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事例4:株式会社アートネイチャー

専門職や女性社員が多い職場環境を鑑み、病気治療と仕事の両立支援の充実を図る

令和二年度取材

1.企業概要

設立:1967年
所在地:東京都渋谷区代々木3-40-7
従業員数:2,349名
事業内容:各種毛髪製品の製造販売、増毛・育毛サービスの提供、ヘアケア商品の販売

2.取組の背景

 当社のモットーは『ふやしたいのは、笑顔です』。お客様の笑顔を増やしていくためには、社員が笑顔でいきいきと働ける環境が必要です。2015年4月に「健康経営」を宣言し、その宣言を実行すべく両立支援制度の充実を図ってきました。それ以前より、病気になった社員の救済や、いったん仕事を離れても戻れるジョブリターン制度を実施するなど、支援制度が整っていた状態でありましたが、2019年度までの中期経営計画では、重要取り組み課題のひとつに「従業員満足」を掲げ、健康経営を推進してきました。
 当社は、多数の理美容師の方々を必要とする業態(社員の7割近くが理美容師)ですが、業界的に理美容師の減少、採用難の状況が続いていました。理美容師は専門職であり、育てるまでにも時間がかかる職種です。特に、当社では理美容師として育成すればいいのではなく、ウィッグを扱うという特殊な技術を習得する必要があります。理美容師としてベテランであっても、当社に入社した時がスタートラインとなります。そんな背景から、当社では入社してくれた理美容師を大切にしようという文化が根付いていたこともあり、病気に罹患しても治療しながら働き続けられる体制・風土づくりに取り組んできました。
 社員の勤務形態としては、百貨店内の店舗の営業時間が長いため、朝番と遅番の組み合わせで、朝番で働いた翌日に遅番となることもあり、やや不規則な側面もあります。また、店舗勤務の社員は、基本的に土日は出勤となる形です。理美容職以外にも販売職の社員も多く、こちらはすべて女性社員またはパートの方々です。全社員のうち、女性の社員の数が50%超を占めている状況です。

3.取組内容

当社が実施している取り組みについては、以下の通りとなります。

「病気治療と仕事の両立支援ガイド」

  • 療養時の対応手順、利用できる休暇や復職後に利用できる制度、病気治療を行いながら就労を継続するためのサポート制度といった情報をイントラネット内に格納してあり、いつでも社員が職場内のタブレット端末で見られるようにしています。
  • 社員に個別で届くツールとしては社内報(紙・PDF)があります。開封率も高く、社内の情報の周知に役立っています。年に1回程度、定期的に両立支援に関する特集を組む他、人事制度の情報などの発信に用いられています。

独自の「傷病休暇」制度

  • 平均年齢が男女ともに40歳を超えている会社なので、年齢的なことから癌罹病者も出てきている背景もあり、年次有給休暇とは別に当社独自の「傷病休暇」を設けました。この制度は、有給で1ヵ月間休みを取得することができるもので、がん以外の病気、メンタル不調などにも利用可能です。ただし、試採用期間中は使用できず、本採用となった時点(通常は入社半年後)から使用可能となります。

時間単位有給休暇取得制度「ふさふさ休暇」

  • 年次有給休暇とは別に、独自の有給休暇「ふさふさ休暇」を年12日付与しています。その内、8日間分を上限に1時間単位で取得が可能です(年間最大64時間)。病気治療はもちろん、取得理由を問わず、通院や体調不良の他、私用でも利用可能です。人事部に申請する必要もなく、上長の許可のみで取得できる自由度の高い休暇制度になっています。皆が気兼ねなく取れる休暇として定評を得ています。
  • 年次有給休暇も、5日間分は半日単位で取得できます。

「がん検診費用」および「二次健診費用」を会社が負担

  • 乳がん、子宮頸がんを含むがん検診の費用については会社が負担しています。また、健康診断費+五大がんの全額負担の他、内視鏡検査、健康診断結果に基づく二次健診の費用も会社が負担しています。(健康診断区分とオプションの組み合わせによっては自己負担費用が発生する場合もあり)。健診を受けっぱなしという状態にならないための取り組みです。
  • 健康診断の種類についても、血液検査・心電図などを含む健康診断(B区分)を社員全員が受ける形にしています。

「健康ポイント制度」など

  • 従業員の健康意識改善施策として、適正な健康診断、がん検診等の受診や日々の健康への取り組み(朝食の摂取や8000歩以上のウォーキング、ストレッチの有無等)に対し、インセンティブとして健康ポイントを付与しています。こちらは、外部のアプリサービスを利用しています。
  • その他、会社として禁煙を強く推奨しています。「2020喫煙ゼロ宣言」を掲げ、社内の喫煙者をゼロにする運動をしてきました。社内の喫煙所はすべて撤去しています。

「HPVセルフチェック」を実施

  • 2020年度に限り、HPV(ヒトパピローマウイルス)セルフチェックを実施。従業員とご家族に無料で提供しています。ひとつは、子宮頸がん検診の受診率を上げるのが目的で、もうひとつは、30代以降でないと職場の子宮頸がん検診を受けられないことから、若い社員の方々にも子宮頸がんの危険性を知って積極的に検査を受けてもらえるようにするのが目的です。そのための取り組みを今年度は強化しました。(国立がん研究センターの行動変容の実験に参加する形です)

4.これまでの効果と今後の課題

  • 乳がん検診については、女性社員の90%以上が毎年受診しています。また、会社としてピンクリボンの運動に参加し、ピンクリボンアドバイザー資格を社員約500名が取得しています(国内企業で資格者数1位)。その背景には、医療用ウィッグを扱う企業であり、そういったお客様と接する機会が多いことが乳がんの関心の高さにつながっていると考えられます。

    ピンクリボン活動

  • 病気治療に入ってから復職までのステップは、店長・ブロック長・部長を経由、または本人から直接人事部にすべての情報が上がってくる形にしています。まだイントラネット等のネット環境が、必ずしも充実していないことから、「何かあったら、すぐに人事部へ電話」というアナログ的に支える風土が出来あがっています。そこで担当者が制度や今後の流れなど、すべてのご案内をし、休暇手続きをとります。その後は、産業医(2名、月計3回来社)と人事部とが連携をしっかりとり、フォローを行います。休職期間中は、月1回人事部に電話連絡をもらい、会社としても随時社員の状況を把握しています。復職の際には、産業医との面談を行い、人事部で勤務時間の調整や、立ち仕事を控える等の注意事項を現場に伝え、復職を支援していきます。フルタイムで問題なく勤務できるようになるまでサポートする形となっています。まずは病気をしっかり治してもらうことを前提に、じっくり時間をかけて復職するケースもあり、社員によってペースは様々です。なお、基本的には、同じ部署に復職する形となります。
  • 直近10年間のがん罹患者数は、乳がん、子宮頸がん、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がんなど計42名で、この内、約4割が現在も就労を継続しています。
  • 「喫煙ゼロ宣言」については、喫煙者の割合は2016年時点で42%でしたが、2020年9月時点で7.9%と大幅に減少。引き続き、喫煙者ゼロを目指し、取り組んでいきます。
  • 人事部・部長ががんに罹患した経験談を社員に向けて話すという取り組みを進めています。コロナの影響で、本社でしか実施できていませんが、その様子がYouTubeでも見られるので、地方勤務の社員にも周知していく予定です。病気治療(抗がん剤治療)と仕事を両立している経験者からの生の声をお伝えすることで、勉強会後のアンケートでは「得るものがあった」「実は私も持病があって」といった声(相談)が聞かれました。今後は、休暇の取り方、休職の制度をさらに充実させたいと話し合いを進めています。
  • 女性の活躍推進の一環として、女性のプロジェクトチームが発足しおり、「会社を良くすること」を目的として活動しています。HPVのセルフチェックの他、育児時短勤務(小学3年生までだったのを小学6年生まで延長)、年末年始休暇の1日延長、定休日のなかった店舗に定休日を設定、といった改善を行い、働きやすい職場づくりに力を入れています。育児短時間勤務制度利用者が2020年時点で150名と多いこともあり、お子さん関連の急なお休みを受け入れる風土が当たり前に出来上がっています。育児中の社員を支えている周りの社員の方々も、もっと有給休暇が取りやすい環境にしていくことも、課題のひとつです。育児、病気、介護など、いろいろな休暇・サポート制度を充実させていくことで、社員の皆がどこかに自分が当てはまることが大事だと考えています。すべての制度を充実させていくことで「自分事」になるよう、人事部として制度の拡充に努めています。
  • 二次健診の受診率も100%にはなっていない、また、特定保健指導についても受けている割合が低いため、それらの点を改善していきたいと思っています。さらに、健康診断の数値を活かす、新たな取り組み(社員の方々の健康意識を高めていく施策)などについても考える必要があると感じています。
  • 育児、病気、介護などの理由によりフルに働けない方々も含め、社員同士がお互いに大切にできる文化があってこそ、必要な人が気兼ねなく制度を使えることになります。すでに制度を使ってもらえる環境ではあると思いますが、誰もが制度を使いやすく周囲の人達もそれを自然に応援できる文化がより育つことを願っています。そして、自分の健康への意識をより高めてもらい、50年先も、社員も会社も元気な体制を整えていきたいと思います。
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