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事例9:株式会社ディー・エヌ・エー

睡眠改善を促し、従業員のヘルスリテラシーを向上させる

株式会社ディー・エヌ・エー

1.企業概要

設立年 :1999年
所在地 :東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
従業員数 :連結:2,897名(単体:1,397名)(2024年3月末時点)
事業内容 :DeNAは、「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」というミッションのもと、ゲーム、ライブコミュニティ、スポーツ・まちづくり、ヘルスケア・メディカルなど幅広く事業を展開していることが特長です。創業以来、挑戦心あふれる社員の強い情熱と高い技術力を中軸に数々の事業を生み出してきました。事業価値の最大化と課題解決のためのAI活用と独自のデータ分析手法によって、顧客ニーズを的確に捉えた付加価値の高いサービス開発から運用までを行っています。

2.取組の背景

当社では2016年に社員の健康サポートを行う専門部署CHO(Chief Health Officer)室が設置されました。CHO室は従業員が健康に働いてもらうためのサポートをしたいという考えのもと、食事、運動、睡眠、メンタルの4分野を主軸に従業員のヘルスリテラシー向上につながる取り組みを企画、実施しています。2016年以前、従業員が遅い時間帯まで残業をし、翌日の早朝には出勤している状況がしばしば見られました。従業員の仕事へのモチベーションに問題は感じられませんでしたが、中長期的に考えたときに従業員のヘルスリテラシーの向上、特に睡眠の改善は会社として重要なテーマだと感じました。睡眠は健康の基盤と考え、各従業員に正しい知識を持って自分の睡眠をコントロールして欲しいと考えましたが、それは従業員の睡眠改善を眠気による仕事のパフォーマンスの低下を防止するというような短期的な問題とは考えていません。むしろ従業員の健康改善と生活の質の向上は、各人の人生をより豊かなものとするという信念を持ち、長期的な目線で従業員のヘルスリテラシーの向上、特に睡眠の改善に取り組むこととにしました。

3.取組内容

CHO室では設立当初より従業員に対して年に一度、ライフスタイルアンケートを実施しており、質問項目には睡眠に関する項目も複数設けています。その結果から、半数以上の従業員が睡眠に課題を感じている事や睡眠時間は1日の3分の1の時間を占めるため、より質の高い睡眠を取りたいと願っている従業員が多いこともわかりました。それで2016年の設立当時から睡眠の専門家である産業医師や、睡眠を研究している企業と連携して定期的に社内セミナーを開催しています。睡眠については一般に、学校や他の場所から学ぶ機会が少ないと感じていた従業員から、評判の良いセミナーとなっています。2017年〜2019年には新卒研修でも睡眠についてのプログラムを取り入れました。新卒従業員は大学生活から社会人に変化するタイミングでもあり、ライフスタイルを調整する必要があります。そのタイミングの初期に食事の管理や腰痛防止策、精神面での安定を保つことに加えて、睡眠を自己管理することが業務のパフォーマンス向上に繋がり、ビジネスパーソンとして大事なことであると強調しています。また、当方自身もアクティブスリープ指導師の資格を取得し、従業員1人ひとりが睡眠の自己管理を積極的に行えるように、社内の睡眠に関する取り組みに学んだ知識を活かしています。2018年には、質の高い睡眠の重要な要素のひとつでもある寝具に対する関心が高い従業員が多いことに気が付き、寝具メーカーと共同し「快眠の秘訣セミナー」を開催しました。

他の従業員の健康向上施策に関しては、リモートワークが中心の業務となっていますが、社内部活動としてオンライン料理教室や、食事に関するセミナーを開催し、自宅で業務を行いながら健康に良い食事をどのように管理するかについて講義も行っています。さらに社内で従業員がウォーキングを行う時にも、従業員同士がコミュニケーションを取りながらウォーキングを行えるような健康管理アプリなどのソリューションを導入しています。そうすることで、楽しくワクワクする施策と共に、社員が最高のパフォーマンスを維持できるマインドや仕組みづくりを行いたいと考えています。

2023年度には希望する従業員の睡眠タイプ診断を行い、朝方、夜型について各従業員が自身で認識できるようにしたり、スマートウォッチを利用して睡眠の見える化に取り組んでいます。

従業員のSAS(睡眠時無呼吸症候群)については、以前は特定の人の病気であるとの認識から特に研修で扱うことはなかったのですが、2022年頃からSASについて一般の話題として取り上げられることが多くなったと感じています。SASがメディアで取り上げられたりする中で不安に感じる従業員が多くなっていることも認識しました。また、当社の睡眠セミナー前に講師に聞いてみたい質問を従業員にアンケートしたのですが、SAS関連の質問が多くなってきたことも観察されましたので、当社の睡眠に関するセミナーの中でSASについても扱うことが決定しました。しかしSASは単なる睡眠不足とは異なり、医療機関への受診や検査・治療が必要になります。それで当社ではセミナーで知識を共有することに加えて、従業員がSAS診療、検査を受けるための費用補助を行っています。

当社では就業時間のコアタイムがなく、平日と休日の時間単位で勤務日の振替が可能になるなど、社員一人ひとりが自分のライフスタイルにあわせて働く時間を決められるスーパーフレックスタイム制度が導入されており、一か月単位での就業時間を満たせば上長と相談のうえで勤務時間を調整できるようになっています。平日の勤務時間を土日に振り替えることが可能ですし、「中抜けも許可」しています。そのため従業員は自分の健康管理のために病院に行ったり、その他の健康促進活動をしたりしやすい体制を取っています。

4.これまでの効果と、今後の課題

現在、セミナー開催後に実施する参加者アンケートにおいて、ほぼ全ての参加者から、セミナー内で学んだ知識を実際にその日から取り入れてみたいとの回答が得られており、有益なセミナーによって現実的な成果を上げることができていると実感しています。当社はエンターテインメントに関する事業も多く、楽しい、便利、面白いといった気持ちをモチベーションに人が自発的に動くことを大切にしていますが、従業員に対しても楽しんでヘルスリテラシーを向上して欲しいと願っています。そのために、敢えて「健康」という言葉を押し付けないようにするなどの工夫をしています。

従業員の睡眠状況については新型コロナウイルス蔓延期以前のオフィス出社が前提であった頃と比較すると、健康診断の問診の結果は非常に良くなっています。現在はリモートワークが中心となりオフィスへの出勤時間が無くなったことも大きな要因なのかもしれません。一方で、ライフスタイルアンケートでは睡眠に悩みがあると答える従業員の割合に大きな変化は見られていません。内容は寝付けない、一度起きたら眠れない、疲れが取れないなど内容が様々となっていますが、専門家のセミナー講師によると個人の主観と実際の生体データが一致していないケースは多くあることが最近の研究でわかってきているそうです。データ上で睡眠がとれている場合は必要以上の不安を覚える必要がないという点を従業員にも認知してもらうことも睡眠改善の一歩になるのではないかと思います。

今後とも、睡眠に関する事をはじめ、従業員のヘルスリテラシーの向上のために改善を重ねたいと考えています。

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