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事例3:ウシオ電機株式会社

病気治療と仕事の両立の社内事例を基に、両立支援の改善に注力

令和二年度取材

1.企業概要

設立:1964年
所在地:東京都千代田区丸の内1-6-5
従業員数:1,559名
事業内容:光応用製品事業ならびに産業機械及びその他事業

2.取組の背景

 当社では、企業理念のひとつ「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させること」の実現を追求しています。その考え方をベースに「事業成長」と「仕事(職場)における充実」を一致させることを目指し、喜びと驚きを生み出す輝く集団として、①一人ひとりがプロフェッショナル(仲間と共に成長) ②常に共にある仲間(本音を言い合える) ③「見てくれている(信頼関係)」という安心感を人事ビジョンに掲げています。病気治療と仕事の両立の取り組みもその企業理念や人事ビジョンに基づきアプローチしています。
 2005~2010年度までは繁忙期が続き、社員がメンタル疾患を抱えるケースが多くみられ、また再発して長期におよぶケースもでていたことから、病気治療と仕事の両立支援の充実を図ることとなりました。2019年度の実績では、メンタル疾患で治療に入った方が累計で8名、メンタル以外が3名でした。2000人未満の社員数で、0.5%位の人が病気治療をしながら両立しているという状態でした。

3.取組内容

病気治療と仕事の両立支援においては、具体的に次のような取り組みを行いました。

■職場復帰プログラムの取り組み
 1ヵ月以上の休業を必要とした場合を対象に、職場復帰支援プログラムを2011年度に整備しました。年休だけを使って1ヵ月以上の病気治療で休みを取った方にも、職場復帰プログラムを実行しています。医療スタッフの協力が得られていることも大きいですが、きめ細かい対応が出来ている状況です。今では、メンタルヘルス不全を再発し、休職を3回以上繰り返すといった長期におよぶケースはゼロに近い傾向にあります。
 メンタルヘルス不全、脳・心臓疾患、悪性腫瘍、感染症等で1ヵ月以上の休業を必要としている社員に対して、休業開始から職場復帰までを6ステップに分けて支援しています(下記フロー図を参照)。休職中も本人了承の上で、月に1~2回または3ヵ月に1~2回のペースで人事担当者、産業保健スタッフ(常駐または非常勤)が連絡をとっています。産業医には本人との面談にて1日の過ごし方、生活リズム、通院結果を聞くなど、病状の把握をお願いしています。また、治療がスムーズに進むように、会社から受けた説明や面談内容を休職者本人から主治医に伝えてもらっています。
 6ステップで最も重要視しているのが、最後の「職場復帰後のフォローアップ」となります。それは、復帰する際、主治医と産業医の意見が食い違うことがあるためです。主治医は職場復帰OK、短時間勤務なら復職OKという診断を出されることが多くありますが、当社の場合は、基本的に復職に際しては「9時~17時30分までフルタイムで勤務できる心身の状態であること」という条件を設けています。それは、中途半端に短時間勤務ならできるということで復帰を判断してしまうと再休職するケースに陥りやすいと考えているためです。職場でも、適切に仕事を与えにくいという側面もあるため、きちんと治ってから通常通り仕事をしてもらう、という形をとっています(ただし、職場復帰時に円滑にリズムを戻す目的で、3ヶ月間の短時間試行勤務制度は設けています)。主治医の先生だけではわからないことが多いため、会社は産業医と連携してそのような会社の考えを可能な限り本人、そして本人経由で主治医の先生に書面で伝え、無理のない復帰時期を探っています。場合によっては、社員やご家族のところに足を運び、説明を行うこともあります。社員本人は病状が改善されるとすぐに職場に戻りたいというケースが多いですが、主治医と産業医の意向も踏まえたうえで、総合的に判断するようにしています。
 復職先としては、基本的に元の職場になるように配慮しています。復職後は数ヵ月~1年ほど、残業、休日・深夜勤務、出張、車両運転の禁止などの就業制限を設け、回復状況を見て段階的に制限を解除し、職場復帰を支援しています。配慮が必要なことも多々ありますので、職場の上司とも連携してフォロー体制を整えています。就業制限の決定も産業医や上司を含め、本人と話し合い、その内容を記載する「就業措置に関する産業医意見書」が用意されています。

資料1

■GLTD制度の導入
治療期間が長期化して、治療費が多額になった時の社員やその家族の経済的な不安は非常に大きいものです。そこで2021年1月から社員が病気や怪我で就労できない場合に長期間に渡って所得を補償するGLTD制度(団体長期障害所得補償保険)を導入しています。

■働き方や病気休暇等の制度の取り組み
医療の進歩で入院が短期化して通院治療が増えてきたので、治療と仕事を両立できる働き方や病気休暇等の制度を整備しています。2020年度より、その会社の取り組みや制度内容等をまとめた「両立支援ハンドブック(治療編)」を社内Webへ掲示し、公開しています。

資料2

資料3

■当社のメンタルヘルスケアの取り組み
 国の指針で示されている、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4つの分野ごとに、当社が行っているのは次の通りです。

  • セルフケア=定期健康診断、ストレスチェック
  • ラインによるケア=ライン長向け教育
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア=産業医、保健師。衛生管理者・人事労務管理スタッフ。
  • 事業場外資源によるケア=カウンセリングサービス、健康相談サービス。セカンドオピニオン提供、専門医紹介サービス。

特に、ライン長向け教育が重要だと考え、ライン長には「いつもと違うことに気づく」「声をかける」「産業医や人事に伝える」という3つを意識してやってくださいとお願いしています。最近覇気がない、遅刻や早退が多い、失敗が多くなったといった、部下のちょっとした変化に早めに気づき、医療スタッフや人事につなぐことが大事だと伝えています。

4.これまでの効果と今後の課題

①これまでの効果
■成功事例の一例

  • (20代女性社員/30代男性社員)
  • 持病の悪化により心肺停止状態になった後、幸い後遺症なくペースメーカーに似た機器(ICD)を埋め込む手術をして退院し、その後、復職を果たしました。製造現場では機器類から電磁波が出て危険と判断されたため、製造職から間接業務へ配置転換しました。手術や配置転換などのストレスにも考慮し、復職直後は残業や出張禁止等の就業制限を設け、段階的に解除してきました。ICDメーカーの方にも社内訪問してもらい、会社内の電磁波を計測するとともに、不測の事態に備え、本人の許可を得て部署の社員に病状やAEDの使用方法等の説明をしました。こちらに関しては、会社としても上手く復帰支援をできたケースと考えています。

■課題を残した事例の一例

  • (50代男性社員)脳腫瘍
  • 後遺症があり、言葉の理解が困難といった障害があり、復職できる状態までに回復しませんでした。しかし、本人の復職への意志が強く、主治医からは復職可の診断書が出されましたが、会社側からみて復職できる状態ではなかったため、配偶者を交えた話し合いの結果、休職期間満了で退社となりました。

    →この件をきっかけに、主治医と産業医間の情報共有をしていくことが必要と痛感し、復職までのプロセスを改定しました。それ以前は主治医との情報共有や書面による「主治医の先生へのお願い」や「就業措置に関する産業医意見書」などを主治医に提供するというプロセスはありませんでした。
  • (40代男性社員)がん
  • 病状を上司にしか話さず、治療を継続していました。本人の強い希望で、本人と上司の間だけで就業制度を設けて配置転換せず就業していましたが、繁忙期になると周りと同じペースで仕事が出来ず、同僚から不満が出ていました。その後、上司から産業医に相談がありました。

    →会社が把握するのが遅れ、結果的に長期に職場を離脱することになったため、この件をきっかけに、早期の連絡、連携の必要性を認識し、前述のライン長向けのラインケア研修を開始しました。
  • (30代男性社員)がん
  • 人間ドックを受診したところ、がんが見つかり、胃の全摘出手術をうけました。2年間の長期休職を経て復職しましたが、職場での万一の事態に備え、本人の許可をとって職場全員に状態を告知、緊急連絡など対応方法を説明しました。

    →長期就業不能になった際、社員本人と家族の経済的な不安も大きかったため、この件をきっかけに、安心して働けるようGLTD制度の導入に至りました。

②今後の課題

  • 課題について
  • プライバシーの保護の観点から、本人がオープンにしたくない場合は、同僚や部署内からの協力が得られにくいという問題があります。ただし、職場の協力がどうしても必要な時には、産業医や産業保健スタッフから本人に説明してもらうことがあります。それでも同意が得られない場合は、周囲には説明せず、配慮しながら対応するようにしています。なお、メンタルヘルスでは病状について伏せたいという傾向がみられます。
     就業上必要な配慮については、所属長には意見書で提示していますが、人事異動の場合にその内容の引継ぎがされず、継続がうまくできない場合(プライバシーの問題含め)もあります。この部分の引き継ぎや内容といった点は、今後の実務面での課題だと捉えています。
     治療と仕事の両立支援というのは、本人の強い希望を尊重して満足させるだけではなくて、会社側や同僚も含めた全体が満足いく支援が何かを考え、改善していくことが課題だと思っています。
  • 今後の取り組みについて
  • 一人ひとりの状況に応じて、各社員が成果を上げやすい職場環境を常に立ち止まることなく改善していきたいと考えます。制度的には充実してきたので、実際に病気になった社員のヒアリングの実施、産業保健スタッフからのアドバイスをいただき、随時見直しをかけていきます。これまでは、病気になった方の支援を中心に取り組んできましたが、今後は社員の平均年齢も上がってきていますので早期治療や予防という点に軸足を置いた施策を進めていきます。本人の支援はもちろん、その人を支えている周囲の社員の支援についても、考えていく段階にあると感じています。

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