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事例3:大東建託株式会社

注力してきた両立支援制度に、「不妊治療」を応援する制度をプラス

令和二年度取材

1.企業概要

設立:1974年
所在地:東京都港区港南2-16-1品川イーストワンタワー21~24階
従業員数:8,691名
事業内容:アパート、マンション、貸店舗等の建設業務

2.取組の背景

 2019年4月に女性活躍推進をきっかけに全従業員が活躍できる職場環境をつくるためのプロジェクト「いろどりLAB」を、本社の女性社員11名で発足しました。まずは、ライフイベントがあっても女性社員が長く働ける職場環境をつくろうと、両立支援制度を見直すことから始めました。通常ではライフイベントというと、結婚、妊娠、出産、育児が挙げられますが、そこに今後は「不妊治療」も入れていくべきではないか、と考えたのが今回の制度をつくったきっかけです。
 不妊治療については、制度導入前から時折社員からの問い合わせを受けたり、上司から「部下から不妊治療の相談を受けており、何とか対応してあげたいのだが可能だろうか」といったような相談があり、多数ではないにしても困っている社員がいるという認識はありましたが、実態はつかめていませんでした。
 不妊治療と仕事の両立に関する制度を導入するにあたり、実態をつかむための社内アンケートを実施しようかと考えましたが、個人的な問題も大きく、人に話したくない、あまりオープンにしたくないという人もいるだろうという配慮から、あえてアンケートによる調査を行わず、実数がつかめない、つかまない形を選択して制度づくりをスタートさせました。

両立支援制度一覧

 

3.取組内容

導入した制度としては、以下の4点になります。

① 不妊治療休暇の創設
 不妊治療のための休暇制度として、年次有給休暇とは別に有給で取得できる休暇を年5日間設け、時間単位での取得も可能としました。当社ではフレックス制度も導入しているので、朝、病院に寄ってから出社する時などは、フレックス制度を利用することができますが、どうしても時間の調整が難しい場合には、この不妊治療休暇の時間単位での取得と組み合わせて使っているケースがみられます。

② 最長で3年休業することが可能
 不妊治療のための休業制度として、妊娠判明まで無給にはなりますが、最大3年間休業することができます。

③ 不妊治療補助金を助成
 年間最大2万円まで不妊治療にかかる費用を助成する制度で、最大5年間、申請することが可能です。

④ 家族休暇
 数年前から設置しているマタニティ休暇、子(中学生まで拡充)の看護休暇、子以外の看護休暇、介護休暇に、今回導入した不妊治療休暇を加えて「家族休暇」という総称にしました。これは、周囲の人達に、どういった理由で休んでいるのかがわからないようにし、休暇を取りやすくしようという配慮のために導入しました。

 上記制度を導入し、利用してもらうためには周知活動が必要ですが、不妊治療の場合はオープンにしすぎたり、会社から治療を積極的に促進したりする内容ではないので、利用者に配慮した情報発信を心がけています。
 例えば、「不妊治療休暇」を取得された社員に、「不妊治療補助金」の申請ができることを案内するために、「不妊治療休暇」の申請画面に補助金の情報を掲載し、目につくようにしました。その他、研修のなかで説明したり、他の制度と合わせてお知らせをしたりするなど、さまざまな角度から情報が見つけられるように工夫しています。相談窓口の設置についても、不妊治療だけでなく、介護や育児などの各掲示板に「ご相談がある方はこちらまで」といった連絡先を掲載しています。

4.これまでの効果と今後の課題

①これまでの効果

 導入されて約1年しか経っていない制度のため、まだ利用者がそれほど多くありませんが、「不妊治療休暇」については、10名余りが利用した実績があります。
 利用した方からは、「これまでよく不妊治療で休まなければいけなくて、後ろめたさや治療が上手くいかず落ち込むことがありましたが、会社がこういった不妊治療制度を導入してくれたことで、応援してくれているとわかって安心しました」という声が聞かれました。不妊治療をしていない女性社員からは「会社がこういうことにも目を向けるようになって、自分のことではないけれど嬉しい」といった意見もありました。
 当社は、建設業で男性が多い職場(女性社員は全体の15%未満)でもあり、まだまだ認知度の低い案件への対策だったことに、良い意味で社員も驚いたようです。もちろん、不妊治療制度は女性だけでなく男性も使えますので、社員が働きやすい環境づくりにつながればと願っています。
 会社が社員を応援している姿勢を示すことで、当事者以外の社員からも評価され、良い影響が出ていると思います。例えば、社員の中から「実はこういうことで困っている」「シニアで体力が落ちてきているから、こういう働き方があるといい」等、さまざまな意見が社内から上がってくるようになりました。社員が会社に期待感、働きやすい環境で働き続けたいという気持ちをもってくれているのを感じます。

②今後の課題

  • 不妊治療においての課題
  •  子育ては、上司や男性社員も経験していて、社内にも両立している社員が多いのですが、不妊治療に関してはまだまだ知識が浅く、両立がどれだけ大変かわからない社員も多いので、周囲の理解も深めていかないといけないと考えています。
  • その他の働き方の課題
  •  これまでさまざまな両立支援に力を入れてきましたが、制度を整える、拡充することに注力し、周知活動が足りなかったことで、社員が会社にどんな制度があるのかがわかっていなかったという面がみられました。そのため現在、会社として「こういう想いでこれらの制度を整えたので、皆で頑張っていきましょう」というメッセージも含めて、制度の内容を発信していくことに力を注いでいるところです。
     その一つの取り組みとして、ダイバーシティ推進のWEBサイトを2020年11月に立ち上げました。そのサイトを通して、社員一人ひとりに「当社はこれだけ制度が充実し、長く働きやすい環境が整っている」「誰もが自分らしく活躍していける」ということを伝え、いざとなったらこのサイトを見て必要な制度を活用してほしいと思っています。
     さらに、これらの制度を利用した人達の声を載せ、若い社員に向けて先輩社員がどういう風に家庭と仕事を両立しながら働いているかがわかるサイトに作り上げていきたいと考えています。
     誰もが長く働ける職場が完成したその先には、女性がしっかりとキャリアを積んでいける職場環境づくりを見据えています。子育て世代の方は、育児と仕事の両立で精一杯になってしまいがちですが、子育ても不妊治療もいつか終わりがあるものなので、40代、50代になった時に自分のキャリアがどこにあるのか意識しながら進んでいくことが必要です。会社としても、女性社員が長期的なキャリアを形成するための教育、仕組みづくりに着手していく必要性を感じています。また、キャリアアップや昇進以外の働き方として、輝いていくにはどういった働き方があるのかについても検討していきます。
     全社における女性社員の割合を増やすことも目標としており、男性社員が多い工事、設計部門にも、数年前から女性社員を積極的に採用しています。毎日いきいきと働いている方たちが増え、女性の勤続年数も、徐々に伸びつつあります。
     今後は、大東建託は、「必要な人が必要な時に必要な制度を使って長く活躍できる会社」、「仕事だけでなく人生そのものを応援していく会社」、ということを社内外に発信し、実現するための取り組みを活性化していけたらと思っています。


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