ページの先頭

ページ内移動用のリンク

ヘッダーメニューへ移動

グローバルナビゲーションへ移動

本文へ移動

フッターメニューへ移動

体験談1:Hさん

社内の医療サービスを活用してがん治療と仕事を両立

【プロフィール】
性別・年齢:男性・40代
勤務先の事業内容:医療関連サービスおよびEAP関連サービス
従業員規模:260名
職務:サービス企画室マネージャー
家族構成:配偶者・子ども2人
居住地:千葉県

1.治療内容

 現在の会社に転職して数年後の2017年12月に、医師から中咽頭がんの告知を受けました。最初に首の腫れに気づいて耳鼻咽喉科にかかり、その後、総合病院での精密検査を勧められました。検査をおこなった時にはステージ4のがんで、既に頚部リンパにも転移し、進行すれば臓器にも転移してしまうかもしれないという状況でした。まだ、38歳の自分がなぜがんになってしまうのか、もう仕事はできないのか、子どもはまだ7歳と4歳なのにこの先家族はどうなってしまうんだろう等々、不安と絶望感が頭の中で渦巻きましたが、一刻の猶予もなくがんの治療を始めなければならない状況でした。
 休職して入院し、抗がん剤治療と放射線治療を受けました。治療に専念したおかげもあり、2018年9月に病巣が消滅し復職することができました。今は経過観察中です。また放射線治療を行っていたので口の中のケアが必要となり、歯医者にも通っています。

2.勤務先の支援体制、利用状況

 がん判明後、最初に会社の上司に相談しました。上司は「とにかく病気を治すことに専念しなさい。治療と仕事の両立のための支援は会社をあげて全力でするし、戻って来られるように席を空けておくから」と言ってくれました。休職するときに、病気のことを社内で公にするかしないかは悩むところでしたが、知っている人と知らない人がいるのは気持ちが悪いのでオープンにしました。同僚からは励ましの寄せ書きをもらったり、復職したときには「よく戻ってきたね」と社長をはじめ会社全体で快く受け入れてくれたのが嬉しかったです。
 復職した部署には、休職前に所属していた部署の上司がおり、心強かったです。前の部署では中心的な役割を担っていたため、抜けることはできませんでしたが、今の部署は私が1日休んでも、後日カバーできるような部署なので、働きやすい環境を配慮してくれたのだと思います。
 仕事が続けられているのは、会社の制度のおかげです。幸いにも、会社は医療関連のサービスを事業として行っているため、がん治療と仕事の両立支援の制度が充実しています。
 検査日と1週間後の検査結果が出る日の月2日間は治療休暇制度を利用しています。また、臨床心理士などの相談スタッフによるメンタルヘルスカウンセリング、がんのことについて総合的に相談できる先生を紹介してくれたり、自分の症状にあった専門医の情報が相談できるセカンドオピニオン相談サービスを利用したほか、残業抑制や体調に合わせた業務量の調整、自己裁量のある部署への転換などのサポートもありました。人事部からは復職の方法、がん治療休暇利用について、傷病手当金、高額療養費制度の申請方法などについてアドバイスや継続的なサポートもあり、上司との月1回ほどの面談で体調について話すことができています。

3.協力者との関係

 会社の福利厚生として利用できるメンタルカウンセリングは、がんになる前から利用しておりカウンセラーと信頼関係が築けていたため、上司にも家族にも言えない相談や、家族への伝え方についても相談に乗ってもらうことができました。「あなたも辛いだろうけれど、奥さんも大変。でも絆が深まることもあるから」と、励ましてくれ、精神的に追い詰められずに済みました。
 妻には共働きにもかかわらず家事のほとんどを負担してもらったり、子どもの遊び相手、入院時にはほぼ毎日のお見舞いと洗濯衣類の持ち帰りなど多くの負担をかけてしまいました。
 自分の状況を包み隠さず周囲に伝えることで、協力してもらいやすくなったと思います。闘病中の思いや治療の様子を書き込むブログを始めたところ、応援の声を多数もらい、励まされ、治療へのモチベーションも高まりました。

4.両立のコツ

 上司との情報交換を密にすることで、協力してもらえる体制を作るよう心掛けました。周囲には、治療前から復職に至るまで、できるだけ自分の状況を包み隠さずに伝えました。自分の病気のことを知られてしまうのは悩むところですが、オープンにしていなかったら現在の状況はありませんでした。日頃から信頼関係を築いておくことの重要性を実感しました。復職後は自分から「もし万一のことがあったら相談していいですか。その代わり出来るところまでは全力でやります」と伝えるようにしました。
 制度があっても、利用しやすい環境になっていなければ円滑な活用につながりません。温かく応援してくれる職場のメンバーや、復職を受け入れてくれる人たちの存在は大きいです。
 決して無理をしないで、休むときは休むようにしていますが、病気に甘えずに、できることは全力で行なう姿勢を見せ、行動するようにしています。

5.両立の悩み

 再発・転移の不安が常につきまとっています。5年経ったら寛解、寛解に至ってからも完治ではありません。
 仕方ないのかもしれませんが、体調面の不安から、100%業務を任せてもらえない感覚があります。収入減少がなかなか元に戻らないことも悩みです。

6.病気治療をする労働者へのアドバイス

 病気のことを話したくない人は多くいると思いますが、自分一人でできることは限られているので、できるだけ多くの人と関わり、話を聞いてもらうことが大切だと思います。話を聞いてもらうだけで心が安らぐし、自分自身の安心につながります。支援も受けられるでしょう。風通しの良い職場でないと自分の病気をオープンにしにくいかもしれませんので、日頃のコミュニケーションが重要です。
 復職直後は私も無力感がありました。例えば、当たり前のメールひとつ書くにも手間取ってしまい、自信をなくし不安感を抱いてしまいました。でもこのような経験をした自分を受け入れ、自分にしかできないことがあるはずだと考えることです。その経験をプラスに捉えて頑張ることによって、周りのサポートが受けられ、支えてくれます。その人なりの活躍の仕方があるので時間をかけて無理せず、頑張って欲しいと思います。
 私は、所属部署での仕事の他に、治療と仕事の両立の体験を研修でお話ししたり記事に書いたり、という新しいキャリアの構築を進めています。ユーザー向けの冊子にも連載させてもらったり、「がん対策推進企業アクション」(厚生労働省委託事業)の認定講師としても活動しています。自分の中では手探りですが、体験してきたことを広く伝えたいと思っています。
 2人に1人ががんになる時代です。働いているあらゆる人ががんになったり病気になったりする可能性があります。万が一のことがあっても、会社の支援制度を使って安心して治療に立ち向かえ、仕事に復帰できることを願っています。

ここからフッターメニューです