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体験談8:Mさん

コロナ禍の子どもの不登校を、テレワークと助成金で乗り越えました

【プロフィール】
性別・年齢:女性・40代
勤務先の事業内容:出版社
従業員規模:20名
職務:編集
家族構成:息子(20歳・小2)
居住地:東京都

1.育児の状況

 現在20歳と8歳になる2人の息子がいます。20歳の長男は高等専門学校に入学した15歳から不眠になり、思春期精神科に通院しながら休学を経て在学中です。8歳の次男は、新型コロナウィルスが流行し始めた2020年4月に小学校に入学しましたが、感染拡大防止のために入学式の翌日に一斉休校、自宅待機となり、その後不登校気味になるなど、以前までの「自分は仕事に行き、次男は保育園に通う」という生活が一変しました。

 子どもと私の3人で暮らしているので、普段は自分が2人の子の面倒をみています。これまで、保育園時代は毎日の送り迎えや持ち物の準備を、小学校に上がってからは、学校行事や面談、保護者会などへの参加のほか、次男に関しては学校に慣れるまでの付き添いや送り迎えを仕事と両立してきました。そのほか、日常の買い物や食事の支度、洗濯、掃除などをこなしています。学校の宿題をみることも多いです。
 実家は関西で遠方のため、行き来が難しい状況で、妹も両親の近くに住んでいるので、助け合いは難しい状況です。元夫が近所に住んでいますが、次男が不登校になるまでは、積極的に連絡をとることはありませんでした。

 感染症の影響で一斉休校となったころ、年齢が上の長男は、オンラインで好きなサークルに入ってリモートで活動するなど、彼なりに対応できていましたが、次男は入学したばかりで、小学校が何をする場所なのかをまったく理解できていなかったため、まずは学校から配布された時間割を見て、机に座らせることから教えなければなりませんでした。保育園時代に先取り学習をさせてこなかったので、勉強すること自体が初めて。何故お母さんから勉強を教わるのか、何故保育園では名前だけでよかったのに学校では苗字が必要なのか……。学校に通えていれば自然と学べることを、私が代わりに一から教える毎日でした。
 そのころ私はテレワーク勤務が始まったばかりで、家で仕事をするという状況に慣れていませんでした。仕事も半分しかできない、次男のことも半分しかみてあげられないという中途半端な生活に強いストレスを感じ、本当につらかったです。ステイホームが求められており外に出られない生活だったので、次男も体力を持て余し、とても仕事にならない状態でした。
 しばらくして小学校が再開し、初日は次男も登校しましたが、翌日から「学校に行かない」と言い出しました。それからは、しばらく不登校の時期が続いたあと、私が付き添いながら少しだけ保健室登校をして帰宅、保健室から1時間だけ教室で勉強して帰宅、というように、段階的に通学に慣らしていきました。その後は私が先に帰っても教室にいられるようになり、お迎えに行かなくて済むようになり、1年ほどかけて、通常の小学校生活に近づいていきました。

2.勤務先の支援体制、制度等の利用状況

 職場の就業規則の範囲では、フレックスタイム、テレワーク、半日休暇を利用しました。公的な支援としては、国の「新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金(職場が都道府県労働局に申請)」活用による有給休暇を取得することができました。
 コロナ禍で子育てと仕事を両立するにあたり、まずいちばん助かったのは「テレワーク」という働き方です。私の職場では、新型コロナウィルス感染拡大により、2020年春からテレワークが導入されました。次男が不登校になって日中家にいたり、送り迎えや付き添いをしたりなど、テレワークでなければとても対応できませんでした。不登校はだいぶ改善されましたが、今の生活はテレワークがあってこそ成り立っていると感じています。
 「新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金」は、感染症への対応として臨時休業などをした小学校などに通う子ども等の世話が必要な労働者に対し、年次有給休暇以外の有給休暇を取得させた事業主が助成を受けられる制度です。私の住む自治体では「新型コロナウィルス感染拡大防止のため、保護者がテレワークをしている家庭の子は放課後児童預かり施設ではなく自宅で過ごすように」という指示が出され、子どもを学童で預かってもらうことができなくなりました。子どもの面倒を見ながらテレワークを行うことが保護者の仕事に影響することは容易に想定されるため、自治体から保護者の勤務先に宛てて配慮を求める依頼文書が発行されました。その公の依頼文書があったため、社内の決裁手続が進み、「新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金」を活用した有給休暇取得が承認されることになったのです。
 次男の通学で付き添いが必要となってから、私は相当数の半日休暇を使いました。でも、この助成金による支援対象となってからは、日数を気にせずに有給休暇を申請できるようになり、気持ちに余裕が生まれました。学校で次男を待っている間も、仕事のことや帰る時間を気にすることなく、安心してスクールカウンセラーと話ができたのです。
 また職場は子育て中や子育て経験者の女性社員も多くいたので、子どもに関する悩み事に比較的理解を得やすい環境でした。助成金の申請をする際に、スケジュールに余裕がある長期的なプロジェクトを担当するセクションに異動になり、仕事との両立もしやすくなりました。コロナ禍で職場のテレワークがスタートした際、これまであった職階の一部が廃止され、決裁に関わる人数が減ったことも手伝って、意思決定が早くなったのも、制度を利用する上で幸いしました。
 また、2021年から副業が解禁となったので、勤務時間外に副業を始めました。コロナ禍までは、残業や休日出勤、出張までこなし、その分の手当も支払われていましたが、テレワークや子どもの不登校で基本給分しか働けなくなり、収入が減りました。そこで、通勤がなくなって生まれた余力と時間を副業に充てようと考え、在宅でできる業務委託の仕事をはじめました。
 もともと、現在の職場は60歳定年、退職金なしという条件なので、将来に不安を感じていました。しかし、副業を始めてからは、本業以外にも収入を得る道があるということに気が付き、不安を払拭することができました。現在は、在宅ワークを紹介してくれる仲介事業者に登録し、出版社に勤めている経験を活かしてライティングを中心とした仕事を請けています。いずれは副業で起業することも考えているので、長く働ける土台になると考えています。テレワークにこのような副産物があるとは、当初は考えもしませんでした。

3.協力者との関係

 次男の小学校でお世話になったのは、担任の先生とスクールカウンセラーです。小学2年生になってからの担任の先生は、次男のことを気にかけてくれて、よく家まで迎えに来てくれました。先生が迎えに来てくれると学校に行ける、という日も多く、私もほっとしました。
 スクールカウンセラーには、学校で付き添いをしている間などに話を聞いてもらっただけでなく、様々なアドバイスをいただきました。離婚した元夫が小学校の近くに住んでいることを伝えると「お父さんのところに行かせてみるのはどうか」と、思いがけない提案をいただいたこともありました。それを受け入れて父親のところに行かせるようになってから、学校に行く日が増えたり、父親の家から登校したりと、次男の様子が好転しました。自分では思いつかないことだったので、アドバイスに感謝しています。
 元夫は自営業でテレワークをしていたため、毎日家にいたのも幸運でした。学校に行かない日や学校から早く帰る日なども、次男が気軽に行き来ができて相手をしてもらえたので、私の負担はだいぶ軽くなりました。
 また、兄弟で年が離れているので、長男は日常的に次男の父親のような役割を果たしてくれています。次男の遊びにつき合ってくれたり、私の愚痴を聞いてくれたりして、助けられています。

4.両立のコツ

 「完璧を求めすぎない」ということに尽きます。小学校が一斉休校になったとき、できるはずがないのに、勉強もきちんとさせる、仕事もきちんとする、皆やっているのだからできなければいけない、と思っていました。でも、自分を追い込むことは逆効果。苦しい思いしか残っていません。
 今は、国も自治体も企業も、さまざまな制度を整えているので、使えるものは何でも使うとよいでしょう。度重なる相談や申請で会社に鬱陶しく思われたとしても、交渉して、自分ひとりで抱え込みすぎないことが大切です。
 私のようにスクールカウンセラーに助けられたというケースもあるので、思いきってプロに相談するのもよいと思います。

5.両立の悩み

 テレワークという働き方を子どもに理解してもらうのが難しいことです。
 次男が不登校になったタイミングでテレワークが可能になり、仕事との両立ができるようになりました。長男は理解できる年齢なので、母親が家にいて遊んでいるわけではないことがわかっています。でも、次男はテレワーク中に頻繁に話しかけてきたり、構ってほしくて外出をねだったりしてきます。私が仕事をしている間、次男に有意義な過ごし方をさせたいと考えていますが、それについては解決策を探しているところです。
 仕事で電話をする前に「30分静かにしていてね」としっかりお願いするとその通りにするので、伝え方の工夫が必要かもしれません。

6.育児をする労働者へのアドバイス

 育児を一人で抱え込みすぎないことが大事だと思います。何でも自分で解決しようと思わないこと。私の場合は、身内が遠くて頼りづらい環境にありました。でも、テレワークの活用で道がひらけ、助成金も利用できて、助けてくれる人を見つけることができました。家族でなくても悩みを聞いてもらえますし、理解してもらえる人や場を得ていくことで、子育てと両立しながら安心して仕事を続けることができます。
 情報収集は大事ですが、幅広く集めてしまうと取捨選択がしづらくなります。SNSも見ますが、よいものも悪いものも含め情報があふれています。自分のアンテナにかかるものをしっかりキャッチしていくとよいと思います。

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