていければと考えております。影響する範囲が大きくなることで、社内の雰囲気もさらに良くなっていくと考えています。
  自社ならではのSDGsを推進することも目標です。「SDGs委員会」を立ち上げ、今は都の講師に伴走してもらいながらNISHI SATOが企業として社会に貢献できることを選定しています。来年度からはいよいよ自力で、定めた目標に向かってSDGsを推進していこうと考えています。

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