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事例9:コマツ(株式会社小松製作所)
外部の専門家を招いた「介護個別相談」が好評、既存制度の活用でダブルケア(育児介護と仕事の両立)も支援
令和三年度取材
1.企業概要
設立:1921年
所在地:東京都港区赤坂二丁目3番6号
従業員数:連結 61,564名 単独 11,795名(2021年3月現在)
事業内容:建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械等
URL:https://www.komatsu.jp/
2.取組の背景
さまざまなバックグラウンドを持つ人材が集まり、それぞれの個性を認め、活かし合う中で、固定化された考え方に疑問を呈し、議論を重ねることによってイノベーションを創出することが、企業の持続的成長につながるため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することは重要です。当社においても、多様な価値観、個性をもった人材の受け入れとそのための制度、施策等の基盤整備、多様な人材が意欲を持ってチャレンジできるような活力ある職場環境整備を進めています。
少子高齢化に伴う労働人口の減少や、女性の社会進出等を背景に、男女問わず育児や介護等で制約を抱えている社員がキャリア継続できるよう、法定を上回る制度や施策を整備してきましたが、社員が置かれた環境や考え方は多様であるため、個々の状況に応じて社内外の制度やサービス等を組み合わせて対応する必要があると考えています。
介護については、誰もが介護の当事者となり得る状況の中、介護と仕事の両立支援のニーズは今後益々高まってくると考えられますが、介護の悩みを抱える社員が増えているという状況を考慮し、2018年に「介護個別相談会」を立ち上げ、『介護のプロ』に任せる等、介護体制を整えるための支援も含め、個々人の状況に応じた対応ができるよう取り組みを進めています。
3.取組内容
⑴出産・育児支援
- ①育児と仕事の両立支援ネット「Libra(リブラ)」
2006年に出産・育児に関する支援制度や手続きをわかりやすくまとめた、社員向けウェブサイト「Libra」を導入しました。このウェブサイトを通じて、制度の一層の浸透と理解促進を進めています。 - ②事業所内託児所「コマツキッズおやま」の開設(栃木県小山工場)
女性社員や子育て世代社員の増加を受けて、事業所内託児所を設置しました。子どもを職場の近くに預けられるという安心感が、育児休業者の職場復帰を後押ししています - ③育児休業制度
出産から保育園入園まで最大3年間取得可能。また、配偶者の転勤等やむを得ない事情がある場合は、小学3年までの子の育児のため、別途3年間を上限に休業を取得することができます。 - ④短時間勤務
小学3年生まで(2022年4月からは小学校卒業まで)の子の養育のため、1日最大3時間の労働時間短縮ができます。 - ⑤育児サービス経費補助
保育園入園後2歳までの乳幼児の保育料について、一部実費補助(上限1万円/月)を行っています。 - ⑥子の看護休暇
看護が必要な小学3年生までの子ども1人につき年間5日、2人以上であれば年間10日の子の看護休暇(有給)が利用できます。
⑵介護支援
- ①介護休業制度
家族の介護のため、最大3年間取得することが可能です。 - ②介護休暇
要介護家族1人につき年間5日、2人以上であれば年間10日の介護休暇(有給)を取得できます。 - ③介護個別相談の実施
2018年より、社外の介護専門家による個別相談会を月2回実施し、相談者一人ひとりに対応した介護に関するアドバイスを行っています。 - ④専門家によるセミナーの開催
介護専門家によるセミナーを開催し、介護の心構えを学び、仕事との両立を考える機会を提供しています。現在ではグループ会社への展開も実施し、コマツグループ全体で介護への理解を深める取り組みを実施しています。
⑶その他両立支援制度
- ①ライフサポート休暇
私傷病・不妊治療・配偶者の妊娠および出産・中学校3年生までの子の養育・家族の介護等のために利用できる休暇(有給)で、毎年5日を新規付与。利用しなかった場合は最大40日まで積立が可能です。 - ②不妊治療休職
不妊治療のため、1年間を上限として取得することが可能です。
⑷働き方改革
- ①総実労働時間の削減
「ワークライフバランス」を実現するために、長時間労働の是正は課題の一つです。当社はこの課題に対して労働組合と協調し、年間平均総実労働時間2,100時間未満、年次有給休暇19日以上取得(2021年度目標)という具体的数値目標を労使で掲げ、各職場で活動計画を作成するなど、メリハリある働き方の実現に向けた取り組みを進めています。 - ②在宅勤務制度
2014年に導入。当初は、育児・介護・私傷病など制約を抱える社員のみを対象とした制度でしたが、2020年度以降、従来のキャリア継続に加え、自然災害等の有事における事業継続や生産性向上を目的に、幅広く利用できる制度に見直しました。
4.取組における工夫
⑴育児・介護それぞれの制度拡充と周知・支援活動
当社では比較的早くから社員が安心して働き続けられる環境を目指し、両立支援制度を拡充してきました。現在は、法定以上の水準での制度・施策を整備してきました。
現在、少子化対策もあり、育児と仕事の両立支援は広く浸透しつつあると思いますが、今後、出産年齢の高齢化に伴い、育児、介護単体ではなく同時に担うダブルケアに直面する社員が増える可能性もあることから、介護と仕事の両立支援についてはもっと周知が必要だと感じています。人それぞれ考え方や、抱える事情・環境は異なり、会社として画一的な対応は難しいと感じる一方、制度を必要とする人が、必要な時に気兼ねなく利用できることが重要であるとも考えています。当社では、社員が個々の事情に応じて上手く制度を活用し、働き続けられるよう、これからも制度の周知と、制度を利用しやすい環境の整備を継続していきます。
⑵一人で抱え込まずに早めに専門家へ相談
現在当社では、介護の専門家の方に依頼し、個別相談会を月2回開催しています。介護の状況や悩みは一人ひとり異なるため、個々の事情に沿ったアドバイスを行っていただいています。自身で介護を行うのではなく、介護のプロに任せる・様々な介護サービスを選択するなど介護環境を整えるために、制度を上手く活用してもらいたいという取り組みです。
介護は個々人の問題ではなく、社会の問題でもあり、介護離職は会社にとって大きな損失となります。社員にはできるだけ早めに個別相談会を利用してもらいたいと考えており、そのための情報周知にも力を入れています。
⑶既存制度の活用でダブルケアへ対応
介護個別相談会では、育児と介護のダブルケアに悩んでいる社員の存在もわかりました。当社はダブルケア支援として専門の窓口を設けているわけではありませんが、社員が育児・介護と仕事の両立をはかるために、既存の制度をうまく組み合わせて活用してほしいと考えています。そのための促進活動が結果的にダブルケアに悩んでいる社員を支援することに繋がると思います。
実際に介護相談会に参加した社員の中には、専門家による適切なアドバイスを受けたことで、ダブルケアに悩んでいる社員の離職を回避できたケースもあります。一人で抱え込んでしまう前に、「早めの相談が解決に繋がる」ことを今後も周知していきたいと考えています。
5.これまでの効果と今後の課題
⑴これまでの効果
当社の育児支援制度は法定以上の水準で整備しており、休業制度や短時間勤務制度等を多くの社員が利用しております。
介護支援についても、これまで充分な制度を整えてきていますし、独自に開催している介護個別相談会に参加した社員が離職を思いとどまり、キャリアを継続できた事例もあり、着実に効果が出ていると考えています。相談会は開始して4年と歴史が浅いですが、開始当初と比較して3倍の社員が利用している等、社員からの関心も高い取り組みです。
介護はいつ自身が当事者になるかわかりません。いざという時の助けになるよう、今後も継続して情報発信を行うことが重要だと考えています。
個別相談を利用した社員には、アンケートを実施し満足度調査を行っています。その中で「介護だけでなく自分の生活を優先してもよいということに気が付いた」「気持ちが楽になった」などの声がありました。より使いやすい制度にするためのアドバイス等もあり、今後は利用者の声を施策にも反映させていけたらと考えています。
⑵今後の課題
これまで育児・介護制度の運用・促進活動を行ってきた結果として、育児支援については社員に浸透してきましたが、介護支援については対象者が把握しづらいという課題もあり、充分に浸透している状態には至っていません。
特に課題だと考えているのは、会社からパソコン等の機器を貸与されていない製造現場の社員に対し、なかなか情報が行き渡らないという点です。当社の社員のうち約3割は現場で製造を担っている社員であり、重要な課題です。
そこで、介護に携わる部下への対応や理解促進についての動画コンテンツを作成し、現場の監督者を中心に視聴してもらい、トップダウンで介護への理解を深める体制を整備することにしました。その他、チラシや社内報など紙媒体による全社周知も進め、地道な活動にはなりますが、会社の制度や情報が社員一人ひとりにまで行き渡る方法を常に考えています。
⑶今後の展開
個々人が置かれた状況が異なる中で、いかに制度を活用して離職を防ぐような支援ができるかが重要であると考えています。制度・施策の拡充のみならず、周知活動や職場環境の整備にも引き続き力を入れていきます。また、介護個別相談会のように一人ひとりに合った専門家のアドバイスを得られる支援も継続的に実施していきます。
育児、介護、またダブルケア等の制約のある社員のみならず多様な価値観、個性をもった人材が意欲を持ってチャレンジできるような活力ある職場環境に向けてダイバーシティ&インクルージョンを推進していきます。