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体験談8:J.Nさん
家庭、職場、医療現場でコミュニケーションをしっかりとって不妊治療と仕事を両立させる
【プロフィール】
性別・年齢:女性・30代
勤務先の事業内容:インターネットメディア事業
従業員規模:約600人
職務:広報
家族構成:夫と2人暮らし
居住地:東京都目黒区
1.不妊治療を始めたきっかけと治療内容
私たち夫婦は入籍から1年ほど経ったころから、子どもを授かりたいという思いで妊活を始めました。しかし、1年以上経ってもなかなか結果が出ず、焦りや不安を感じる日々が続いていました。そんな中、出産した友人を見舞う機会がありました。友人は出産までの道のりについて話してくれ、その中で「実は自分も不妊治療をしていた」という言葉を聞き、私たち夫婦も不妊治療を検討するきっかけとなりました。婦人科での検査の結果、私は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)であることが妊娠を難しくしている可能性が高いと指摘を受けました。大学生のころに受けた子宮がん検診で既に多嚢胞性卵巣症候群であるという診断でしたが、当時は深刻に捉えず、「子どもが欲しくなったら考えればいい」と楽観的に考えていました。そのため、診断を受けても当時は治療には踏み切っていませんでした。
不妊治療を始めるにあたり、まず夫婦で一連の検査を受けました。私自身の体の状態を確認するため、卵管造影やホルモン値の検査を行いました。また、治療に支障が出ないようにと、はしかの予防接種も済ませました。こうした準備を経て、最初の治療として医師の指導のもとタイミング法に取り組むことになりました。しかし、タイミング法ではあまり治療の効果が出なかったこともあり、夫や医師と相談を重ねた結果、次のステップとして人工授精に進むことを決めました。しかし、私は体質的に卵胞が育ちにくかったり、薬が効きにくかったりするところがあるようで、4周期の治療のうち、実際に人工授精を実施できたのは2回でした。現在も人工授精を継続しており、あと2~3回チャレンジした後、必要であれば体外受精へ進む計画を立てています。
2.会社の支援体制と利用状況について
私の職場では、不妊治療をサポートするための支援体制が整備されており、それが治療を続ける上で大きな支えとなっています。具体的には、「不妊治療補助制度」という費用面での支援があります。この制度では、採卵準備から受精1回に至る治療の過程を1回とカウントし、その1回の治療にかかる費用を上限2万円まで会社が実費で負担してくれるものです。この補助に加え、東京都の不妊治療補助金制度も活用することで、現時点での自己負担額はほぼゼロとなり、経済的な負担が軽減されています。
また、調整可能な勤務時間も大きな助けになっています。不妊治療を開始した時に勤務時間をこれまでの10:00~19:00から、通院しやすい9:00~18:00に変更しました。この変更によって、勤務後に婦人科へ通うことが格段に楽になり、仕事と治療を無理なく両立できるようになりました。さらに、職場には不妊治療について気軽に相談できる環境があります。治療の状況や体調について話すことができる環境があるおかげで、精神的な負担も軽減され、安心して治療と仕事の両立に取り組むことができています。
夫の職場環境にも感謝しています。夫の会社ではリモートワークやフレックスタイム制度が推奨されており、夫も柔軟に勤務時間を調整しながら治療をサポートしてくれています。不妊治療というと、どうしても女性が主体となる印象を持たれることが多いですが、夫の職場ではそのような固定観念はなく、治療に対する理解が深いことに助けられています。夫も積極的に検査や通院に協力してくれるので、私一人で抱え込むことがなく、二人三脚で治療に向き合うことができています。
3.ご家族や職場の上司、同僚は助けになっているか
私の母も不妊治療を経験しており、母から「遺伝的に子どもは授かりにくいかもしれない」という話を結婚前から聞かされていました。そのため、私は結婚前に夫にもその話を共有しており、夫はある程度その可能性を覚悟してくれていたようです。このことがあってか、夫は不妊治療に対して非常に積極的に協力してくれます。
初めて人工授精を実施した日は偶然にも私の有給休暇取得日でしたが、夫も同じ日に有給休暇を取得して病院に付き添ってくれました。その心強さは今でも忘れられません。不妊治療の期間中、夫は常に明るく接してくれ、私を気遣う言葉や行動に何度も助けられました。人工授精の後は妊娠の可能性があるため、飲酒や生ものの摂取を控えなければなりませんが、夫も私に合わせて断酒、食事の調整にも付き合ってくれました。また、結果が思うようにいかなかったときには、「子どもがいたら…」といった話題を避ける配慮を見せ、代わりに一緒に美味しいディナーを楽しむなど、私の心を軽くしてくれる行動を積極的に取ってくれます。このような夫の協力と気配りが、私の不妊治療の道のりを支えてくれています。
職場でも私は恵まれた環境にあります。不妊治療を始める際に上司に相談したところ、勤務時間を10:00~19:00から9:00~18:00に変更することを快諾していただきました。この上司は私よりも年齢が上で男性ですが、不妊治療については必要以上に質問をせず、私が話したいときにだけ耳を傾けてくれる姿勢を貫いています。そのおかげで、定期的に相談できる心地よい関係が築けています。
私の職場は従業員の平均年齢が20代と若く、現在育児を行っている同僚も多い環境です。育児を理由に休暇を取る同僚がいる際には、互いにフォローし合う風土が根付いており、それが私にも大きな安心感をもたらしてくれています。「何かあっても絶対に周りが助けてくれる」という信頼があることで、不妊治療と仕事を両立することへの不安が大きく軽減されています。
不妊治療を進める中で、私は「会社や上司、同僚が不妊治療に対して理解を示してくれること」の重要性を痛感しています。職場の福利厚生制度やサポート体制ももちろん大切ですが、実際には職場の理解が両立を支える柱の8〜9割を占めると感じています。私自身、この点で職場環境に恵まれていることに感謝しながら、これからも夫や職場の支えを受けて治療と仕事を両立していきたいと思います。
4.不妊治療と仕事を両立させるために行っている事
不妊治療を始める際、最初に不安を感じたのは通院頻度の高さでした。不妊治療では周期ごとに診察や検査が必要で、タイミングによっては短期間で複数回の通院が求められることもあります。この点が、仕事との両立において特に大きな課題になるのではないかと思っていました。しかし、幸いにも私の職場はリモートワークを推奨しており、柔軟な働き方ができる環境が整っています。通院のために就業時間を前後にずらしたり、休憩時間を有効活用したりすることが可能で、この仕組みのおかげで、通院が仕事に大きな影響を与えることなく治療を進められています。また、前述した福利厚生制度の充実に加え、周囲の理解や協力が得られていることが大きな支えとなっています。上司や同僚も、私が治療と仕事を両立しやすいように配慮してくれるため、現時点では通院頻度に対する不安をほとんど感じることがありません
このような環境があることで、私は仕事に対する責任を果たしながら、不妊治療にもしっかり取り組むことができています。通院が重なるときにはスケジュール調整に少し手間がかかることもありますが、それ以上に柔軟な働き方が許されることで得られる安心感や、周囲からの温かい支援に感謝する毎日です。不妊治療は多くの時間や労力を必要とするものですが、こうした理解ある職場環境のおかげで、今後も無理なく治療を続けていけるという自信につながっています。
5.不妊治療と仕事の両立のために意識している事
不妊治療と仕事の両立において、私が特に意識していることは、大きく分けて2つあります。一つは 通院頻度を減らす工夫 をすることです。不妊治療では、排卵誘発剤の注射などが必要になる場面があり、そのためだけに毎回通院しなければならないことが負担に感じられることもありました。この問題を解決するため、病院の医師に相談したところ、自己注射の方法を教えていただき、現在では排卵誘発剤を自分で注射しています。この自己注射の導入により、通院回数を減らすことができ、時間や移動のストレスが軽減されました。こうした医療上の選択肢を探るためにも、医師との密なコミュニケーションが重要だと感じています。
もう一つは 精神的な負担を軽減すること です。不妊治療を始めた当初は、仕事仲間に治療のことを伝えずに進めていました。しかし、それがかえってストレスになっていることに気づき、信頼できる上司や同僚に不妊治療中であることを伝えることにしました。驚いたことに、皆が親身になって話を聞いてくれ、支援を申し出てくれるなど、温かく受け入れてくれました。その経験から、他者に自分の状況を共有することで、心理的な負担が軽減され、助けを得る道が開けるのだと実感しました。
コミュニケーションの重要性は職場や家庭、病院においても同様です。医師とは病状や治療計画について遠慮なく意見を交わし、治療に関する疑問や希望を率直に伝えています。その結果、夫婦で治療方針を共有し、納得した形で進めることができています。職場では、勤務時間の調整やリモートワークの活用など、柔軟な対応を得られています。職場の雰囲気が不妊治療と仕事の両立について話しやすいものであることも大きな支えになっています。加えて、家庭では夫との協力体制がしっかりしており、不妊治療と仕事の両立に向けてお互いの立場を理解し合いながら進めています。
今後も、これまで培ってきたように、医師や職場の人々、そして夫と良いコミュニケーションを続けながら、不妊治療と仕事の両立を継続していきたいと考えています。不妊治療には多くの努力が必要ですが、一人で抱え込まず、周囲と協力しながら進めることで、より良い結果に結びつけられると信じています。