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育児と仕事の両立について、企業が取り組むべきこととは

コラム

育児と仕事の両立について、企業が取り組むべきこととは

普光院亜紀(保育園を考える親の会代表)
平成30年度取材

  今、日本の1・2歳児の47.0%が認可の保育施設に通っています(厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ」平成 30 年4月1日 )。認可の保育施設に入れず、認可外保育施設に通っている子どもいます。それだけ、子どもが生まれても共働きを続けている家庭が多いということになります。
  1990年代に、被雇用者の共働き世帯数が専業主婦世帯数を抜いて以来、「共働き化」はハイスピードで進んできました。もちろん、まず女性が仕事を持ち続けることを当たり前と考えるようになったことがありますが、所得が伸び悩む中、子どもを育てる生活はダブルインカムでないと苦しいと考える男女が増えていることも大きいと思います。

保育事情を配慮した復帰体制を

 仕事と子育てを両立するためになくてはならないのが、安心して子どもを託すことができる保育園です。保育園にもさまざまな種類がありますが、最も人気が高いのが認可保育園です。認可保育園は国の基準を満たし、国・自治体からの給付費を受けて運営されています。認可の保育施設としては、認可保育園のほかに認定こども園、小規模保育、家庭的保育などがあります。
  東京都は、これらの認可保育施設が満員で入れないという「待機児童問題」が全国で最も深刻な地域です。この厳しい入園事情のため、育児休業からの復帰時期が不確定になったり、突然、育児休業を延長しなければならなくなったりすることが起こります。
  保育施設は年長児が進学する4月が入れ替わりの時期になります。そのため育児休業をとる人は、1年で最も入園しやすい4月を復帰時期に選ぶのが普通です。その場合、子どもが0歳の4月もしくは1歳の4月を目指すことになります。1歳児クラスよりも0歳児クラスの方が入りやすいという一般的な傾向を聞いて、育児休業を切り上げて0歳4月での入園を目指す人も少なくありません。ただ、子どもの生まれ月によっては、0歳4月ではまだ子どもが小さすぎると不安を感じる方が多いはずです。その場合は、1歳での復帰を目指すことになります。年度途中で1歳に達する場合には、育児休業の延長制度を利用します。1歳の時点、1歳半の時点で延長を申請することができ、最長2歳までの延長が認められます。この延長制度は、法律が保障しているものなので、申請があれば会社は認めなければなりません。延長期間には育児休業給付も支給されますが、市区町村からの「認可の保育施設に入れなかった」という「不承諾通知」を証拠として提出しなければならないので、注意が必要です(自治体により「入所保留通知」などとも言う)。
  最初から4月以外(年度途中)の復帰を目指す人もいます。年度途中でも認可や認可外に空きが出る場合もあるので、空きが見つかり次第入園、復帰ということになります。
  このように復帰時期が不確定になることは、会社側としては困ることですが、保育事情や本人の希望に配慮して、できる限り柔軟に体制を整え、支援していただきたいと思います。一番つらい思いをしているのは、復帰できない当人です。この「綱渡り」の時期のサポートは、確実な復帰を促すために非常に重要です。

子育て社員の奮闘を理解して

 子育ての事情はさまざまですが、共通しているのは「子どもは思い通りにはならない」ということです。多数が協力しあって計画的・効率的に物事を進める仕事と比べると、子育ては正反対の性質を帯びています。
  とにかく計画通りにいかないことが多いのです。その最たるものが子どもの病気です。特に入園後1〜2年は感染症にかかりやすいのが普通です。保育園に呼び出されて早退する、翌日会社に来られない、ということを想定して仕事を前倒しに進めている人もいますが、それができる仕事とできない仕事があります。急に予定をキャンセルせざるを得なくなり、あちこちに頭を下げることが多くなって、心が疲れてしまう人もいます。
  子どもが病気にならなくても、子育て社員の日常は波乱万丈です。保育園にお迎えに行って連れて帰った後は「戦争」です。食事を作っている最中に子どもが泣き出して食事の準備が遅れる、やっと作った食事を自分が食べるヒマがない、お風呂に入っても自分は洗えないまま上がる……。このような「ワンオペ育児」(1人で子どものケアをする状態)は、余裕がなく苦しいものです。理想は、パートナーも早く帰ってきて、共同して家事・育児をすることですが、日本ではなかなか実現しません。
  遅くまでの延長保育がある保育施設を利用している場合、残業もできないことはないのですが、多くの子育て社員ができるだけ早くお迎えに行くようにしていると思います。それを見て、仕事への意欲が足りないと批判する人もいるようです。しかし、子育て社員が子どもと向き合う時間を保障されることはどうしても必要です。それは、子どもの権利でもあると思います。
  ちなみに、日本は「長時間保育大国」だということをご存知でしょうか。北欧は4時から5時ごろに保育施設や小学校がお迎えの車のラッシュになるそうです。パリ在住の日本人の方が、6時半まで預けているがいつもお迎えが最後だと話していました。
  今、職場にもっとも求められることは、子育てを個人の責任としないで社会全体で支える必要が生じているということ、そこに職場も含まれているということを認識することだと考えます。

育児支援制度を利用しやすく

 子育てへの理解が進み職場風土が変わること、多様な働き方が拡充すること、この2つが両輪となって進む必要があります。しかし、働き方の制度ごとには、こんな課題があると考えます。

・短時間勤務制度:ブランクが長くなる育児休業の延長よりも、子どもの状況に合わせて働き方を調整できる短時間勤務の方が助かるという人も少なくありません。また、「小1の壁」を乗り越えるため、小学校に入学しても短時間勤務を続けたいという声も多く聞かれます。一方で、短時間勤務によって昇進が遅れた、やりたい仕事ができなくなった、などの声もあります。短時間勤務でも意欲的に働けるシステムや風土づくりが必要だと思います。

・時間単位年休やフレックスタイムなど、働く時間を柔軟にできる制度も有効です。これらが使えれば、保育園からの呼び出し、通院などのために有給を使い果たさずにすみます。父親と母親で働く時間をずらして保育時間を短くしている人もいます。

・在宅勤務で助けられる人もいます。仕事内容や子どもの年齢にもよりますが、保育園や学童保育に入れなかったときに、在宅勤務でなんとか仕事をつなぐこともできます。

 これらの育児支援の制度が活かされるためには、男性の利用が促進されることが重要だと思います。男女が同じように職場の育児支援制度を利用するようになれば、マミートラック(昇進・昇格が遅れる母親社員用の進路のこと)はなくなるはずです。父親と母親が協力し合うことで、家庭での忙しさや子どもの病気なども、格段に乗り越えやすくなります。

子育てができない社会にしないために

 私が子育て社員を見てきて強く感じるのは、日本の長時間労働が子育てを圧迫しているということです。日本は「公私」の「公」が優先される国です。子どもの病気で休むというと「あなたの家庭の事情で私たちが迷惑している」と思う人が多すぎます。しかし、男女ともにもっと「私」を大切にしていい、家庭や子育てに時間を使ってもいいという価値観に変わっていかないと、少子化を克服することはできないと思います。
 働き方改革をしっかり進めて、子どもがいる人もいない人もゆとりを持てて、私生活や地域での生活、ボランティア活動などにもエネルギーを使えるようにすることによって、安心して子育てできる、持続可能な社会へと変わることができるのだと思います。

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