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仕事と子育てを関連付けて充実した日々を過ごす
~長期にわたる子育てを支える育児介護休業法の諸制度と子育て・仕事への良い影響~

コラム

仕事と子育てを関連付けて充実した日々を過ごす
~長期にわたる子育てを支える育児介護休業法の諸制度と子育て・仕事への良い影響~

高村 静(中央大学大学院戦略経営研究科准教授)
平成30年度取材

ここでは仕事と子育てを両立することのメリットと、それを可能にする諸制度について見ていきたいと思います。前半では子供の成長の経過に応じて必要となる親の関わりとそれを支える諸制度、および親が両立を続けることで子どもの成長の助けとなると考えられる点について見ていきます。後半では子育てが仕事に対して助けになると考えられる点について見ていきたいと思います。

子どもの成長と親の成長

子どもの誕生によって生じる親としての責任。そして喜び。子どもにとって最も身近で親密な立場の大人として、実際に育児に関わっていくことから得られるものは大きいでしょう。子どもの成長の過程に自分自身のこれまでの出来事を重ねてみることで、自分自身のこと、自分と親のことなど、あらためて気づくことがたくさんあると思います。また子どもの成長に合わせた親としての関わり方の変化を考えていくことによって、成人として成長する自分自身に気づくこともあると思います。
 このように、子育てとは乳幼児期の子どもへの関わりだけをいうのではなく、長く続く子どもの成長過程全体への親としての関わり合い全体をいうのだと思います。さらに、成長するのは必ずしも子どもばかりでなく、子育てに関わる親にも成長の機会をもたらしてくれるものだと思います。

子どもの成長過程と育児・介護休業法の諸制度

日々、驚くべき勢いで成長を見せる乳幼児期。すべてを周りの大人に頼らざるを得ないこの時期、大人がそばにいて、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。泣くことで要求を伝えようとする子どもですが、その要求が受け入れられることによって大人あるいは人間への信頼感を築いていくとされています。育児・介護休業法では一定の条件を満たす、原則として1歳までの子を養育する労働者は育児休業を申し出ることができ、事業主はこれを拒むことはできないとされています。

※育児休業制度
 子が1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで(父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間の1年間<パパ・ママ育休プラス>)、申出により育児休業の取得が可能。また、産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても申出により再度の育児休業取得が可能<パパ休暇>な制度。

やがて成長とともに歩き、言葉を覚え、接する人の範囲が広がります。友だちと遊び、接する大人の範囲も広がり、地域や学校へと行動の範囲を広げていくことになります。大人の関わりとしては乳幼児期のようにつききりでそばにいることから、その都度、子供の成長に合わせた環境や情報を提供し続けていくことが大切になっていきます。友だちとのかかわりを育む場でもある保育園などへの送迎、親子での行事やイベントへの参加などが大切になりますが、3歳までの子を養育する場合には、育児・介護休業法の短時間勤務制度や所定外労働時間の制限を申し出ることができます。
また、小学校入学までの子どもの通院や療養の付き添い、病気の予防を図るために、看護休暇を半日単位で取得することができます。

※短時間勤務制度
 3歳に達するまでの子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる短時間勤務の措置(1日原則6時間)を義務づけている。

※所定外労働時間制限
 3歳に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、所定外労働を制限する。

※看護休暇
 小学校就学前までの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日を限度として看護休暇の取得が可能。半日単位での取得も可能である。

仕事と子育ての両立:子どもにとって

さて、子どもはやがて自立の時期を迎えます。自分の存在意義を模索しながら共同体の中に居場所を見つけ、さらに自分自身を深く見つめながら生育家庭とは異なった社会や組織に適応し、独立をしていきます。子どもと親との関係性、親が子どもに対してできることもまた大きく変化をします。社会や組織の規律や文化を伝え、適応を手助けすることが大切になるでしょう。
 この時、親自身が社会や組織の一員として過ごしてきた経験、その内部の価値感を伝えていくこと、それらの支援が特別な意味を持つでしょう。親自身が社会人・組織人であることは子どもの独立にとっても大きな手助けとなるでしょう。

仕事と子育ての両立:親にとって

子どもの成長の過程への関わり方は千差万別でしょうが、そこからもたらされる成長は子供にとってだけのものではなく、親にとってもまた貴重な経験となるでしょう。
 子どもとのやりとりを通して自身が当然と思っていたものの価値を再認識することは、自身の価値観や個性、パーソナリティの再確認につながりますし、夫婦間で認め合うことは、お互いへの理解が深まり、より親密な関係性へと発展する可能性があります。
 仕事と子育てを両立することは、仕事で得られる満足や成長という軸に加えて、親として得られる満足や成長という新しい軸が加わることでもあります。両立しようとすることで、時にやりくりの困難が生じることがありますが、やりくりの経験が、さらに成長をもたらすという面もあります。どちらかの軸で成長が得にくい時期にも、もう片方の軸で成長を感じることもできるでしょう。

仕事と子育ての両立:仕事にとって

ここまで、仕事と子育ての両立が子どもの成長や親自身の成長にもたらす可能性、それを支える制度を見てきました。仕事と子育ての双方を経験することの、仕事に与える影響についても少し考えてみます。仕事と子育ては、異なる場所で行われることが多く、両者は異なることだと考えられがちですが、どちらを行うのも同じ個人。両立をする個人の中で両者が密接に結びついているのはある意味で自然です。
 内閣府経済社会総合研究所のワーキングペーパーとして公表された報告書「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」1 は5年以内に第1子が誕生した男性(育児休業を取得した人:469人、取得しなかった人:5,252人)を対象に実施した調査を分析しています。ここでは育児休業を取得した人の方が不要なミーティングを減らしたり、手順・手続きの簡略化を行うなどの仕事上の工夫や、効率良く仕事をする心掛けをしていることが示されました。また会社への帰属意識や好感度が高まったと回答する人の割合が、育児休業を取得していない男性よりもそれぞれ高いことも示されました。
 このような働き方や企業への意識ということの他に、仕事の内容そのものに与える影響も考えられます。たとえばアップルコンピュータの創業者であるスティーブ・ジョブズにNHKがインタビューした内容2 が『Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言』(NHKスペシャル取材班、2012年、講談社)という書籍に収められています。ジョブズが自身の子どもを撮影しそれを編集してつなげ、字幕も入れて、好きな音楽を選んでサウンドトラックを編集し、3分の短い映画を作った逸話が語られています。「それを妻に見せたら、感動して泣きだしてしまったんです」(P30)。そしてアップル社の製品を作って使って映画を作る100万人の人々の作品について、出来栄えにかかわらずどれも感動的な作品だと述べています。「感情を伝え合う」新しい役割をコンピューターに与えた彼の発想の原点に家族があったのではないかと感じさせるエピソードです。仕事と子育てを行うのはともに同じ個人であればこそ、生活で生まれるインスピレーションが仕事に大きな変化をもたらしうる、そうしたことは誰の経験にもあるのではないでしょうか。

  1. 内閣府経済社会総合研究所New ESRI Working Paper No.39「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」(2017年3月)
  2. 2001年3月29日放送の「クローズアップ現代『パソコン界の先駆者 そのベンチャー精神に迫る』」インタビュアーは国谷裕子氏。
充充実した生活に向け、自分に合った制度の利用を

紹介してきたように、仕事と両立にはいくつかのメリットがあります。子育ては長い期間にわたるものですが、子どもの成長にあわせ長期間にわたって利用できるよう、育児・介護休業法にはいくつかの制度が用意されていますので、仕事と子育てとを有意義に関連付けながら、皆さんお一人お一人の置かれた仕事や生活・家族の状況に応じて上手に制度を利用し、充実した日々を送っていただけたらと思います。
 また事業主の皆ささまにも、ぜひ、仕事へのよい影響に目を向けていただき、会社の中での積極的な制度の利用を進めていただければと思います。

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