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事例3:株式会社テクノカルチャー
復職メンター制度で育児離職ゼロを実現
平成30年度取材
1.企業概要
創立:1985年
所在地:東京都豊島区東池袋1-33-8
従業員数:91名(男性67名 女性24名)
事業内容:ソフトウエアの設計・開発・運用支援、ネットワークソリューション、ITコンサルティング、ソフトウエアパッケージ販売
2.取組の背景
システムエンジニアは、残業や休日出勤も多い職種で、体調を壊す人が多いというイメージがあります。しかし、会社にとって一番大切なのは人です。そのため、社員を大切にして社員が幸せになるよう、「社員とその家族、また得意先、会社と関係ある人達にハッピーであるように貢献する」を企業理念の一つに掲げました。働きやすく、長く勤められる会社は企業の持続的成長を支える重要な要素です。会社の財産は社員です。長時間労働を減らし、有給休暇の取得を促進し、生活と仕事の両立を実現する職場環境づくりを行っていくことで、社員一人ひとりの能力が最大限に引き出され、仕事にやりがいを持って取り組むことができます。その結果、生産性の向上や人材確保、ひいては企業価値と業績の向上に繋がると考えます。
残業時間を削減する努力をしながら働きやすい職場環境づくりへの取り組みは、当初社長と総務のみで進めてきましたが、2015年に社員の部署横断的な推進部門をつくりたいという社内の自発的な声から、「ダイバーシティ推進委員会」を有志の社員で立ち上げ、現在はそこが担っています。働きやすい職場環境づくりに向けて、まず全社員に向けてアンケートを実施し、社内の課題を明確にしました。その課題の一つに育児と仕事の両立がありました。この取組を行う前には産休・育休終了時に退職する者がいました。
3.取組内容
① 実態把握
ダイバーシティ推進委員会の立ち上げ時にアンケートを実施し、社内の課題をまず把握しました。ダイバーシティ推進委員会と社員の健康管理を担う健康管理委員会はそれぞれに窓口担当者をおき、情報共有を行いながら活動しています。ライフ・ワーク・バランスの推進と社員の健康管理、残業の削減に向けた取組をメールやグループウェアで情報共有し、社員が業務に支障がなく、生活と仕事のバランスが取れているかを常に把握できます。
外国籍の社員が産休を取得することになり何かできないかというきっかけから、産休・育休取得者向けのメンタリング制度が生まれました。産休・育休後にスムースに職場復帰できるよう4回の面接を行い、育休中の不安や悩み、復職に向けた意識の持ちようを先輩社員が相談にのることで、産休・育休中の社員の状況が把握できます。また子育て中の男性社員が育児に関するコミュニケーションのきっかけづくりとして始めたメーリングリストからも社員の実態を把握できます。このように様々な取組をメール等で共有することで、多くの社員の実態把握が可能になり、問題も把握できるようになりました。
② 制度の設計・見直し
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定と取組、ダイバーシティ推進委員会と健康管理委員会の連携による活動から育児と仕事が両立できる社内整備を行っています。
●女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
社員が仕事と子育てを両立させることができ、全ての社員が能力を十分発揮できるように、教育の充実と労働環境の整備を行うための行動計画を策定しています。計画期間は2016年12月1日から2019年11月30日までの3年間。
目標1として、計画期間中に育児休業を男性社員1名以上、女子社員は取得率80%以上としました。過去のデータ調査分析と達成可能な対策を作成し、男性も育児休業を取得できることを社員に周知し、育児休業の取得希望者を対象に説明を実施しています。
目標2としては、円滑な育児休業の取得および職場復帰を支援する措置の実施です。具体的には、育児休業の取得および職場復帰の策定マニュアルの作成及び周知、育児休業者に策定マニュアルに沿って個々のプランを作成し、実施するという内容です。
●ダイバーシティ推進委員会など委員会活動の推進
ダイバーシティ推進委員会は横断的な部署のメンバーで構成され、2〜3カ月に1回定期委員会を開催し、議事録を作成し全社員に公開しています。毎回、ダイバーシティ推進責任者である社長が参加し、提案事項について速やかに決定することができる体制になっています。
ノー残業デーなど、残業削減の取組は健康管理委員会が中心に実施しています。残業が月80時間を超える社員、3ヵ月連続で60時間を超える社員には面談を行い、健康面も含めた対処・対策を施しています。各部署から1名ずつ参加し、ダイバーシティ推進委員会と有益な情報を聞き漏らさないようメールやグループウェアで情報共有を行っています。人事労務を担当する総務部は議事内容に応じてそれぞれの委員会に出席し人事面の配慮も行っています。
③ 事前の情報提供
総務部は人事・労務も兼務しています。育児・介護休業法の制度と自社の就業規則等で規定している制度を、社員から相談があった際にはわかりやすく説明し情報提供しています。また制度の利用を希望する社員だけでなく、社員全員が制度の趣旨や目的を理解できるように部署横断的なダイバーシティ推進の取組等で、全社員に広く周知しています。
④ 育児に直面した従業員への利用支援
産休・育休取得者向けメンター制度により、きめ細かく職場復帰を支援し、職場復帰率は100%を達成しました。また、メーリングリスト等で男性社員の産休・育休への理解や意識が深まっています。
●産休・育休取得者向けのメンター制度(女性従業員対象)
メンターは産休・育休経験者の社員、メンティは産休・育休を取得しようとする社員を意味します。メンターがメンティと継続的・定期的に交流して信頼関係を築きながら、メンティの仕事と私生活の両立をメンタル面を含めてサポートします。産休に入る2カ月前、産休に入って保育園の申し込みが始まる10・11月頃、保育園が決まる2・3月頃、そして復帰後2カ月くらいに面談を行います。面談は合計4回です。
既存の新人向けメンター制度のしくみを基礎とした制度で、育児休業経験者の意見を生かして産休・育休後の職場復帰を支援する当社独自の制度です。育休中は子どもと二人の時間が多く復職の不安を抱えているものですが、何年か前に実際に出産・育休を取って職場復帰した先輩が経験を話し、悩みを聞いてくれます。復職後のイメージが湧いて復職までの活動がスムースに行われたと感謝の声が出ています。
●男性社員の発案でメーリングリストを運用
男性社員の発案で、男性の育児参加や育休取得を促すために、2017年にメーリングリストがスタートしました。子育て中や配偶者の出産予定がある男性社員、子育て経験者、子育てに興味がある男性限定の情報交換の場です。男性の子育てに関する悩みや相談、それに対する回答、子連れのイベント情報など、男性間の情報交換も活発に行われています。
⑤ 働き方改革
社長自らが残業を減らし、有意義な時間を過ごすように全社員に働きかけを行っています。社内6部署の部会で収益を確保しながら、長時間労働をいかに減らすかの議論が重ねられています。
社内ではメンバー皆が現在行っているプロジェクトを見える形で進めています。メンバーには短時間勤務を利用して育児をしながら仕事をしている社員もいます。取得者に対し「業務をフォローします」とか「定期的に状況を報告します」と言った声もあがり、産休・育休に関する理解と意識が深まっています。育児休業前後で残業時間を20%減らした社員もいて、業務の効率化に繋がった例もあります。
ダイバーシティ推進委員会などの委員会活動を推進し、職場環境づくりと社員の行動を促すことで、残業を減らすための生産性向上・仕事の質と生産性を上げる取組を今後も進めていきます。
4.これまでの効果と今後の課題
産休・育休から復帰して短時間勤務をしている女性が10名ほどいます。経験者を先輩メンターとすることで、育児や復職の不安を解消でき、孤立感の改善、復職後のキャリア形成に役立っています。育児と仕事の両立を支援することは、労働者のキャリア形成のメリットだけではなく企業にとっては能力や意欲のある人材確保に繋がります。産休・育休取得者向けメンター制度により産休・育休後の離職がなくなり、職場復帰は100%を達成しています。制度を利用したメンティが今度はメンターになる、メンタリングの延長で母親コミュニティという掲示板ができるなどの好循環が生まれています。
男性社員が2週間の育児休暇を取得し、男性社員間のメーリングリストに体験を発信しました。仕事とは違う子育てというテーマで社員間の仲間意識が強まり、父親が子育てに積極的に関わるのは当然という気運が高まっています。本社、支社、出向先と、働く場が離れていても、情報が共有できるので、苦楽をともにできる仲間が身近にいる安心感が生まれています。
残業時間は減少してきましたが、1人当たりの年間実労働時間は2080時間で、引き続き残業時間を減らす努力と年次有給取得率(前年51.4%)を上げるなどの改善が課題です。
また、介護と仕事の両立については現時点では対象者がいないものの、将来的に確実に出てくる問題なので、介護についても両立のための支援制度を整備することが必要だと思っています。
短時間勤務が育児と仕事の両立には有効ですが、クライアントに出向して行う業務も多く、出向先の企業の理解は不可欠です。その点理解があるので助かっています。
ライフ・ワーク・バランスを今後も会社の特徴としてアピールし、現在は3割弱の女性社員の割合をもっと増やしたいと思っています。そのために、くるみん取得の申請をしました。
課題は残るものの様々な取組を通し、長時間労働の削減と、育児と仕事の両立支援を行い生産性と仕事の質を上げてゆき、企業価値と業績の向上を実現したいと思っています。
働きやすく、長く勤められる会社は企業の持続的成長を支える重要な要素です。会社の財産は社員です。長時間労働を減らし、有給休暇の取得を促進し、生活と仕事の両立を実現する職場環境づくりを行っていくことで、社員一人ひとりの能力が最大限に引き出され、仕事にやりがいを持って取り組むことができます。その結果、生産性の向上や人材確保、ひいては企業価値と業績の向上に繋がると考えます。