ページの先頭

ページ内移動用のリンク

ヘッダーメニューへ移動

グローバルナビゲーションへ移動

本文へ移動

フッターメニューへ移動

体験談4:Sさん

素直に周囲に頼ることで、一人暮らしでも病気治療と仕事を両立

【プロフィール】
性別・年齢:女性・40代
勤務先の事業内容:建設業
従業員規模:50名
職務:建築の積算業務補助
家族構成:一人
居住地:福岡県(治療開始時は東京都)

1.治療内容

 もともと30代に受けた卵巣嚢腫手術の経過観察のため、かかりつけ医の婦人科と内科に通っていました。そんななか、強い腹痛を感じたため内科でレントゲン検査をすると、よくないものが写っているとのことで、大きな病院へ行くことになりました。
 最初は腸閉塞が原因とされ、そのまま入院することになったのですが、詳しい検査をしていくと虫垂に病巣があることがわかりました。腸閉塞の治療で管が入っていて飲食が出来ない状態だったので、まずはご飯が食べられるように手術をして病巣を取り除きましょうということになりました。2015年10月の頃です。
 そこから外科で対応してもらうことになりました。その病院は先進医療も行っている病院でしたが、私が入っていた保険が先進医療に対応していなかったのと費用がかさむということで、院内のセカンドオピニオンという形で他の先生にも相談しました。その先生は「まだ若いし、体力も残っているので、抗がん剤を併用しながら悪いところがあれば切ればいいのでは」とアドバイスしてくださいました。そういうことを言ってくれる先生もいるんだなと思いました。今ここで無理をしてお金が続かなくなったり、病巣が残ったまま治療を続けるのも不安だと思い、標準的な治療を選びました。2015年10月上旬に入院し、手術は10月の下旬、短い期間にいろいろ決めなくてはいけなくて大変でした。人工肛門になるかもしれないと言われていましたが、腹腔鏡手術が成功し、人工肛門の必要のない状態になりました。術後の経過も良く、3週間余りで退院。その当時の会社は家から近く、テレワークの導入もあったのですぐに職場復帰できました。
 ただ、翌年に会社の組織改編で部署がなくなるとのことで退社しました。抗がん剤治療で体調の変化があるためいったん治療に専念し、念願だったボランティア活動(知的障害がある方の施設でのお手伝い)に月2回ほど参加していました。1年ほど治療に専念した後、ボランティア施設の職員の方からここで働かないかと誘われ、そのまま就職しました。その後、あまりに忙しいのと体調が不安定になったことから退職を考え始めました。そんな時、地元の福岡の知人から別の会社(現在の会社)に誘われ、2019年1月に東京から引越しました。
 治療は6年目に入っていて、輸血が必要なこともありますが、私の場合は自分に合う抗がん剤が見つかり、あまり身体の負担なく続けられています。近年、抗がん剤の吐き気止めの精度が相当上がっているそうです。痛みについても我慢せず、痛み止めでコントロールしながら、高パフォーマンスで働くことができています。新しい病院の先生とのコミュニケーションも上手くいき、今は安心して治療を続けています。

2.勤務先の支援体制、利用状況

 病気発覚後、現在3つ目の会社に勤めています。
 1つ目の会社は、病気がわかった時にすぐ会社の上席の男性社員と仲良くしている3人の同僚に報告しました。着の身着のままで入院したので、同僚の人達に自宅に行ってもらい、必要なものを届けてもらいました。手術を受けた病院と会社も近いことから、同僚がかなり手助けをしてくれました。
 退院後は、会社がSOHO(今で言うテレワーク)を導入している企業だったため、無理のない範囲で仕事をしてみないかと言ってもらい、仕事を再開しました。少しずつ在宅で勤務時間を延ばしていき、調子がいい時は週に3回フルタイムで働いたり、調子が悪いとお休みをいただきながら、無理をせず働くことができました。
 給与面では、最初に有給休暇を消化し、入院からその後の休んだ分は傷病手当金が出ました。週5日働けなかった時には給与は少し目減りしましたが、1人暮らしなので経済的には困窮することはなかったです。
 2つ目の会社は、知的障害の方々がつくったアート作品を国内外で展示する業務を担っていて、そこの常勤の事務として忙しい日々を送りました。通院で平日に休みをとらなくてはいけない時には、土日のどちらかに出社するなどして出勤を調整しながら働くことができました。
 現在勤めている3つ目の会社は、東京から引っ越してくるということで社宅を用意してくださいました。フレックス制を導入することになり、月のうちに140時間出勤していたらOKということになり、これまでよりも勤務時間を調整しやすく働きやすい環境になりました。会社側も「やることをやってくれたらいいんだよ」と寛大な姿勢なのもありがたいです。一緒に働いている同僚が子育て中で、勤務中に少し抜けてお子さんの用事を済ませたりと、皆が仕事との両立を図りながら働いているので、私だけが病気治療で大変といった雰囲気でもないのも助かります。体調が悪い時は、通勤に使う車の中で休ませてもらうことも認めてもらっています。小規模な会社なのでしっかりとした病気治療に関する制度が整ってはいませんが、その分、調子が悪いところは大目に見ようか、といった風土があります。

3.協力者との関係

 入院先のがん相談支援センターのソーシャルワーカーさんに会社のこと等も相談していました。1つ目の会社を辞める時にどうしようかと相談すると、退職後も要件を満たせば一定期間(私の場合は手術をした10月~翌2月迄)は傷病手当金が受給できることを知りました。この支援を受けられたのは、大変助かりました。
 東京から福岡に引っ越す時も、そのソーシャルワーカーさんに相談し、今と同レベルの治療(月に2回の点滴)が受けられる病院を選んでもらいました。その病院は自分でも会社の近くで通えるところとして候補に挙げていた病院の一つだったので助かりました。新しい病院へは治療のデータが収められたCDを持参するだけで、引継ぎも上手くいきました。新しい病院でも先生の他に、看護師さんにもいろいろ相談しながら、薬や治療の知識などを増やしていきました。私の場合は、1人暮らしなので自分自身が治療についてしっかり理解している必要がありました。
 また、現在の仕事を紹介してくれた知人には、何でも話すことができ、支えてもらっています。

4.両立のコツ

 1年間、治療に専念していた時に、毎日の体調の記録をつけていました。治療の後に、この日は大丈夫、この日は下痢がひどいなどを記入しておくことで、自分のバイオリズムがわかってきました。それがわかると、この辺りは体調が悪くなりやすいので重めのお仕事は無理かも、この時期なら体調が良さそうなので仕事でも無理が効くなど、自分の出来る範囲で仕事の調整が可能になりました。一緒に働く人達の負担になるだけでは仕事は続かないので、正直に自分の体調を伝えておくと働きやすいと思います。一人ひとり、治療や薬、気圧、気温などによって体調は変わってくるものなので、自分の体調にきちんと耳を澄まして身体にどんな影響がでるか知っておくことが大切です。自分が出来ること、出来ないことを伝えられる方とコミュニケーションをとりながら仕事ができると、ストレスなく長く働けると思います。

5.両立の悩み

 「働かせてもらっている」と必要以上に思ってしまうと、自分の体調が悪いことに目をつぶって頑張り過ぎてしまい、結局は仕事を長く続けられないことになります。意識を変えて、自分が病気になったから同じように病気になった方々にその情報を提供できる、といったようにアピールポイントとして捉えていくことが大事だと思っています。社内で困っている人の相談役にもなれる可能性もあるので、私は病気をあまりマイナスに見ないようにしています。

6.病気治療をする労働者へのアドバイス

 出来るだけ、自分の身体に嘘をつかずに、困っていたらお医者さんや気兼ねなく言える人に素直に話して気持ちをラクにしてほしいと思います。一人で抱え込まないでほしいです。
 特に1人暮らしで病気治療をしている方は、いろいろなアプローチの仕方があります。相談支援センターやNPO団体、患者会などもあります。ただ、自分に合うか合わないかはあると思うので、違うなと思ったら「はい、次」と相談先を変えていいと思います。病気をしていることは、大変なことなのであまり強がらないこと。社会支援もいろいろありますので、頼れるものはしっかり頼っていきましょう。

ここからフッターメニューです