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事例6:株式会社アドバンテッジリスクマネジメント

病気治療と仕事の両立支援制度を導入し、健康経営を体現

令和四年度取材

1.企業概要

設立:1999年
所在地:(東京本社)東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー17階従業員数:421名(2022年5月時点)
事業内容:メンタリティマネジメント事業、就業障がい者支援事業、リスクファイナンシング事業

2.取組の背景

 当社は「GLTD(団体長期障害所得補償保険)」の専業代理店として創業しました。GLTDは「Group Long Term Disability」の略で、病気やケガにより長期間にわたって仕事ができない従業員に給与の一部を補償する制度のことです。米国企業ではスタンダードな保険で、日本では1994年に認可されました。
 GLTD制度を日本で普及させようと事業を拡大すると同時に、自社の社員にも安心して働いていただけるようGLTD制度を導入し、病気治療と仕事の両立支援に力を入れ続けています。また、創業時より女性が大変活躍していたこともあり、女性が育児と仕事を両立して働き続けやすいよう、順次、制度や環境を整えてきました。
 近年は、健康経営、さらにはウェルビーイングの支援に事業を広げる中で「全員活躍」を重視しています。女性に限らず、多様な属性や事情を抱えた方「全員」が活躍できる環境を創ることを目標に、育児・介護・病気などと仕事の両立を支援する取り組みを進化させ続けています。

3.取組内容

(1)GLTD(団体長期障害所得補償保険)
 病気やケガにより長期間にわたって仕事ができない場合に、給与の一部を補償する制度を導入しています。保険料は全額会社負担で、導入しているのは年収の1/12の給与の60%を補償する保険です。保証期間は、精神疾患の場合は3年、身体的な病気やケガの場合は65歳の誕生日までとしているため、経済的な心配をせずに闘病に専念できるわけです。さらに、2021年度から介護休業時の給与も補償の対象にするなどより手厚いサポートを目指しています。

(2)休職者管理・復職支援システム
 休業中の従業員との連絡や休業者の管理業務を一括で行えるシステムです。情報提供ツールとしての役割も果たし、会社の組織人事や重要な制度改定、休職中も享受できる福利厚生の案内など、社員間に情報格差が生まれないよう努めています。また、独自に開発したリワークプログラムをオンラインで受けられるようにすることで、精神的な不調で休職している従業員の円滑な職場復帰をサポートしています。

(3)産業保健専門家による支援強化
 社員として採用している保健師と、当社の産業医が連携しながら、健康リスクを抱える従業員一人ひとりの直接支援に注力しています。残業が月45時間超えの従業員には「疲労度チェックアンケート」を実施し、中でも疲労度が高い従業員には保健師・産業医との面談を設定しました。そもそも月の残業時間が70時間を超える社員は全員、産業医と面談しています。
 また、健康診断の結果を基にした保健師との面談を、2年に1度は全社員が受けられるようスケジュールしています。さらに、特定保健指導の面談実施率を上げるべく、個別の働きかけを強化中です。傷病休職明けの復職者は、就業制限がなくなるまで定期的に保健師と産業医が面談し、回復状況や就業上の配慮について上司と連携しています。

(4)独自の健康診断支援
 ABC検診(ピロリ菌検査)・子宮がん検診・乳がん検診の補助を行うほか、歯科検診の補助金を年1回、3,000円(税別)支給し、未然予防、早期発見を促しています。

(5)復職支援
 傷病の再発を防止し安心して働いてもらえるように、専用プログラムを組んで復職を支援しています。注力しているのは、「復職訓練」「復職先職場への受け入れガイダンス」「復職後のカウンセリング推奨」の実施で、再発防止に寄与していると実感しています。

(6)リテラシー向上
 疾病予防・生活習慣の改善を目的としたeラーニングコンテンツを作成・提供。さらに、社員自らが健康増進のための取り組みを「宣言」するよう促しています。
 また、闘病中の当事者だけでなく、健康な人、健康に不安がある人、それを支える上司・同僚のリテラシー向上のために「病気治療と仕事の両立支援セミナー」を開催しています。

(7)制度の拡充
①長期間の私傷病休職制度
 多くの疾病の闘病期間をカバーできる長期の休職制度を導入。休職期間は、勤続年数1年未満は1年6か月、勤続年数1年〜5年は2年、勤続年数5年以上は2年6か月としています。

②病気休暇・新型コロナワクチンの副反応休暇
 病気療養や通院に活用できる有給の「病気休暇」を年6日付与しています。半日単位でも取得可能で、取得に際して診断書の提出は不要です。また、新型コロナワクチンの副反応休暇(1回につき2日まで)を有給で設置し、ワクチン接種しやすい環境を整備しました。

③有給休暇の時間単位取得・時差出勤
 1時間単位で有給休暇を取得できるようにすることで、通院や急な治療に対応しやすくしています。時差出勤は、出社・在宅勤務にかかわらず認めており、通院だけでなく満員電車を避けることにも活用されています。

④テレワーク推進
 在宅勤務やワーケーションを一定の条件下(自立していて生産性を担保でき、顧客との契約を妨げない範囲)で推奨することで、身体の負担軽減や時間の有効活用に役立ててもらっています。

4.取組における工夫

(1) 社内外に向けて積極的に情報開示する
 まず、コーポレートメッセージや健康経営特設ページで健康経営を宣言しています。さらに健康経営の取り組み状況から最終的な目標指標までを「戦略マップ」として全て公開。また、健康経営度調査票をはじめ人的資本の開示が求められる風潮が高まっていることから、情報開示戦略を立て積極的に公開しています。

(2) 効果を常にモニタリングし、改善を繰り返す
 健康経営のKPIを設定し、具体的な数値目標まで落とし込んでいます。また、従業員の健康に関してデータを収集し、数値を把握・分析。その際、自社のDXプラットフォームを利用することで、各種データを一元管理し効率化を図っています。

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(3) 従業員の主体的な取り組みにする
 トップに言われるからやるのではなく、従業員の主体的な取り組みになるように工夫しています。具体的には、自ら健康課題について考える機会を提供するために「ヘルス☆アップ研修&ワークショップ」を開催しました。健康診断結果を振り返ったり、良質な生活習慣を学んだりする機会を創出し、具体的なアクションプランの作成まで行っています。
 また、従業員の意見を定期的に拾い上げる場の設定や有志チーム(ARMミライ☆元気プロジェクト)の活動支援など会社と従業員が一体となる取り組みを目指しています。

4.これまでの効果と今後の課題

(1)これまでの効果
 まずGLTD制度を利用した社員からは「この制度のおかげで経済的にもだが、精神的にとても救われた」との言葉があり、導入の効果を実感しています。
 また、経済産業省が毎年実施している「健康経営度調査」で2021年の健康経営の取り組みが評価され、「健康経営銘柄2022」に初選出していただきました。さらに「健康経営優良法人(ホワイト500)」に5年連続認定。健康経営支援を事業にしており、「自社でも健康経営を体現しなければ」という強い思いで取り組んできたことを評価していただいたことには意義があると感じています。
 「健康経営度調査」では、年々評価が上がっています。毎年の健康経営度調査フィードバックから自社の強み・弱みを把握し、次年度に向けた改善計画を積み重ねた結果です。5年前と比較して評価が15以上改善した項目もありました。特に、「経営理念・方針の浸透」「組織体制」などの評価にその結果が出てきていると感じています。
 当社の企業規模では、健康経営にかけられる予算や人員には限界がありますが、その中でもできることに優先順位をつけて地道に取り組んできました。また、当社の経営陣、従業員は、健康経営に主体的かつ意識高く取り組む方が多いのが特長です。そうした企業風土もあり、推進しやすい状況にあったことも大きな要因の一つだと感じています。

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出典:経済産業省「令和3年度健康経営度調査」

(2)今後の課題
 闘病中・復職の支援は相当整えておりますので、今後は「疾病予防」にさらに力を入れていきます。会社にできる疾病予防策は、社員のヘルスリテラシーを高め、良い生活習慣を根付かせ、疾病リスクを下げることです。疾病予防することで、当社が大事にしている「社員のウェルビーイングやエンゲージメントの向上」はもとより、「会社の生産性の向上」にも寄与すると確信しています。
 良い生活習慣を根付かせるためには、「認知行動療法」が役立つと考えています。認知行動療法とは、対象者の思考や行動の癖を把握し、そのパターンを整えて行動変容を促していく治療方法のことです。
 例えば、「職場で同僚に挨拶をしたのに返事がなかった」というある出来事に対し、「無視されてしまった。私は嫌われているかもしれない」と捉える(認知する)人もいれば、「挨拶の声が小さくて聞こえなかったのかもしれない」と捉える人もいます。前者の場合は、次回以降も無視されることを恐れて「挨拶をしない」という行動をとってしまいますが、後者の場合は「今度は相手に気づくように挨拶をしてみよう」という行動につながります。認知行動療法では、自分が陥りやすい思考の癖を捉え、その後の行動にどう影響をもたらしているのか、「認知」と「行動」の両方からアプローチをします。認知行動療法は当社の得意領域でもありますので、専門性を活かしつつ取り組んでまいります。

引用・参考資料
(1)経済産業省「令和3年度健康経営度調査」

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220315004/20220315004.html

(2)アドバンテッジJOURNAL「生活習慣を改善するための認知行動療法メソッドとは?」

https://www.armg.jp/journal/211-2/

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