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不妊治療の医療的な患者の心身の負担

コラム

不妊治療の医療的な患者の心身の負担

株式会社ファミワン 不妊症看護認定看護師 西岡有可
令和元年度取材

 不妊治療と聞くと「なんだか大変そう」「痛いことが多そう」「頑張っても妊娠しないと疲れちゃいそう」という風に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。治療や通院での身体の負担。そして心の負担。両方の負担が不妊治療を受ける方にはあります。では実際のところ、どのくらいの負担があるのか一緒に考えていきましょう。

 不妊治療の病院に行くとまずは不妊検査を受け、その上で不妊治療始まります。まずは不妊検査についてお伝えします。

不妊の基本的な検査

  • 超音波検査(子宮や卵巣の状態の確認)
  • 卵管造影検査(子宮や卵管の形状の確認)
  • 精液検査(精子の数や運動率などを測る)
  • ホルモン検査(排卵の司令などが出ているか)
  • フーナーテスト(精子がオリモノの中にいるか)

このように、いくつかの検査があります。男性側は精液検査に加え、場合によって採血があります。比べてみると、女性側は複数の検査があり男性よりも負担が大きいことがわかります。また、生理の日数ごとに検査をしなければならないため、1ヶ月に3-4回の受診が必要です。痛みを伴う検査もあるため、女性の身体的な負担が大きいと言えます。

では不妊治療についても考えて見ましょう。
不妊治療は大きく以下の3つの治療に分かれています。

  • タイミング療法(排卵日を特定し性交渉を持つ)
  • 人工授精(排卵日を特定し、精液を注入する)
  • 体外受精(卵子と精子を取り出して受精させ、子宮の中に戻す)

不妊検査の結果、不妊原因が明らかになった場合はその原因に合った治療方法が選択されます。多方、特に不妊原因が明らかでない場合、治療は段階的にステップアップしていくことになります。まずはタイミング療法、次に人工授精、そして体外受精という順です。ステップアップするに従い、妊活期間は長くなり、通院回数も増えてきます。そのため、身体的負担、精神的負担ともに大きくなっていきます。では一番負担の多い体外受精で考えてみましょう。
体外受精では採血をすることが多く、また注射が連日行われることが少なくありません。そして何より「採卵」という卵子を取り出す手術での身体的負担が大きくあります。また体外受精1回あたり50-70万円と費用が高額であることや、治療を受けたからといって必ず妊娠できるわけではないことから、精神的な負担も大きくなっていくのです。もちろん、精神的な負担に関しては女性だけでなく男性側にもあります。女性はホルモンの影響や「なかなか妊娠できない」不安、「自分が不十分な人間である」という感覚などから大きなストレスを抱えます。その結果、抑うつ状態になることも少なくありません。パートナーである男性はそういった状況の女性を支えなければならず、また自身も「なかなか妊娠できない」と不安を感じているのです。

不妊治療の身体の負担という点でまとめて考えてみましょう。

  • 内診台での診察
    女性にとって婦人科の診察はあまり心地よいものではありません。中には内診台での診察に痛みや恐怖を感じる方もいます。
  • 通院
    月経周期によって月に複数回の受診が必要になります。何度も病院に足を運ばなければならないことは大きな負担です。
  • 採血/注射
    ホルモン検査のため採血をすることが多くあります。排卵誘発剤を使用することがあるため、そのための注射もあります。体外受精では連日の注射をすることもあり、どうしても痛みが伴います。
  • 痛みを伴う検査/処置
    痛みを伴う検査としてよく言われるのが、卵管像影検査です。卵管造影検査では造影剤を使用して卵管や子宮の様子を観察します。全ての方に強い痛みがあるわけではありませんが、検査時に卵管が細くなっていたり、詰まっていたりする場合には強い痛みが伴います。
    採卵では、経膣超音波の先に針を付け、卵巣に刺して卵胞液を吸い上げます。この手術には痛みが伴いますので、手術中は座薬や局所麻酔、静脈麻酔などを使用します。また採卵後も腹痛があることが多いです。また採卵以外にも全身麻酔によって手術をする場合もあります。時には入院の必要がある場合もありますので、さらに身体的な負担は大きくなります。
    検査や採血、手術などにより痛みや恐怖が強くなると、迷走神経反射によって、意識を失ってしまう方も稀にいます。
  • 副作用
    どのような薬にも副作用があります。排卵誘発剤やホルモン剤を使用する場合にも副作用がみられます。症状が強く出る方は多くはありませんが、初めて使用する薬には注意が必要です。また採卵(手術)の際にも、可能性が高くはありませんがどうしても副作用があります。腔内出血、感染、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)などの可能性があります。これらの症状が見られた場合れた際には速やかに医師の診察を受けましょう。

不妊治療の心の負担についてまとめて考えてみましょう。

  • 生理のたびに不合格判定を下されている気持ち
    毎月の生理の血を見るたびに「不合格」の烙印を押されている感じを受ける、と言われます。
  • 妊娠するかわからない治療に費用や時間をかけること
    不妊治療を受けたからといって必ず妊娠するわけではありません。治療に時間もお金もかけ身体の負担にも耐えなければなりません。
  • ホルモンの影響で落ち込みやすい
    女性の生理はそもそもホルモンによって引き起こされており、PMS(月経前症候群)に代表されるように、ホルモンによる様々な影響を受けます。そのため抑うつ状態になりやすい時期もあります。
  • 治療が長期化して来ると抑うつになりやすい
    治療が長くなってくると抑うつ傾向になるという報告がされています。
  • 職場での仕事の調整が困難
    「不妊治療をしている」と誰かに話すのは勇気がいる事です。上司や同僚に話せないことも少なくありません。通院は2日前など急に決まることもあるので、急ぎの仕事との調整に頭を悩ませることがあります。

いかがでしょうか。このようにみてみると、身体的な負担や心の負担が少なくないことがわかりますね。でも、「赤ちゃんが欲しい」「不妊治療を受けたい」という思いは強くあります。
このような負担をどうしたらいいのか。身体的な負担と精神的な負担に分けて考えてみましょう。

不妊治療の身体の負担をどう対処するかについて考えていきます。

  • 痛みへの対処
    痛みが不安なことをスタッフに伝えましょう。痛み止めや麻酔を使用する、処置の時に看護師に近くにいてもらうなどの方法がとれるか確認しましょう。
  • 診察に適した服装
    内診台での診察や、採血注射が多いことを考えると、あまり窮屈でなく着脱可能な服装が望ましいです。待ち時間が長いこともあり、それだけでも疲れが出てきます。適切な服装で、少しでも身体を楽にしましょう。また冷暖房対策も必要です。

不妊治療の心の負担をどう対処するかについて考えていきます。

  • パートナーとのコミュニケーションを十分に
    一番の相談相手はパートナーです。また治療を受けるのはお2人です。男女の温度差が生じやすい治療ですが、十分なコミュニケーションをもつことが重要です。
  • 相談できる人を確認
    だれかに話を聞いてもらうだけでもスッキリしますね。ですが、妊活の話はなかなか相談しにくいものです。相談相手として「友人」「妊活中の知り合い、友人」「家族」などがよく聞かれます。ご自身の話やすい人は誰でしょう。相談できる人はいそうか、それは誰なのか、考えておくといいですね。
  • 病院スタッフにも相談を
    医師、看護師、胚培養士、心理士など様々な職種が在籍しています。ぜひ相談して納得のいく不妊治療を受けましょう。不妊症看護認定看護師が在籍している病院もあります。
  • ストレスに対するセルフケア
    ストレスへの対処としてご自身でのケアが重要です。これも妊活のうちと思って、ご自身を癒してあげることも大切です。
  • ストレスはゼロにはならない
    どんなに負担を減らすよう心がけても、ストレスをゼロにすることはできません。ストレスを減らすことに集中しすぎて逆にそれがストレスになることもあります。リフレッシュしたり、「まぁいいか」と肩の力を抜くことも有効です。

次に、不妊治療と仕事の両立を可能にするポイントをお伝えします。
治療段階が上がるについて通院回数は増えます。特に体外受精となりますと、通院回数が増え、採卵の日は通院に半日はかかってしまいます。さらに、受診の日が2日前など急に決まることもあり、仕事との両立は簡単ではありません。
実際、休職されたり退職される方もいます。仕事もしたいけど治療も受けたい。そんな悩みを抱えながら治療を受けなければならないのは辛いことです。
仕事との両立を目指すには、いくつかのポイントあります。

  • 通院しやすい病院を選ぶ(夜間や休日に診療している/立地)
  • 可能であれば職場に治療のことを伝え協力を依頼する
  • 不妊症看護認定看護師など悩みを打ち明けられる体制のある病院を選ぶ

いかがでしょうか。
身体の負担も心の負担も多くなる不妊治療。自分の身体や心とどう折り合いをつけていくかが重要です。少しでも負担を減らしながら不妊治療を受けることができるよう家族、病院、職場など社会全体でサポートしていけるような時代が早く来ることを願います。

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