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事例8:株式会社コーソル
従業員1人ひとりの声を制度に反映し、働きやすい環境を実現
男性育休100%、平均58日間、「イクメン企業アワード2019」グランプリを受賞
令和三年度取材
1.企業概要
設立:2004年
所在地:東京都千代田区麹町3-7-4秩父屋ビル6階
従業員数:151名(男性91名 女性60名)
事業内容:データベースを中心としたITインフラに関する技術サービス、コンサルティング、製品販売
URL:https://cosol.jp/
2.取組の背景
当社は、データベース技術・仮想化技術に特化したサービスを提供する会社です。データベースエンジニアには、アプリケーションからインフラまで多岐にわたる知識や経験が求められます。創業当初は、そのような人材が少なかったため、新卒採用を中心とし早期から時間をかけて人材を育成してきました。ところがこれらの人材が、せっかく育って活躍してくれていたにもかかわらず、結婚・出産・育休取得を経て復帰後、給与面やキャリア観とのギャップから離職していくことが続きました。
大切に育てた人材が、出産や育児、介護その他の家庭の事情で退職してしまうことは、会社にとって大きな損失です。そのため、従業員満足度調査を行い、可能な限り従業員のニーズにこたえられるよう制度を整え、改定を繰り返しながら、仕事と家庭の両立がしやすい環境づくりを行ってきました。当初は、女性従業員を主な対象として制度を整えていきましたが、男性従業員からも制度の利用を希望する声が増えてきたことを受け、男女問わず利用しやすい制度に見直しました。その結果、男性従業員の中でも育児と仕事を両立できる者が増え、2019年には厚生労働省主催「イクメン企業アワード2019」でグランプリを受賞することができました。
女性従業員の育休取得率は2007年から連続100%であり、男性従業員の育休取得率も2021年に100%になりました。2014年~2021年における男性の育休取得平均日数は58日間となっています。
当社では企業理念に「共に解決する」を、社員行動指針の1つに「協力し合うこと」をそれぞれ掲げています。このため、当社には互いに助け合うという風土があり、育休取得者が、周囲に気兼ねすることなく育休を取り、復職できるのが当たり前という意識が根付いていたことも、高い育休取得率につながったと思います。
3.取組内容
⑴実態把握
- ①従業員満足度調査の実施(2012年~)
2012年から年1回従業員アンケートを行い、働き方や働く環境についての要望を吸い上げてきました。しかし、年1回では足りないと考え、2017年から従業員サーベイシステムを導入し、紙ベースで実施していた調査をシステム化することで、リアルタイムで社員のニーズを把握できるようにしました。 - ②全社員面談の実施(2012年~)
2012年より、全従業員が社長及び人事担当とそれぞれ年1回、1対1の面談を実施しています。時間をかけて話を聴くことで、満足度調査だけでは把握しきれない従業員の悩みや要望を収集し、きめ細かな対応ができることを目指しています。
⑵制度の整備
満足度調査や面談等で抽出された社員のニーズを反映して制度の改定を行いました。主なものは以下のとおりです。
- ①公平性や納得感のある人事評価制度の定着(2012年~)
個人のスキルや実績を人事評価に反映する「グレード制」という評価の仕組みを、2010年のトライアル導入を経て、2011年に本格的に導入しました。これにより、従業員のスキルや経験が客観的かつ正当に評価されるようになり、「育休を取ることで評価が下がるのでは」といった不安を払拭することにつながったと思います。 - ②短時間勤務制度の改定(2013年~)
短時間勤務制度の対象となる労働者の養育する子どもの年齢は、育児・介護休業法上3歳未満とされていますが、「小1の壁」という言葉があるように、3歳になったら急に子育てが楽になるというわけではありません。当社では、従業員からの要望をもとに、子どもが小学校を卒業するまで育児短時間勤務制度を利用できるよう見直しました。この制度は、15分単位で最長2時間までの時短勤務を可能とするもので、2021年度は、11人の従業員が利用しています。 - ③育児支援手当の導入(2013年~)
当社では、基本給プラス30時間のみなし残業代がつく固定残業代制を採用しています。ところが育児短時間勤務制度を利用すると、みなし残業代がなくなり、さらに時短分が減額となります。一方で、時短勤務をしている社員には中堅以上の社員が多く、短い時間であってもしっかりと成果を出してくれていました。ノーワークノーペイは原則ではありますが、成果に見合う給与は支払う必要があると考え、小学校を卒業するまでの間、育児による時短勤務で減額となった時間分の賃金の50%を補填する「育児支援手当」を導入しました。 - ④在宅勤務制度の導入(2018年~)
コロナ禍に急拡大した在宅勤務制度ですが当社では2018年から本格的に導入しています。自律的に仕事ができる者は、上司と相談の上、在宅勤務をすることができます。当初は育児、介護、疾病等の事情がある従業員の利用が多かったですが、現在はコロナ禍の影響もあり、全従業員にとって利用しやすい状況になっています。育児中の社員からは仕事と育児の両立が大変しやすくなったと高評価を得ています。
⑶業務改善
- ①業務プロセスの標準化
育児や介護による休職者が出た場合も、業務が滞ることがないよう、各自が業務プロセスを見える化し、情報共有をすることで、互いに助け合いやすい体制を整えました。 - ②生産性向上の取組
時間生産性向上に全社で取り組み、業務改善を行いました。その結果生まれた時間は、自分のスキルアップや学びのために使ったり、リフレッシュのための休暇を取ったりするなど、育児や介護などに限らず、自由に使うことができる時間となっています。こうした取組が、育休などの長期休暇の取りやすさにもつながっています。 - ③「知恵」の共有
社内で技術的なノウハウや便利な業務ツールなどを集めたポータルサイトを構築。皆で共有できる仕組みを作っています。これが業務の効率化にも役立っています。
⑷啓発活動
- ①「イクメン座談会」の実施(2013年~)
育休取得に興味がある、これから取りたいという男性従業員に向けて、座談会を開催し、その様子を社内報により社内に発信しています。体験談を語ってもらうことで、男性が育休を取ることのメリットや、仕事と育児を両立できるイメージを共有することができ、不安の解消にもつながるのではないかと思います。 - ②「育休セミナー」の実施(2019年~)
従業員へのヒアリング等を経て、育休に興味があるがどうやって取ればいいかわからない者や、そもそも育休という制度をよく知らない者が多いことがわかったため、育休についての理解を深めることを目的とした「育休セミナー」を開催しています。また、育休中の収入減に不安を感じている従業員もいるので、「育児休業給付金が支払われること」や「休業中の社会保険料が免除されること」を伝え、必要に応じて金額のシミュレーションを行う等により安心して育休を取得してもらえるように工夫しています。
⑸育児休業中の情報共有
満足度調査や面談等で抽出された社員のニーズを反映して制度の改定を行いました。主なものは以下のとおりです。
4.これまでの効果と今後の課題
⑴効果
- ①復帰できるのが当たり前の風土
育休取得者が増えていくにつれ、「お互い様」の空気が生まれ、育休の取得や育休後は復帰できるのが当たり前という風土が根付いてきています。
社員の平均年齢が34歳と若く、「女性だけではなく男女ともに子育てをする」という意識が定着していることや、社長自身が子育てを経験していることなど、以前からあった両立のしやすい社風と相まって、社内の雰囲気がより良いものになっていると感じます。 - ②男性育休取得者の増加
子どもが生まれた男性従業員の数自体が少ないので、育休取得者数は年間数名にとどまっていますが、割合では高い水準をキープしており、2016年、2017年、2021年は100%となっています。取得日数も、当初は数日~2週間程度と短期間の取得となる場合が多かったですが、ここ1、2年で、1カ月、2カ月の長期にわたって休む者が増えてきました。
- ③離職率の低下
2015年に10%だった離職率は、2020年には6.1%まで低下しました。人事評価制度の改定や、業務改善など一連の施策の相乗効果によるものと考えられますが、両立支援に向けた制度整備や啓発活動等の取組を進めてきたことも大きな要因の一つだと考えています。
- ④採用面での効果
「イクメン企業アワード2019」を受賞しメディアに取り上げられる機会が増えたことで、採用面でもよい効果が出ています。当社はBtoBのビジネスを展開しているため、学生に対する知名度は高くはありません。しかし受賞によって、働きやすい会社であるという認識が広がり、入社を志望する学生が増えてきています。
⑵課題
- ①法改正に伴う仕組みの整備
育児・介護休業法の改正に伴い、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が事業主の義務となります。育休を取得しない部下がいたら、上司から情報提供をするなどの働きかけができるよう、管理職への情報提供なども充実させていく予定です。また、困ったことがあったら、相談しやすい雰囲気づくりをしていくことも重要と考えています。 - ②風通しのよい風土を維持
当社では、従業員満足度調査や1対1の面談などによって、従業員の声を反映した制度作りを実現してきました。しかしこれは、従業員数151名という小規模な会社だから実現できたことかもしれません。会社の規模が大きくなっても、「社員の声が届く」「風通しの良い風土」を作り続けることが重要と考えています。 - ③他メンバーの納得感
育休中の人員を補填することは簡単ではなく、残ったメンバーがフォローしなければなりません。フォローした従業員の貢献を人事評価に反映するなど、納得感を得られることが大変重要だと考えています。 - ④介護等による長期休暇にも対応
今後、介護に直面する従業員も増えていくと考えられます。育児に限らず、介護やその他の家庭の事情等で従業員が長期休暇を取る際にも業務が円滑に進むよう、体制や制度を継続的に見直していくことが今後の課題と考えています。
5.成功のポイント
「イクメン企業アワード2019」の受賞によって多くのメディアに取り上げられ、どのようにして両立支援を行ってきたかと尋ねられることが多いのですが、当社としては、大きな目標を掲げて取り組んだというよりは、従業員の声を聞いて、一つひとつ、必要だと思うこと、できることをやってきた結果、現在の体制ができていたというのが実感です。これで完成とは思っていませんし、小さい会社だからこそできたという面もあるので、会社の規模が大きくなっても今の体制が継続できるよう、今後も改善を続けていきたいと考えています。